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●漫画・・ 「ウルトラマン」..(4)

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 講談社漫画文庫・楳図かずお版「ウルトラマン」全2巻の下巻、最終話は「メフィラス星人の巻」になります。1966年7月から翌67年3月まで大人気TV放送された、初代「ウルトラマン」実写特撮の全39話中、第33話、タイトル「禁じられた言葉」の巻の回の、コミカライズ版ということになります。あ、正確には、67年の4月に2回放映があって、最終回は4月9日放送の、宇宙恐竜ゼットンが登場する、「さらばウルトラマン」の巻です。元プロレスラー・格闘家の前田日明さんの話で、前田さんが幼かったとき、ウルトラマンがゼットンに敗れて口惜しくてたまらなくて、自分が強くなっていつかゼットンを倒すんだと、幼い明少年が武道を習いに道場へ通い始めた、そこから前田日明の格闘人生が始まった、というエピソードは昔のプロレス・格闘技ファンなら有名な話です。ゼットンではなくてメフィラス星人の話です。ゼットンも強かったが、メフィラスも強かった。物語のクライマックス、最後頃、勿論お約束どおり、ハヤタ隊員の変身したウルトラマンは悪質宇宙人、メフィラス星人と戦うんですが、これはかなりメフィラスの方が優勢でした。多分、あのまま戦い続けていたら、ウルトラマンは負けていたろうな、と想像されるくらいメフィラスは強かった。でも「私は暴力は嫌いだ」とか何とか言うメフィラスは勝負を避け、ウルトラマンの前から地球人の前から姿を消す。まあ、一地球人の少年、サトル君にゲームみたいな勝負を仕掛けて負けたから、ということなんでしょうが、メフィラスは地球人代表としてごく平凡な少年サトル君を、地球人の代表として選んで、交渉をしていたんですね。メフィラスはサトル君に、「君は全地球人の右代表だから、私メフィラスに『地球をあげます』と一言いえばそれでいい。それで地球はメフィラスのものになる」てなことを言って、この先一言も言葉を喋ってはいけない、とかいうメフィラスの決めた勝手なゲームをしていた。で、サトル君は自分の生活空間でずうーっと黙り切っていた。周囲の人たち誰とも一切喋らずに。で、メフィラスはサトル少年に何か喋らそうと、いろいろと、かなり意地の悪い、サプライズな罠を仕掛けて来る。で、サトル君が一言でも何か口にしようものなら、その度に大きな災いが起こる。で、ハヤタ隊員もウルトラマンに変身するフラッシュビームカプセルをメフィラスに盗まれてしまう。ここのところのくだりは楳図版コミックとオリジナル実写放映とは違っていて、TV実写の方は確か、ウルトラマンに今正に変身しようとするところでハヤタが、メフィラスに固められてしまうんじゃなかったかな。何か、カチンカチンに凝固させられてしまう。漫画の方は、ハヤタの落とした変身カプセルをサトル少年が拾い、それをメフィラスに奪われ、またサトル君が取り返してハヤタ隊員に届ける。というくだりですね。どっちも物語最後の方でハヤタはウルトラマンに変身する訳ですけど、漫画版の方は、ウルトラマンの方がメフィラスよりも優勢です。漫画では、巨人バトル空中戦で劣勢のでメフィラスが逃げ去った形。TV実写はメフィラスが宇宙人どおしの戦いを避けた、という形でした。

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 TV実写オリジナルと楳図漫画版とは、お話のおおまかな内容は一緒ですが、細部が違いますね。漫画版の方がお話をもっと詳しくこまかに描いているかな。細部の部分部分もちょっと違いますけどね。漫画版の方がストーリー的に長めな感じ。入ったエピソードが詳しい。サトル少年とは実は科学特捜隊の紅一点、フジ隊員の実の弟として登場するんですけどね。フジ隊員は「ウルトラマン」の前番組「ウルトラQ」から引き続き出演する、桜井浩子さん扮するヒロインです。「ウルトラセブン」で永久欠番になった幻の第12話、「遊星より愛を込めて」のお話の中でアンヌ隊員の友達として登場し、スペル星人にかどわかされる役どころになりますけど。幻の永久欠番っていってもインターネットが発達してからは、YouTubeなどネットでいくらでも見れますけど。メフィラス星人はTVでも漫画でも、サトルくんの実姉フジ・アキコ隊員を巨大化させて暴れさせる。漫画版では巨大な土団子の塚を作らせるんですけど。TVオリジナルではメフィラスが自分の力を見せ付けるために、バルタン星人、ザラブ星人、ケムール人の3体宇宙人を登場させるけど、ただ見せるだけですね。暴れたり攻撃して来たりはしない。すぐに消えてしまう。だから実際に居たのかメフィラスのあらわした幻影かよく解らない。漫画版では、フジ隊員の作った巨大塚4個から、バルタン、ザラブ、ケムール、ダダの4宇宙人が実際に出現して暴れ、科特隊本部ビルに攻撃を仕掛けて来て科学特捜隊と戦う。その後、ハヤタ隊員の変身したウルトラマンと4対1で戦って、スペシウム光線で一網打尽に仕留められる。この時、ウルトラマンは「時間移動!」と叫んで瞬間移動=テレポーテーションを使いますね。これはTV実写版では確かウルトラマンは第12話、「科特隊、宇宙へ」のお話の中で、火星の地上でバルタン星人を倒した後、テレポートして地球に移動して地球上のバルタンを倒すんですね。メフィラス星人のときは、漫画版で使うけど、TVオリジナルではそういうシーンはありません。

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 メフィラス星人は“悪質宇宙人”と紹介されていて、児童書を出している出版社が出す怪獣図鑑なんかに紹介されている特長は、「知能指数10.000以上」というものですね。知能指数が1万以上とはどんな頭じゃ!?、とメチャクチャ驚きですけど、まあ、相当アタマが良いんですね。争いが嫌いだと表明して来て、地球人の代表たる一少年に精神的に挑戦して来た訳ですけど。メフィラス星人の名前は、古いドイツの伝承に出て来る悪魔、メフィストフェレスから取ったものでしょうね。造型というか容貌が悪魔的ですし。メフィストフェレスは、昔々のドイツの文豪ゲーテの有名な作品、「ファウスト」に登場する悪魔ですね。地球人の一代表として選んだ、まだまだ子供の域にある少年に、地球の無条件譲渡を申し出、いろいろな狡猾な手段を用いて「地球を差し上げます」と言葉にして言わせて約束させようとする。このシュチュエイションは西洋の「悪魔との契約」と似ていますね。メフィラス星人は、ウルトラマンとのバトルに負けたというよりも、まだまだ幼いサトル少年の勇気の前に敗北した、といえますね。このエピソードは比喩的に、地球人の一少年サトル君が「悪魔の誘惑を断じて拒否して悪魔を撃退した」というふうにも取れます。このドラマのストーリーを考えた作家さんは、テーマの一つとして「悪魔の誘惑を跳ね返す勇気」、というのを描きたかったのではないでしょうか。随分前に読んだ「ウルトラマン新研究」という書物の中で、メフィラス星人の侵略方法を、古のヨーロッパ列強のアメリカ大陸侵略に例えて論じていました。白人たちがアメリカ大陸先住民の居住地を奪うために、狡猾に知恵を働かせて、先ず、部族の酋長に対して暴力によって脅すか、酋長だけが儲かるような誘惑をエサにして契約を結んで奪う。そして、酋長個人のものではない部族の共有地が、他の部族民たちの同意もないままに全部奪われてしまう。住民たちが怒ったとしても契約書を見せて、合法的だと突っぱねて先住民を追い出してしまう。この白人たちの悪どいやり方と、メフィラスの取った侵略方法が似ている、と説いてました。まあ、メフィラス星人は知能指数10.000などという、超が3つも4つも付きそうな天才的な、とんでもなく優秀な脳味噌を使って、結局はズル賢いだけの宇宙人、ということに尽きるんですね。

 TV特撮のコミカライズ「ウルトラマン」は一峰大二氏の作画により、月刊誌では講談社の「ぼくら」に66年8月号から67年9月号まで掲載されました。小学生当時の僕はアタマの出来がとっても幼稚ィかったので、お話運びが勧善懲悪単純明快な一峰版「ウルトラマン」の方を楽しみにしていました。僕は児童漫画誌としてはどっちかというと幼年誌に近いような内容の、児童誌「ぼくら」が大好きで大ファンで毎月購読していましたし。

◆(2011-05/30)漫画・・ 「ウルトラマン」..(1)
◆(2011-06/06)漫画・・ 「ウルトラマン」..(2)
◆(2011-07/16)漫画・・ 「ウルトラマン」..(3)
◆(2011-08/30)漫画・・ 「ウルトラマン」..(4)

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