ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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初歩の投資教室 29 いったい何に投資したらいいの? 山崎元氏の推薦商品

2012年11月19日 | お知らせ

  前回の私のお願いに、4名の方がコメントを寄せてくれました。

ありがとうございます。

  ちょっと長くなるかもしれませんが、せっかくですのでお一人ずつ、私からコメントをお返ししていきたいと思います。

  まずはREITにコメントされた「ななし」さんへ。私は不動産投資の話が好きなので、長い答えになります(笑)

>私は九州に住んでおります。
それはもう、貸店舗、売りビル、売地、の貼り紙の嵐です。
仮に林様(←さんにしてね!)が「リートがお奨めだよ」って言ったとしても、少子高齢化など肌で感じた不気味さで私は買いません。だってじっちゃんばっちゃんあの世に行っちゃって空き家も増えてますよ。私には税金対策といって、借金してまで貸しビル貸しアパートの大家さん業をしてらっしゃる方が今後どうなるのか・・不思議な気持ち一杯です。


  ななしさんの実感のこもった感想に大賛成です。山崎氏は外貨建て投資についてはかなり疑問をもっているので、海外REITではなく国内REITを対象にしていると思います。

  私も77年から81年の4年間、福岡に住んでいました。むかしむかし、市内で一番賑わったといわれている博多の川端商店街は、その頃すでに凋落の兆しがあって、商店街の終わりにある井筒屋も倒産寸前でした。その後数年おきに福岡には行っているのですが、90年代後半頃に中州、天神あたりの再開発と福岡ドーム中心に西陣方面の開発が当たって、福岡はかなり再生した感がありました。一方で川端商店街はますますシャッター化して、見る影もなくなっていました。

  REITは福岡も投資対象にしています。福岡の不動産動向は、日本全体のREIT市場を象徴しています。解説しますと、REITは再開発や新築高層ビルへの投資を担います。昔のようにキャピタルゲインを狙った不動産投資ではなく、テナントの賃料収入を狙った投資で、新規物件への投資はかなり安定したキャッシュフローが見込めるので、投資資金が集まるのです。新しいビルにはテナントはいくらでも集まります。

  問題はそのテナントが、新規に現われたテナントではないことです。ほとんどは古いビルからの移転です。すると古いビルは空きが出て、ななしさんがおっしゃるようにオーナーは泣きをみることになります。長期では古いビルの賃料の値下げが、全体の賃料の下げ圧力を強めるので、やはり供給過剰により平均的賃料も下がるのです。

  住宅も同じです。新しいマンションはいくらでも作られ、需要もあるのです。しかし古い物件は空きが出て、どんどん価格も賃料も下がります。しょせん全体の需給には逆らえないのです。

  オフィスビルもマンションも、新規供給側は土地の値段が下がるため開発しやすくなる。作れば周りからテナントは集まる。しかし全体の需要は減っていくところに供給を増やすので、近隣は窮乏化します。

  実は東京などの大都市でもこの図式は同じで、ななしさんの心配は当たっています。

  こうしたことを前提にJREITを考えると、とても楽観的にはなれません。では何故最近JREITが多少注目されて、価格指数も少しよくなっているかと申しますと、リーマンショック以前のJREITブームでバブルを形成し見事に崩壊。安くなりすぎた反動で価格指数は戻っている。新規物件へのテナントは相変わらずよく集まり、それに投資したREITはそこそこのリターンはある。しかし周辺は窮乏化し、いずれはまた市況全体の悪化に苦しむことになると思います。JREITが始まった2000年代初めに買収された物件は、新規の物件に押されてすでに賃料の下げに苦しんでいます。

  私も自分の著書で「投資一般で多少とも勝負したい若い人は、日本ではなくアメリカのREITで勝負しろ」とお薦めに入れています。株はやめておけという私の唯一、でなくバークシャーを入れ唯二の例外です。何故アメリカのREITは例外なのか?

  ななしさんの実感する衰退する日本での不動産投資はダメでも、経済が成長して人口の増えるアメリカでの不動産投資は長期のリターンをもたらすからです。それが証拠に、あらゆる投信を対象としている日本の投信ランキングでも、いつもアメリカREITはよい成績を示しています。
  
もう一言。
  
>絶対リートというなら、今東南アジアが元気だし、先進国こけたら新興国もこけると言うなら今のうち東南アジア関連リートをさっさと買ってさっさと売りにげならそれもアリかな?

  このななしさんが言っている東南アジアのREITですが、実はREITは税制がREITに有利に整備された国でないと成立しません。まだ東南アジアは未整備です。それと中国の例を見てもわかるように、新興国の不動産は必ずバブるので、タイミングが難しいのです。バクチ以外の何物でもありません。新興国物には不動産を含め、株でも債券でも絶対に手を出さないことです。
コメント (3)
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初歩の投資教室 28 いったい何に投資したらいいの? 山崎元氏の推薦商品

2012年11月16日 | お知らせ
今回は、山崎元氏の『買ってもいい運用商品全リスト』です。

   山崎元氏が週間ダイヤモンド誌の氏のコラムで7月28日に書いている内容、「買えるリスト」をまずはそのまま紹介します。

  最初に記しているのは、買ってはいけない以下の注意点と具体例です。

① 運用の中身のわからない商品・・・仕組み商品(仕組み債券・預金などを含みます)、ヘッジファンド、プライベートバンク
② 実質的な手数料のわからない商品・・・生命保険の大半
③ 同類の商品よりはっきり手数料の高い商品・・・投資信託の9割以上
④ 独自性があっても手数料が高すぎるもの・・・例の記載なし
⑤ セロサムゲームの投機リスクをとるもの・・・FX、ゴールド


さらに外貨預金と外債は③④⑤の観点からダメ、と指摘。

次に買える商品のリストは

短期金利物として

1. 銀行預金、一人一行1,000万円まで
2. MRF
3. 個人向け国債の変動10年債、固定5年債


リスクを取って高いリターンを目指すもの

4. 株式
5. 投信ではTOPIXもしくは日経平均のインデックスファンド、ETF
6. 先進国・新興国の外国株インデックスファンド


判断がやや難しいが

7. REIT

   さてこれを見てみなさんはどう感じられるでしょうか。今回は私のコメントをする前に、みなさんからコメントを聞かせていただきたいと思います。

   コメントをよろしくお願いします。
コメント (4)
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初歩の投資教室 27 いったい何に投資したらいいの?

2012年11月12日 | 初歩の投資教室
  ここまでポートフォリオはどう組むかについてお話を差し上げてきました。ここまでの結論としては繰り返しになりますが、

1.分散投資を行ったところで、リーマンショックなどの市場の混乱には無力だった

2. 日本株は日本の成長力低下を跳ね返せない。日本の債券は超低金利でリターンを生まない

3. プロが運用する分散投資ファンド(海外投資を含む)でもほとんどがマイナス


  こうした状況は今に始まったことではありません。バブル崩壊後の日本では成長の鈍化と円高傾向が続いているため、一貫して投資は報われない状況が続いています。

  ではそうした状況にもかかわらず投資をするとしたら、どうしたらよいかを考えていきましょう。一つのヒントは日本版401Kの説明の中に含まれていました。

  ある企業の日本版401Kの説明書には投資対象の実績一覧がある、と申し上げました。その中でプラスの実績を残しているのは、わずか一つの投信のみでした。それは国内債券型投信です。実績は12年余りの運用で、配当をすべて再投資に回したベースで年率1.5%です。10,000円の価格が12年後に毎月複利(毎月配当型)で12,000円になったということです。

  運用実績でマイナスを積み上げるのはナンセンスきわまりないとすれば、ここでの唯一の選択肢は債券投信ということになります。ではその中身をチェックしてみましょう。

  このファンドは大手の投信会社が運用していて、運用開始は98年のようです。現状で組入れている債券の配分を見ると、国債を含むAAA格付けの債券が5割、AAが数パーセント、Aが3割、BBBが15%もあります。AAA、AAはいいとして、45%を占めるシングルAとBBBの債券の公表されている中身を見てみます。

  シングルAといってもそのうちほとんどは中位から下位の地銀と下位の損保の劣後債です。劣後債とは、金融機関にもしものことがあり倒産した場合、残余資産の分配をするときに返済順位が低くなるリスクの高いものです。何故そんなものを銀行や生損保が発行するかと申しますと、劣後債は限りなく株式に近く、資本の充実に貢献する性格の資金だからです。

  誰もがかなり安全と思って投資をする大手投信の債券ファンドが、こんなに劣後債の塊を抱えてよいのでしょうか。しかも中身にたどりつくのはきっと私のような債券ヲタクだけかもしれません。シロウトの投資家の方が、大手投信の債券ファンドのリスクの中身までほじくり出すとはとても思えません。

  これほどのリスクを取っているのですが、10年の成績は年率プラス1.5%程度です。金利はかなり低下していて、キャピタルゲインを得られる状況にあるはずなのに、情けないほどの実績しか残せていません。価格の推移表を見ると、リーマンショック時に小さな谷を作っています。本来なら株式が暴落し、債券は暴騰しているのですから山を作って当然ですが、このような劣後債やBBBの債券が半分近くを占め足を引っ張っため、リーマンショックで大きな影響を受けたのでしょう。

  こうしてみてくると日本では債券ファンドまでが利回りを上げるために相当なリスクを取っていて、決して安全な投資対象とは言えません。
となると、「いったい買える商品があるの?」と考えざるを得ません。

次回は私が資産運用に関しては日本の第一人者の一人として尊敬する山崎元氏の言う『買ってもいい運用商品全リスト』をご紹介します。
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アメリカ大統領選挙の先物市場

2012年11月09日 | ニュース・コメント


   アメリカ大統領選挙が終わりました。

この選挙結果を予想する先物市場があることをみなさんはご存知ですか?

  アイオワ大学の私設先物市場IEM(Iowa Electronic Markets)は大統領選挙のたびに当選者を先物市場に見立てて、取引をしています。今回のオバマ対ロムニーは直前の5日で75:25、オバマ勝利を予想していました。

この市場は選挙前日の取引で民主党と共和党の勝敗確率が75:25というところで売買が成立。もちろん最後はどちらかが100になって取引が終了します。市場は1年余りの間開かれ、刻一刻と需給で変動し続けます。オバマが勝つ方に賭ける、というようなものではなく、ある時点での勝敗確率が自分の予想より低いと見れば買い、高いとみたらすかさず売る。

  ですのでロンドンのブックメーカー(胴元のいる賭け事)とは違います。ブックメーカーは競馬オッズと同じで、オバマとロムニーのリターンをオッズとして公表し、胴元が払い戻すシステムで、胴元は損したり得したりします。

  アイオワ大学の取引は5ドルから最大500ドルまで可能で、世界の誰もが参加できます。そして最後まで持ちきることなくいつでも売却可能です。例えばロムニーが私的会合でひどいことを言った報道があった9月中旬に下がったロムニーを買って、その後第一回のディベートでロムニー優勢の時点で売却すると、例えば20ドルで買い40ドルで売却でき20ドルの得というようなイメージになります。

  ちなみにこの市場の的中率は常に非常に高く、毎回世論調査を凌いでいます。大学で賭け事、などと目くじらを立てる必要はありません。アカデミックな実践教育として行っていて、先物市場の規制当局も、「ノミ行為でなく、胴元が儲けるわけでもない」ゼロサムゲームなので目をつぶっています。経済指標の当てっこから、政治ネタまで幅広い銘柄が常に取引されています。学生はニュースバリューを数値に直しながら勉強をし、先物の先見性やサヤ取りの勉強をするのです。少額とはいえ自分のカネを賭けるので、真剣味がありますね。

  そう言えば私は昔ニューヨーク郊外で暮らしていたのですが、現地の小学校に通っていたうちの子供たちが授業で先生から「お前は民主党支持か共和党支持か」と聞かれたそうで、親の私がびっくり。なんと支持政党に分かれてディベートをしたそうです。大統領選挙の話題は小学校の教室でも当たり前に議論されているのがアメリカです。そう考えれば大学でそれをネタに先物市場の取引をするくらい驚くにあたらないのでしょうね。


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初歩の投資教室 26 ポートフォリオの構築、まとめ

2012年11月06日 | お知らせ
  さて、ここまで「ポートフォリオの構築」について、日本の例だけでなくアメリカの例を交えて様々な角度から見てきました。そこから得られる大事な教訓は、以下のようにまとめることができると思われます。

1. 教科書的なポートフォリオを組み、分散投資を行ったところで、リーマンショックなどの市場の混乱には無力だった

2. 日本の中だけで運用をしていても、株も債券もしっかりリターンをもたらすことはできない。日本株は日本の成長力低下を跳ね返せない。日本の債券は超低金利でリターンを生まない

3. プロが運用するGPIF(公的年金)、証券会社の分散型投資ファンド、いずれも極めて低いリターン(よくて0%から2%程度)しか生まず、401Kのある推奨ファンドに至っては、年率10%を超えるマイナスを記録している。


  だったら日本国債の長期債にでも投資して黙って放っておくほうがよほどまし。ただし日本国債の将来は保証の限りではない。

これではほとんど絶望ですね(笑)。

  でも現実はこのとおりで、それにもめげずに投資をすると、今回のシリーズの最初に示しましたように、「日本の一般的投資家は平均で3割も損失」の轍を踏むことになります。

  ある知り合いから、「アメリカの友人の運用しているファンドの名前を教えろ」というストレートな問い合わせがきました。

  個人的に教えることはぜんぜん差し支えないのですが、ブログでそれを公表することについて私は正直迷っています。

  これまで著書でもこのブログでも、特定の銘柄を推奨しないことを方針としていました。例外は私の尊敬する投資家ウォーレン・バフェット氏の経営するバークシャー・ハサウェイ社です。何故例外にしているかと申しますと、投資の神様であるとともに、91年に私の在籍していたソロモン・ブラザーズを破綻の淵から救ってくれた救世主だからです。

  今回もし銘柄を書くとなると、特定のファンド名をいくつかずばり書くことになるので、それを躊躇しているのです。『投資は自己責任』ですから、それによって読者の方が損をするのはしかたないとしても、「宣伝色を出したくない」というのが一番の理由です。

このブログにそれほどの影響力はないか・・・

ということはあるのですが、やはりこれまでの方針を貫くことにします。

どうしても、という方には以下にヒントを差し上げたいと思います。

ファンドの客観的評価をするのに私が最も信用しているのは、MORNINGSTARという会社の評価です。日本語で日本のファンドの評価もしています。その会社の英語のサイトに行きますと、ファンドのアナリストが友人の投資しているアメリカ株ファンドに、「GOLD」の評価をつけていますので、わかると思います。友人の保有するその他のファンド、例えば債券型ファンドも、そこで高い評価を受けています。
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