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コロナ禍でもオリンピックは開催すべきか

2021年06月06日 | コロナショック

  「自分は鬱により苦しんでいる。人前で話すことは苦手」と告白した大阪ナオミ選手への風向きが180度変わりましたね。「会見はプレーの一部だ」と主張していたジョコビッチも「サポートする」と正反対のコメントを出し、錦織も「僕もメンタルの先生にサポートを受けています」と発言。テニスプレーヤーだけでなくボルトなど世界の一流プレーヤーが全員大阪ナオミ選手のサポートに回りました。テニスの4大大会の主催者側も、ただ罰金を課す側から「大阪ナオミ選手を可能な限りサポートし支援する」と姿勢を全面転換。

  彼女の勇気ある行動が、一転称賛の嵐を巻き起こし、スポーツ界とマスコミの関係はきっとこれで大きく変わるに違いないと期待します。    ・・・して、IMGは何をサポートしていたのか? の疑問は晴れません。

 

  今回はオリンピックとコロナに関してです。最近の国民へのアンケート調査では6割程度の日本人が「開催すべきでない」と考えているとの結果が公表されていますが、政府はやる気満々。一方コロナ分科会の尾身会長は「コロナ禍での開催は普通ではない」という発言から「緊急事態宣言の中でのオリンピックなんていうことを、絶対に避けるということ。」と言葉を強めて反対の意思を表しています。

 

  そもそもオリンピックの意義はどこにあるのか、というような形而学上の問題はさておき、ここでは私なりのやり方で、安全面からの考察を試みます。

 

  オーストラリアの女子ソフトボールチームが来日しました。群馬県太田市でキャンプを張り、試合に臨みます。オーストラリアという国は、感染対策や外来種の防御に世界で最も厳しい国の一つです。私は90年代から00年代に、友人たちとたびたびオーストラリアでゴルフツアーをしました。ゴルフクラブやスパイクはもちろん自分のものを持ち込むのですが、到着空港での防疫上のチェックは非常に厳しく、クラブはきれいに洗ってあるかチェックされ、スパイクに及んでは、検疫所において消毒液で洗われます。単に泥や植物の種の有無だけでなく、目に見えない細菌などまで洗い流すのです。

 

  コロナ対策においてもオーストラリアは非常に厳しい防疫体制を取っていましたが、選手団の日本への到着は先頭を切って行われました。この意味するところは、受け入れ国である日本の対策と自分たちの対策を完璧に行えば、感染リスクは極小化できるということだと思います。

 

  オリンピック開催に当たってのコロナ感染対策は、いわゆる「バブル方式」が取り入れられています。選手や関係者の行動範囲をいわば透明で大きな風船で仕切り隔離すると言うやり方で、世界では様々な場面でかなり取り入れられていて、オーストラリア選手団もバブルの中に閉じ込められています。

  従って日本人と接触のない選手の日本での感染は、ほぼ封じ込められている解釈できます。しかも選手や関係者は全員がすでにワクチン接種を済ませ、PCR検査も出国前、入国後、今後も何度も行います。ワクチンの有効度は99%以上と報告されていますので、私は彼女たちとの握手やハグは全く問題ないと思っています。接種していない私の方が嫌われるでしょうが(笑)。

 

  こうした安全対策がされているという情報をしっかりと知らせたうえでアンケート調査を実施したら、結果はどうなるでしょう。それでも感情論から安全じゃないので反対だ、という人は少なからずいるでしょうが、私は結果がだいぶ変化する可能性はあると思います。

 

  尾身会長は開催中の人流が多くなることを懸念しています。しかし外国からの観客はなし、もしかすると日本人も観戦はできないとなると、人流がさほど大きくなるとは思えないのです。組織委員会の見積もりではオリパラ双方で選手団1.5万人、関係者9万人以下という数字を出しています。しかもそれらは防疫対策を万全にした人たちで、一度に全員が来るわけでもありません。

  それに対して通常時の東京の1日の通勤者数は、都内から都内は750万人、近隣3県からの通勤は290万人、合計1千万人強。最近はリモートワークが増えたとはいえ、決定的な変化とまでは言えません。選手や関係者はこの通勤人数に対する比率で言うとわずか1%で、しかも隔離されたバブル内に安全な人達がいるだけです。ワクチン接種の進んでいない東京では、普段の通勤のリスクの方が100倍も大きいのです。

 

  こうして冷静に数字で比較すると、「危険だからやめろ」というのは、相当程度は感情論だということがわかります。尾身さんの言う「人流の増加がリスクを増大させる」という主張は、数字ヲタクの私から見ると「根拠の薄い主張だ」となるのです。

  オーストラリア選手団の周辺で今後何が起こるのか、しっかりと注視していきましょう。火中の栗を拾う開拓団のリスクを取った彼女らは、東京五輪の救世主になるかもしれません。

  女子ソフトボール選手たち、私には大阪ナオミ選手の勇気と重なって見えるのです。

 

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6 コメント

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Unknown (目白のおっちょこちょい)
2021-06-06 22:28:17
私もそう思います。
パブリックビューイングは止めた方がいいと思いますが、大会を開催しないのは理解できません。
テレビや野党が騒いでいるようですが、選挙を見据えて政府への嫌がらせをしているだけなのでしょう。
数年前からテレビを捨ててしまったので、マスコミ(テレビ)が何を騒いでいるのか全くわかりませんが。
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目白のおっちょこちょいさんへ (林 敬一)
2021-06-07 13:43:11
同感を表明いただき、ありがとうございます。

この時点で「開催しても大丈夫だ」などと表明すると、袋叩きにあうかもとおもっていましたので、安心しました(笑)。

でもテレビを捨てるって、勇気ありますね。私はテレビを長く見るほうではありませんが、捨てる勇気はありません。
きっと別世界がひらけるのでしょうね。
返信する
「受け入れ国である日本の対策と自分たちの対策を完璧に行えば」←尾身先生はこれが「まあ、できないよね」と危惧してるんだと思います。 (名無しの権兵衛)
2021-06-08 10:53:53
林先生の数字に基づいた「理屈」に反対する要素はございません。しかし、その林先生の唱える「・・・・対策」とやらが「机上の空論」で「実践不能」「実践できるといわれても信用できない」というのが率直な感想です。

まず、林先生が指摘されていた対策の肝となる「バブル方式」を完璧にすべての国の選手団に対して実行できるのか?という「強い懸念」がひとつ。
事実今ですら、とある地方自治体の首長が事前合宿にきている選手団に対して「日常品の買い物くらい認めてもいいんでないか?1か月も幽閉するのは無理でしょ」などという声を上げています。
今のところ厳しい世論にさらされている中でもオリンピックを強行したい日本政府はこれを受け入れないでいますが、世論がオリンピックに対して前向きならばこれを認めていたと私は考えます。

そのくらい今の政権(および前政権)の「感染対策・感染防護意識」は低レベルであり、信用できません。(実際感染状況が逼迫しているのにgo toトラベルを強行し続けたという前科がある)

また、我々日本国民側もオリンピックというお祭りムードに流されて、人の流れが大きくなることは十分予想できるはずです。今ですら有観客か無観客か。PVを設置するかしないか・・・で議論しているようなこの状況で、日本国民側自身の「ゆるみムード」で感染が拡大することも大いに危惧されます。尾身先生はとくにこの点についてなんども指摘し、それゆえ「オリンピック開催」は「感染状況を考えたら普通やらないよね」と唱えていました。

最終的には日本政府もIOCもオリンピックを強行すると思います。しかし、尾身先生や日本国民のオリンピックに対する「強烈な不信感」を充満させているからこそ、金や経済優先で穴だらけの感染対策にならないですむのじゃないかと思っています。(そうでなければ、今の政権では絶対に有観客かつPV設置しまくりのお祭りオリンピックをやろうとします)よって「感情論」であったとしても「オリンピック開催反対」の声を上げる意義は十分にあると考えます
返信する
名無しの権兵衛さんへ (林 敬一)
2021-06-09 09:52:07
コメントをいただき、ありがとうございます。

>林先生の唱える「・・・・対策」とやらが「机上の空論」で「実践不能」「実践できるといわれても信用できない」というのが率直な感想です。

机上の空論ですか、厳しいコメントですね。

>対策の肝となる「バブル方式」を完璧にすべての国の選手団に対して実行できるのか?という「強い懸念」がひとつ。

選手団はそもそも検査もこれ以上はできないほどやっていて、ワクチンも全員が接種済みで感染者はいないという前提も、机上の空論ですか?
だとすると議論にはなりませんね。

>我々日本国民側もオリンピックというお祭りムードに流されて、人の流れが大きくなることは十分予想できるはずです。今ですら有観客か無観客か。PVを設置するかしないか・・・で議論しているようなこの状況で、日本国民側自身の「ゆるみムード」で感染が拡大することも大いに危惧されます。

これはおっしゃるとおりでしょう。それでも毎日の数百万人の通勤者に比べると、感染者を限定して入れても、数字の上では微小です。

>しかし、尾身先生や日本国民のオリンピックに対する「強烈な不信感」を充満させているからこそ、金や経済優先で穴だらけの感染対策にならないですむのじゃないかと思っています。

この文章の意味が私にはつかめません。できればかみ砕いてご説明ください。

オリンピックはそもそも「金や経済対策」だけではないと私は思っています。
オリパラ参加者は1.5万人ですが、そこに選ばれるまではその何百倍のアスリートが自分の生涯を賭けた努力を長年にわたりしています。アスリート・ファーストをうたっているのがオリパラですので、金と経済優先だけと切り捨てるべきではないと思います。

とまあ、反論はあるのですが、感情論には数字で対抗できないこと、私も理解しているつもりです。
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返信遅れました。 (名無しの権兵衛)
2021-06-22 17:57:20
林先生。コメントに応答していただいたにもかかわらず返信遅れましたことお詫び申し上げます。
しかし、むしろ遅れたことで私の意図が説明しやすくなったかも・・・。

>選手団はそもそも検査もこれ以上はできないほどやっていて、ワクチンも全員が接種済みで感染者はいないという前提も、机上の空論ですか?

PCR検査って、偽陰性もでるし完璧じゃないのはご存じのはず。ワクチンも完璧ではなく、接種は選手といえど義務ではないのです。だから「全員」ワクチン接種していて「全員」のコロナ陽性者を検出・隔離するなんて机上の空論です。

>>しかし、尾身先生や日本国民のオリンピックに対する「強烈な不信感」を充満させているからこそ、金や経済優先で穴だらけの感染対策にならないですむのじゃないかと思っています。

>この文章の意味が私にはつかめません。できればかみ砕いてご説明ください。

つまり、オリンピックをたとえ開催するとしても、観客を無観客にしたり、会場では飲食物を売らないなど、「普段の営利目的オリンピックとは異なる感染に十分配慮した」オリンピックにしようとは頑張ってくれるんじゃないかという期待でした・・・。(オリンピック中止はできなくても、オリンピック開催に否定的な国民感情に寄り添ってそれなりの努力はしてくれるんじゃないかと)

・・・が、それすら期待外れだったようですね。開会式では2万人も会場に入れるわ、その人数にVIPや関係者はふくまれてないだとか。会場での酒類の提供ですら認めようとするわ・・・なし崩し的になってますね。尾身先生の提言意義はあまりなかったようです。

ここにきて、やっぱりオリンピックなんて開催してほしくない気持ちが強いです。
林先生は、こんな状況で本当に安心してられるのですか?正直不思議でしょうがない。
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名無し (林 敬一)
2021-06-24 16:06:47
オリンピックの開催に対する私の考えは変わりません。

オリンピックのせいで感染爆発が起るか起こらないかは、あと2か月たてば結果がわかることなので、それを見てからにしましょう。
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