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初歩の投資教室 25 日本版401K について

2012年11月03日 | お知らせ
   みなさんにはアメリカの401Kの例だけを紹介し、日本の401Kについてあまり説明していないことにきがつきましたので、若干日本版401Kについて触れます。

   私の手元には、ある企業の最新版の「401K開始キット」があります。中身は3つの資料にわかれています。それをもとに説明します。3つとは、

1. 運用の世界へようこそ
2. 確定拠出年金(企業型)手続きハンドブック
3. 確定拠出年金、制度と運用商品のご案内


  これらはいずれも企業が作っているものではなく、この企業の401Kを管理運用している証券会社が作成したものです。といっても一般の証券会社ではなく、ある生保・損保のグループが401Kの管理用に作った聞きなれない名前の証券会社です。

「運用の世界へようこそ」から見てみましょう。

どちらかといえば、いわゆるファイナンシャル・プランナーの方が初心者に向けて解説するようなことが書いてあります。項目的には、以下のとおりです。
・金融商品の基礎知識
・投資信託の基本
・運用の基礎知識
・用語解説

  ポイントは運用の基礎知識です。こんなことが書いてあります。
① 資産配分;年齢やリスク許容度でどんなポートフォリオを組むべきかを解説
② 運用の心得;長期投資のスタンスで取り組めば、短期ではリターンの振れ幅が大きくても、長いスパンでは安定的リターンを得ることができる

  アメリカだとこれに加え一つの投資対象に2割以上投資してはいけない、とありました。

  2の手続きは省いて、3.の「商品案内」を見ます。まず気がつくことは、私が先に指摘したとおり「自社商品のオンパレード」です。生保・損保のグループなので、当然保険商品がまず並んでいます。それはいいとして、投信になると10本のお薦め商品があるのですが、そのうち8本が自社グループで組成した商品です。例としては


・バランス型・・・日本株、日本債券、海外株、海外債券に分散投資
・安定成長型・・・日本株
・インデックス型・・・日本株
・バリュー株型・・・日本株
・海外株式型
・海外債券型
・国内債券型


  アメリカの401K同様、それらの成績表がベンチマークと比較できるように3カ月から始まって10年まで並んでいるのですが、問題はその成績そのものです。

どの期間をとっても、ほとんどの数値にマイナス符号がついているのです。しかも株式中心だと全期間にわたりマイナスで、期間が長くなれば長くなるほどマイナス幅が大きくなります。マイナスが付いていないのは、国内債券型だけです。

   「長いスパンでは安定的リターンを得ることができる」という謳い文句が泣きます。マイナスばかりの成績表を見せて「ようこそ運用の世界へ」とか言われても、悪い冗談だとしか思えません。

   「個人投資家の7割が損失を出し、損失率の平均は3割」という衝撃的調査結果から今回のシリーズが始まりました。この401Kの成績表は、しっかりとそれを裏付けてくれました(爆笑)。私がパンフを作成した運用管理会社なら、恥ずかしくてこんな成績表を出すことはできません。

  この実績表を見ながら、なおも果敢に安値を拾いに行くつもりで投資を開始する人がいるのでしょうか???

  成長の時代が終わりつつある日本と成長の時代が継続するアメリカ、この間には埋めがたい大きな溝があります。

  もっとも私は日本版401Kへの加入そのものをお薦めしないのではありません。その理由は、自分の拠出金に企業もマッチング拠出をしてくれるからで、しかもその分の所得税は退職時まで繰り延べることができます。とても有利な制度です。

  ただし手放しで加入しろとは申しません。確定拠出年金は企業倒産の影響はうけず、厚生年金基金のように運用の失敗の影響を受けるものではありません。自分の選択で自己運用するだけだからです。しかし年金を引き出せるようになるには、ある程度の積立期間を経るのと、受取開始年齢に制限があるので、かなりの将来まで「日本と円は大丈夫」という確信が持てる人でないと、加入は疑問符が付きます。

私のように日本の未来に確信を持てない方には、「おやめなさい」。

それが私のアドバイスです。
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