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安倍首相がトランプに贈ったドライバー

2016年11月29日 | ニュース・コメント

  先週土曜日の朝、FMラジオのゴルフ番組で聞いたゴルフ話です。番組ホストのプロゴルファーT氏とゴルフ・ジャーナリストU氏の会話を適当にサマリーしました。

T;安倍さんがトランプに贈ったあの50万円もするホンマのゴルフクラブ、どうよ。

U;ハンディ3の使うドライバーじゃないね。金持ちじいさんのスペックじゃ、とてもトランプには合わないし、ハンディ3のゴルファーが人からもらったみやげドライバーを使うなんて、ありえない。あんなんでトランプと親しくなれたと思ったら、大間違いだよ。

T;外務省の役人が買って来たってよ、中国製ドライバーを(笑)。日本名のブランドだけど、株主はほとんど中国人だって知らないのかな。中国人の金持ちを騙すためのクラブだよ。

U;そう、トランプにしてみれば皮肉もいいところで、「なんて嫌味なやつだ」に違いない(爆笑)。

(林の注)ホンマゴルフは2005年に破たんし、日本のファンドが入って再生。それを中国系の投資会社が買収。日本では見向きもされなかった時代、台湾を含む中国人の金持ちをターゲットに、バカ高いクラブを売っていた。現在は香港に上場されていて、株主の9割以上が中国籍。最近はツアープロに高額の契約金を支払い専属契約を結ぶ戦略が奏功。最初は韓国勢プロが多かったが、日本人プロも使用するようになっている。

U;トランプ陣営は安倍首相がヒラリーと会っていることをにがにがしく思っているし、今回はファミリー同士なら会おうといって家に招き入れたのに、ファミリーは来ずに役人がぞろぞろ付いてきた。日本政府はあの会談でTPPの説得をしようとしたけど、大間違いだ。そんなこと、トランプが話すわけないよ。だいいち、まだオバマが大統領だからね。オバマを怒らせちゃったから、もし1月20日までに戦争でも起こって日本が攻められたら、政府はどうするつもりだ。

T;ところで、トランプ陣営にコネがあるんだって?

U;あるよ。日本人では数少ないコネがね。「政府のために使ってあげてもいいよ」って内閣府のしかるべき筋に申し入れたんだ。そしたら、なしのつぶてだった(笑)。オレがアドバイスしていたら、このタイミングであんなトンチンカンな会談なんかさせなかった。トランプ陣営は安倍首相に対してはヒラリーとの会談以来怒り心頭だから、ドライバーもらって喜んで親しくなれたなんて、これっぽっちも思っていない。

D;ドライバーなんて価値なかったってこと?

U;あれって中国製品だよ、トランプが嫌っている。嫌味だよ(笑)。彼はまだ大統領じゃないけど、アメリカじゃ普通、政府関係者への贈答や食事の接待は、せいぜい50―100ドルまでだよ。そんな基本的なこと外務省が知らないわけないのに。500ドルは立派な賄賂だよ。トランプの返礼の50―100ドルのポロなら許される範囲だけどね。

    サマリーは以上です。

  私はこの放送を早朝、ゴルフ練習場に向かう車の運転中に聞いたため、記述したことは正確とは言えませんが、趣旨ははずれていないつもりです。

  この番組は毎週土曜の朝5時から8時に放送される、ゴルフ場に向かうゴルファー向け「グリーン・ジャケット」というインターFMのゴルフ番組で、パーソナリティーはTBSテレビのサンデーモーニングで「屋根裏のプロゴルファー」と自称するタケ・小山氏。この日のゲストは政治ジャーナリスト廃業宣言をした上杉隆氏。いまはゴルフ・ジャーナリストとか、元ジャーナリストと自称しています。彼は以前NYタイムズの日本記者で、日本のジャーナリズムと政治の癒着を象徴する「記者クラブ」システムを批判したため、政治の主流からは完全にホサレています。

  ご存知のように省庁や政党、それに類する政治団体、さらには経済団体など、ほとんどの組織は自己防衛のため、記者会見の参加者を大手新聞などの御用記者に限定し、海外メディアやフリーのジャーナリストに門戸を閉ざしています。それは大手新聞社・放送局などが、自分たちの独占的権益を維持するためにも利用されています。

  彼は「報道の自由」以前に、門戸すら閉ざしている大手報道と政府などの鉄の結束を批判し続けました。そして挫折。その後フリーのジャーナリストとして3・11直後に原発のメルトダウン情報をいち早く得て暴露したところ、隠そうとする東電・政府サイドからこれまた徹底的に叩かれ、その後はほとんどすべてのメディアから追放されています。以前はフジテレビの「新報道2001」に準レギュラーで出演していましたが、舌鋒鋭い政府批判で降板させられた経歴も持っている鬼っ子ジャーナリストです。政治から締め出された後は、好きなゴルフを飯の種にゴルフ・ライターをしていましたが、やはり政治には未練たっぷりで先日の都知事選に出馬もしていますし、ネット放送を主催したりしています。。

  一方のタケ小山もプロゴルファーというよりも舌鋒鋭いゴルフ・ジャーナリストの呼び名の方が合っていて、上杉隆とはウマが合い、この番組の準レギュラーです。二人の共通項は、「日本ゴルフ改革会議」という団体で、議長はゴルフ好きの大宅映子、副議長にはアナウンサーの蟹瀬誠一やスポーツライターの玉木正之がいます。その会議の趣旨をウィキペディアから引用します。

日本ゴルフツアー機構国内男子ツアーの衰退、進まないゴルフ場利用税撤廃問題、若者のゴルフ離れや団塊の世代の高齢化、ゴルフとメディアの関係などの様々な問題を検討し、関係各所に具体的な提案を含む報告書を提出することを目的としている。既存の権益や利害関係に縛られずに「OPEN」で「FAIR」な議論を通じて、現実的な提案をすること、それによって日本のゴルフの健全で堅実な改革に少しでも貢献できるのではないか、という考えのもと月1回のペースで会議を行っている。」

  私は一ゴルファーとして、この趣旨に全面的に賛成します。

  日本の男子プロゴルフは不振を極めています。海外の事情に詳しく、ゴルフ好きで着眼点の優れた二人の言うことに耳を傾けたら、有力なヒントがえられるのではないかと思っています。

  タケ小山のゴルフはアメリカ仕込みです。彼はアメリカでプレーヤーとしてのゴルフだけでなく、ゴルフリゾート経営全般を学び、その後早稲田の大学院スポーツ科学研究科でスポーツマネージメントを修了しています。

  この二人の心情的共通点は、既得権益を守ろうとする古い体質の組織防衛に対し、実に的を射た批判と提案を展開するところです。私はそうしたジャーナリスト精神を評価しますが、なにせ二人とも的を射すぎるため、体制派からは嫌われ、不倶戴天の敵が多すぎます。

  上杉は政治ジャーナリズムの世界からシャットダウンされ、小山も古い体制派のゴルファーやゴルフ団体からは締め出されています。口の悪さは、私が聴いていても「それは言い過ぎだろう」という部分が2割くらいはあるほどです。

  それでもゴルフ界を含む世の中のためには、口の悪い二人の話にたまには耳を傾ける価値があると思っています。

  以上、つれづれなるままに


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稚拙なレヴュー その1 (シーサイド親父)
2016-12-01 12:18:38
河村小百合 「中央銀行は持ちこたえられるか―忍び寄る経済敗戦の足音」

かつて日銀に在職して、2016年2月には参議院の「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」に参考人招致されたことのある著者は、現在の日銀の市場買いオペを事実上の「財政ファイナンス」と判断しています。
その上で、「財政ファイナンス」とは「中央銀行による国債引き受け」のことで、これまでの国内外の歴史的な経験からは、必ず放漫財政と財政破綻や高インフレを将来し、国民に甚大な負担を負わせる結末を引き起こすとして、現在ではどの国でも禁じている、と警告しています。
そして事実上の「財政ファイナンス」によって、すっかり感覚が麻痺してしまったこの国全体に”油断”と”慢心”が充満してしまっているように見える、と嘆いています。

著者は財政危機に陥った場合、2つの債務調整のパターンを説明しています。
1.連続的な債務調整
10年、20年といった長い期間に亘って国民生活にさりげなく重たい負担がじわじわと及んでいく。その例として「高インフレ」を挙げています。政府債務は実質減少していきますが、国民は実質所得が相当な期間目減りさせられ生活が苦しくなります。
もうひとつの例として「金融抑圧」を挙げています。これは「閉鎖された経済」にて効果を発揮しますが、国際的に自由な資本取引が可能な現在では、主要国の金利が上昇すれば外国に資金が逃げていくのでうまく行きません、と述べています。

2.非連続的な債務調整
そのひとつは対外債務が多い場合の「対外債務調整」で、元本も利息も払えませんという債務不履行です。
もうひとつの例は国内債務が多い場合の「国内債務調整」で、日本の場合はこちらのパターンが当てはまります。国の財政運営が回らない時点で、銀行は国債を損切り出来ず、取り付け騒ぎも起こるかもしれません。これを避けるために国債の利払いや償還期限を延期したりするリスケジュールや公務員給与カット、年金カットなどの歳出カットが考えられますが、もっとも怖いのが「資産移動規制」→「預金封鎖」→「資産税」です、と警告しています。
戦後財政史も著者の研究対象でした。
敗戦によって財政運営に行き詰ったとき、時の大蔵省の基本方針は「取るものは取る、返すものは返す」だったそうです。「取るものは取る」は高課税率の「財産税」のことで、「返すものは返す」は債務不履行を回避する意味です。つまり財産権の侵害ではなく、徴税権の行使という名目だった訳です。

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稚拙なレヴュー  その2 (シーサイド親父)
2016-12-01 12:20:10
大井幸子 「円消滅 第2の金融敗戦で日本は生き残れない」

わたしがこの本を手に取ったのは、題名「円消滅」に魅かれたからである。現在、日本は財政危機に着実に向かっている状況の中で、様々な知識人の円安シナリオを知ることで今後の対応の参考にするためである。

国際金融の世界で培われた経験と知識は素晴しいが、全体にやや散漫な印象を持ちながら頁を進めて行き、第3章「預金封鎖と新円切り替え」のところで、思わず眼をむいた。

かつてわたしはジェームズ・リカーズの「通貨戦争」を読んで、世界の通貨パラダイムががらっと変わる予感を受けながらも、ここ数年、円をヘッジするため米ドルを資産分散の対象にして来た。そしてリカーズの新著「ドルの消滅」はあり得ないだろうと無視して読まなかった。
しかし大井さんの本「円消滅」は「ドル消滅」に呼応するコンセプトで書かれていて、そしてFRBの通貨発行権が2013年8月9日で契約期限を迎え、米国政府に移行しつつあること。米国債の償還のピークが2016年~2018年に集中していること。世界でもっとも米国債を保有している日本との関係等から、ドルのパラダイムシフトが日本の預金封鎖・新円切り替えのタイミングで行われるかもしれない、1ドル=1円という大胆予想シナリオ。そこで眼をむいた。

ここに来て日本では「資産移動規制」→「預金封鎖」→「資産税」の可能性が急に現実味を帯びてきている。さらに不測因子として「新円切り替え」を頭の片隅に置く必要があると思う。
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