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初歩の投資教室 27 いったい何に投資したらいいの?

2012年11月12日 | 初歩の投資教室
  ここまでポートフォリオはどう組むかについてお話を差し上げてきました。ここまでの結論としては繰り返しになりますが、

1.分散投資を行ったところで、リーマンショックなどの市場の混乱には無力だった

2. 日本株は日本の成長力低下を跳ね返せない。日本の債券は超低金利でリターンを生まない

3. プロが運用する分散投資ファンド(海外投資を含む)でもほとんどがマイナス


  こうした状況は今に始まったことではありません。バブル崩壊後の日本では成長の鈍化と円高傾向が続いているため、一貫して投資は報われない状況が続いています。

  ではそうした状況にもかかわらず投資をするとしたら、どうしたらよいかを考えていきましょう。一つのヒントは日本版401Kの説明の中に含まれていました。

  ある企業の日本版401Kの説明書には投資対象の実績一覧がある、と申し上げました。その中でプラスの実績を残しているのは、わずか一つの投信のみでした。それは国内債券型投信です。実績は12年余りの運用で、配当をすべて再投資に回したベースで年率1.5%です。10,000円の価格が12年後に毎月複利(毎月配当型)で12,000円になったということです。

  運用実績でマイナスを積み上げるのはナンセンスきわまりないとすれば、ここでの唯一の選択肢は債券投信ということになります。ではその中身をチェックしてみましょう。

  このファンドは大手の投信会社が運用していて、運用開始は98年のようです。現状で組入れている債券の配分を見ると、国債を含むAAA格付けの債券が5割、AAが数パーセント、Aが3割、BBBが15%もあります。AAA、AAはいいとして、45%を占めるシングルAとBBBの債券の公表されている中身を見てみます。

  シングルAといってもそのうちほとんどは中位から下位の地銀と下位の損保の劣後債です。劣後債とは、金融機関にもしものことがあり倒産した場合、残余資産の分配をするときに返済順位が低くなるリスクの高いものです。何故そんなものを銀行や生損保が発行するかと申しますと、劣後債は限りなく株式に近く、資本の充実に貢献する性格の資金だからです。

  誰もがかなり安全と思って投資をする大手投信の債券ファンドが、こんなに劣後債の塊を抱えてよいのでしょうか。しかも中身にたどりつくのはきっと私のような債券ヲタクだけかもしれません。シロウトの投資家の方が、大手投信の債券ファンドのリスクの中身までほじくり出すとはとても思えません。

  これほどのリスクを取っているのですが、10年の成績は年率プラス1.5%程度です。金利はかなり低下していて、キャピタルゲインを得られる状況にあるはずなのに、情けないほどの実績しか残せていません。価格の推移表を見ると、リーマンショック時に小さな谷を作っています。本来なら株式が暴落し、債券は暴騰しているのですから山を作って当然ですが、このような劣後債やBBBの債券が半分近くを占め足を引っ張っため、リーマンショックで大きな影響を受けたのでしょう。

  こうしてみてくると日本では債券ファンドまでが利回りを上げるために相当なリスクを取っていて、決して安全な投資対象とは言えません。
となると、「いったい買える商品があるの?」と考えざるを得ません。

次回は私が資産運用に関しては日本の第一人者の一人として尊敬する山崎元氏の言う『買ってもいい運用商品全リスト』をご紹介します。
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