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今後の米国債投資をどうすべきか?

2024年08月02日 | 投資は米国債が一番
みなさんへ

ブログ運営側の理由と思われますが、フォントの大きさが小さいままで、調節ができません。
とりあえずテーマは急を要するため、このままで投稿します。


 日銀とFRBの会合の結果、株式、金利、為替が大きく動きましたね。特に株式投資をされている方は、日経平均が7月初めの高値4万2千円台からあっという間に3万6千円台まで6千円、約15%もの急落で、株式投資のリスクの大きさに驚いたことと思います。

 一方8月1日の日経新聞朝刊の一面の大見出しは、日銀の利上げで「金利ある世界へ」でした。日銀の政策金利(翌日物金利)はマイナスだった金利を3月にプラスの0.1%程度に上げ、今回はさらに0.25%まで上昇させました。

 同じ政策金利、アメリカは5.5%程度です。日銀の利上げにより日米の政策金利の差はこれまでの5.45が5.25になっただけです。それだけで円はドルに対して4円ほど高くなったのでしょうか?
今回の円の値上がりは両国の政策金利の動きによると説明されていますが、私はそれだけではなく、投機筋の動きが大きいと見ています。投機筋はいままで積み上げた円売りのポジションをかなり解消しているのです。

 為替の変動が大きいという理由で介入する政府に対して、私は「変動を大きくしている投機筋などは、必ず反対売買をするからほっておけ」と再三言いつづけました。この2週間余りの円高方向への動きは、シカゴIMMの為替ポジションを見るとわかるのですが、膨らみ続けたドル買い=円売りポジションを投機筋は解消しているのです。つまりドルを売って円を買う反対売買して、ポジションを解消したということです。政府の売り介入は一時的には効果があるものの、大きな相場の動きを作り出すものではない、ということです。そして投機筋による動きもまた、ドルを買った者はそれと同額を売る。でないと利益は出せません。これもしょせん中立です。

 米国債への投資を検討されている方にとってドル安はチャンスですが、一方で金利の低下は不利に働きます。ではどうすべきか?

 私は常々みなさんに「為替より金利優先で考えるべきだ」と申し上げています。もちろん米国債金利が高くてしかもドルが安いのが一番好ましいのですが、それはいわば「ない物ねだり」です。為替と金利はある程度連動しますので、米国債の金利が高い時にはドルも高くなってしまうし、いまのようにドルが安くなった時には金利も低下してしまいます。

 もちろん為替も金利もその他の要因でも大いに動かされますから、これがすべてというわけではありません。では「為替より金利優先で考えるべきだ」というのは何を根拠にいっているのか。それを説明します。

 そもそも米国債投資を考える方の基本スタンスは、10年以上、30年近い超長期投資がほとんどです。そしてこれまでの投資結果をみると、「金利は為替に勝ってきた」のです。
 例えば私が一冊目の著書を書いた2011年までの長期投資の結果を見ます。30年債だと投資開始は1981年で、その時のドル円はなんと240円でした。それが2011年にはわずか83円と約3分の1になってしまいました。では投資は失敗だったのでしょうか。81年の30年物米国債の金利は8%台でしたから、1万ドル=240万円の投資は複利だとなんとドルでは24倍の24万ドルにもなっていました。ということは、

償還時は、24万ドルx83円=1,992万円

償還時1,992万円÷投資時240万円=8.3倍

ドルが3分の1になっても円建てで8.3倍にもなり、とてもよい結果になっていました。

 では2冊目の著書が出版された2023年までの同じく30年前に米国債投資を行っていたら、結果はどうなっていたか。
それは本のカバーに大きな字で書かれていますが、100万円が768万円、つまり約7.7倍になっていました。

 この結果は今から10年後、30年後の将来を保証するものでは決してありません。しかし少なくともドルベースで考えると、確実な数字が導けますので以下に示します。

10年債の場合、
10年債金利を4.0%と想定し、1万ドルのゼロクーポン債を買うと今の投資額は150万円程度です。

10年後にドル元本は複利で約1.5倍になります。
1万ドルの投資だと複利で1万5,000ドル程度になります。

ブレーク・イーブンの計算は、
当初の投資額150万円 ÷ 償還額15,000ドル = 100円

当初の円建て投資額を、もらえるはずのドル建て償還額で割り算するとブレークイーブンが計算できます。ブレーク・イーブンの為替レートは100円です。

では30年物ではどうか。
30年債金利 4.30% で1万ドルを買うと投資額はやはり150万円程度です。
30年後にドル元本は3.5倍の35,000ドルになります。

先ほどと同様の計算をします。
ブレーク・イーブンの計算は、
150万円÷35,000ドル=43円程度になります。


10年債でも金利が4%前後であれば、かなりの円高にも十分に耐えうると思いますし、30年債であればなおさら安全度は高いと思います。

今後長期で見た場合のドル円相場は、決して投機筋の動きや政府介入の有無で決まるわけでなく、経済の実力しだいです。

ですので、現在の金利レベルとドル円相場でも、「米国債は買いだ」となります。




コメント (8)
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