ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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米国債、投資のタイミングについて

2014年01月09日 | 2014年の資産運用
 さて、今回からは米国の金利と投資タイミングのお話です。

 米国債金利の見通しの話しを、多くの方が期待をされるようですね。でも期待されるほど当たるものではありませんので、どうぞ割引いて考えてください(笑)。

 投資のタイミングを計る物差しは「時期」「レベル」の二つがあります。債券投資の場合は投資の「時期」より「金利レベル」で計るべきです。

いつ投資するの?

イマでしょう!

 という答えを期待されている方は、なんかはぐらかされたように思うかもしれません。でも大事な点ですので、説明します。

「今年の3月頃には3.5%くらいになるから、その時に投資するべきだ」などと時期とレベルの二つを組み合わせて予想できたら一番いいのですが、どんなプロでもそれは無理です。だったらどちらを大切にするかと言えばレベルだ、ということを私は言いたいのです。

 株式も為替も債券と同じ様に、時期よりレベルがより大切だと私は考えています。何故なら投資するか否かの決定要素はリターンのレベル設定がより大切だからです。特に私の考えるストレスフリーの資産運用では最後まで持ちきることを前提にした債券投資ですので、ご自分のリターンのレベルをどう設定するかが重要だから、レベルを優先すべきなのです。

 しかし米国債に投資するとした場合、金利リターンは決められるとしても、為替のリスクをどうマネージするかの問題があります。為替リスクをヘッジするのは困難なので、投資判断の重要点として為替リスクを簡便法でシミュレーションして、許容範囲を見定めましょう。


 簡単化のため、米国債はゼロクーポン債に投資し、金利は10年債を3%、30年債を4%と設定します。

10年債 金利3% とするとゼロクーポン債の価格は 74.43(%)です。これを10年後の償還まで持ちきれば100%になって返ってくることになります。

 投資時点の為替を1ドル105円とすると、この投資のブレーク・イーブンの為替レートは 1ドル78.15円、つまり105円で投資しても、78.15円を下回らなければ損はしない、となります。

30年債 金利4% だと価格は30.84(%)で、これが30年後には100%になって返って来るということです。するとブレーク・イーブンの為替レートは1ドル32.38円になります。そこまでは損をしないということです。

まとめますと、

10年債 3% 為替レート105円 ⇒ ブレーク・イーブン78.2円

30年債 4% 為替レート105円 ⇒ ブレーク・イーブン32.4円


 日米のファンダメンタルズから見ますと、どちらも為替レートで負けることはほとんどないとみてよさそうです。特に30年債の32円は、紫おばさんもビックリのレートですね(笑)。ファンダメンタルズについては次回に詳しく見てみます。

 私は「年限10年で3%に乗った金利レベルは、投資に値するレベルだ」とみています。3%台の後半になれば腰を据えて投資のできるレベルでしょう。

 では10年債と30年債、どちらを選択するのか。それはもちろん個人の将来を見据えてのお話しになりますので一概には言えないのですが、もしどちらでもよくて迷っている方いれば、私は以下のように考えます。

 現状の金利レベル、10年3%と30年4%を単純に年限のリスクで比較した場合、私は10年に分があるとみます。20年間のリスクをたった1%の金利差で取るのは間尺に合わない気がするのです。20年という長期間のスプレッドは1.5%は欲しいと思います。できれば2%あれば理想的です。何故そうなのかを数字で理論的に説明するのは困難です。ただこれまでの歴史的経験則では、その程度あったこともあるというだけです。

 次回は2014年の金利の動きを私がどう見ているかをお話しします。もちろん為替の動きも大切ですね。

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前回記事の訂正です

2014年01月08日 | 2014年の資産運用
 前回のNISAの記事の中で、数字に間違いがありましたので、訂正させていただきます。

 東証の1日の平均売買高ですが、20-30兆円は間違いで、2-3兆円です。

 従ってNISAの口座が全部一日で使われると2割ではなく2倍のインパクトがあります。年間では0.08%のインパクトではなく、0.8%のインパクトの間違いです。失礼いたしました。

 もっとも年間ベースの数字はやはり1%にも満たないので、大山鳴動ネズミ1匹でなくノミ1匹に違いはなさそうです。

訂正し、お詫び申し上げます。

 次回から米国金利のお話しに入ります。
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NISAに何を期待するか

2014年01月07日 | ニュース・コメント

 
 一昨日、遂に累計アクセス数が50万件を超えました。みなさまのご支援の賜物と、感謝いたします。

 ありがとうございました。

 さて今回はNISAです。

 昨年9月に、今年の新年から開始されるNISA、少額投資非課税口座について私のコメントをみなさんにお知らせしました。NISAの主旨は、一般には「100万円まで非課税枠ができました。さあみなさん、投資しましょう」ということですが、私のコメントの要旨は、

・投資対象はハイリスクの株・REIT・投信のみ(低リスクの債券は買わせない)
・買ったら最後、売ることをさせない(売ったらその分非課税枠がなくなるので、売るインセンティブを削ぐ仕組みになっている)
・1年100万円の非課税枠は翌年以降に持ちこせないので必ず使い切れ(無理矢理でも100万円を投資させようとしている)

という辛口コメントでした。しかしそれでも同じ投資をするなら、「100万円分は利用しない手はない」とも述べています。

 いよいよNISAが始まりましたが、開始にあたってこの新たな仕組みが市場にもたらすインパクトを、いつものように数字で把握してみましょう。どうやら口座数は多めに見て400万口座にのぼるようです。そこでその全部がたった一日で株式だけに全額投資されたとすると、どれくらいインパクトがあるか?

400万口座 X 100万円 = 4兆円

 4兆円というのは、「たったの4兆円」なのです。東証の1日の出来高は20兆円から30兆円ですので、一気に投資されても買いが20%程度増加する程度です。しかも1年の枠はそれですべて使い切るので、取引日数が年に250日とすれば、年間ベースに引き直したインパクトは、

20% ÷ 250 = 0.08%

 数字としては誤差にも値しないほどの微々たる数字なのです。大山鳴動ノミ一匹というところでしょうか。

 もちろん今後増加するということはあるでしょう。しかし実は400万口座のすべてが新規口座とはかぎりません。かねてから証券口座を持つ友人たちに確かめると、誰もが「作ったよ」と答えました。すると実はかなりの程度が単なる移し替えかもしれないのです。みなさんはいかがでしょうか。
 私にはこれを機に貯金を下ろして株式投資をする人がたくさんいるとは思えないのです。であれば実はNISAはノミではなく、「ノミの卵」程度かもしれません(笑)。(単純に口座間移動はルール上許されず、一端旧口座で売却してからNISA口座で購入する必要があります)

 金融機関や報道各社はこの小さな「ノミの卵」があたかも大津波が来るかのように喧伝しています。

1月3日付けの日経新聞によると、

「NISAの口座は見込みも含めて400万。専用投信などが新たに600本用意され、待機資金は10兆円」
とあります。

えっ、待てよ?4兆円のはずなのに、なんで10兆円なの?

 日経ともあろうものが、こんな単純な計算もしないで煽り記事を書くとは、嘆かわしい限りです。

 では何故この「ノミの卵」に向かって各金融機関が投信を大量設定し、莫大な宣伝費を掛けキャンペーンを行うのか。もちろん他に目論見があるからです。理由は、

その1.買ったら売れないNISAで、債券でも株でもなく「投信」を買わせて手数料を5年分確保する

その2.(こちらがより重要ですが)追加で投資勧誘を行う絶好の口実となる


 
新年早々、証券会社の社員さん、ごめんなさい。


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2014年の資産運用 アメリカの金利をどう見るか

2014年01月06日 | 2014年の資産運用
 前回の記事では、アメリカではFRBによる緩和削減のニュースに大きく反応し、全米ネットのテレビでも金利に関するニュースがたくさん流されていたというお話を差し上げました。そして、14年の長期金利予測のコンセンサスは10年物金利で3%の前半程度で、私はそれより上昇を見込んでいると申し上げました。

 金利予想は簡単に当たるものではないと思います。ボンドの帝王と言われる世界最大の債券投資会社ピムコのCEOビル・グロス氏も、この3年は予想をはずしまくっていて、交代が噂されています。にもかかわらず(笑)金利に関する私の考えを申し上げますと、10年物金利が3%の後半に届くことは大いにあり得ると見ています。はずしても、私は交代しません(笑)。

その理由をかいつまんで言えばアメリカ経済の強さにあります。

 そしてアメリカの強さに頼る日本も含めた海外の国々もアメリカ向輸出の量的増加と、強いドルを稼げることから従来より大きな恩恵を受け、各国もよい循環に入る可能性が強いと見ているからです。

 アメリカ経済の強さはこれまでと違い、金融サービスとIT分野から製造業へとシフトを始めています。金融サービスとIT分野は雇用の広がりがさほど大きな産業ではありませんが、製造業は裾野の広さから雇用の広がりも非常に大きいのです。昨日も「ボーイング社が民間主力機である787Xの組立工場を海外では行わず、国内に新設することで組合と合意した」というニュースがありました。17万人を超える従業員の大半が国内で働く大企業です。理由は組合が年金などのコスト削減に同意したためです。


 アメリカの雇用が回復を強めている背景はシュールガス革命によるものもありますが、こうしたエネルギー関連以外の製造業の国内回帰の動きもあるのです。

 では金利はどこまで上昇するのか。

 10年物金利が4%を超えてどんどん上昇するとは見ていません。アメリカの雇用はかなり強い数字が今後も出現するとは思っていますが、インフレ率は簡単に上昇しないとみているからです。

 強いドルは以前の日本と同じで、インフレを抑制する大きな力を持っています。そしてもちろんFRBもインフレが許容限度を超えそうになれば、いつでも引き締めに入ることを躊躇しないからです。

 こういう話までしてしまうと、ちょっと先を行き過ぎている感があるかもしれませんので、このあたりまでに留めます。

 では次回は、実際に米国債を含めたドル債に投資を考えている方に向けて、投資のタイミングについて私なりの考えをお知らせしたいと思います。
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2014年の資産運用  アメリカ人と金利

2014年01月03日 | 2014年の資産運用
 今年は新たに「2014年の資産運用」をテーマにブログを開始いたします。よろしくおねがいいします。

 三が日も終わりますが、今年は5日が日曜日のためか、なんとなく正月は五が日までのような気がしますね。

 昨年12月18日からのアメリカ旅行中、株や為替、金利など金融市場は大きく動きました。その間アメリカにいて、金融市場のニュースは日本をはるかに凌ぐほど得ることができました。テレビも金融専門チャンネルばかりでなく、全米ネットワーク局のニュースが以前にもまして多くの時間を経済・金融に割いていました。私は普通、旅行中はiPADを持ち歩くのですが、アメリカではインターネットに頼らずとも、多くの経済・金融関連のニュースがあふれていました。

 今回の旅行中にFRBの緩和削減(テ―パリング)開始の決定があったことも、アメリカの一般の人々の関心を金融ニュースに集めたのかもしれません。日本ではほとんど一般ニュースにはならない金利の動向は、一般のアメリカ人の関心を常に引き付けています。

 なぜなら、引っ越し好きのアメリカ人は極端に言えば、誰もが不動産投資家だからです。不動産ローンを組むのに当初は低い変動金利を利用することが多いのですが、その後金利を変動物から固定物へ変更したり、その逆を実行するチャンスを常にウォッチするのです。また自動車や家具などの購入もローンを組むので、金利動向にとても敏感です。

 特に自宅担保のホーム・エクイティ・ローンとよばれる、一般のカードローンなどより金利が低いローンを頻繁に利用します。ホーム・エクイティ・ローンは、不動産価格が上昇すると、ローンの枠が広がります。ということは、金利と不動産相場両方から影響を受けるため、両方の相場への関心は必然的に高くなります。

 こうした事情から、今回のFRBの決定が今後の長期金利にどう影響するかについて、全米ネットワークでも専門家の討論を含め長々と特集番組を組んだりしていました。

 逆に為替の動向については、これだけドル高になっているにもかかわらず、大きな扱いはほとんどなく、旅行者だけが気をもんでいるようでした。

 さてその長期金利ですが、アメリカ経済の好調さを反映して10年物が3%に乗せ、30年物も4%付近にまできています。株は金利上昇をものともせずに上昇し市場最高値を付けました。金利に関するアメリカのアナリストの予想は、コンセンサス(予想の平均値)で来年末の水準は現在より0.3%程度の上昇というマイルドなものです。私はそれよりは上に行く可能性が強いと見ています。

 次回はその理由について書いていくことにします。


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