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有名人を語る投資詐欺

2024年05月25日 | ニュース・コメント

 フェースブックやX=旧ツイッターに登録して楽しんでいる方々が、有名人の名を語る投資詐欺に引っかかっていますね。有名人の側も巨大SNSの運営会社を訴えるところにまで至っています。私もフェースブックには参加していますが、詐欺師に名前は使ってもらえません(笑)。

 名前を使われてしまっている堀江貴文氏、前澤勇作氏、池上彰氏、森永卓郎氏などに心から同情申し上げます。

 

 なかでも特に許せないのは、私の古くからの友人である森永卓郎さんを語る詐欺です。彼は私と同時期、1981~2年に日本経済研究センターに出向していた仲間で、私はJALから、彼は日本専売公社、のちの日本たばこから出向し、一緒に日本経済の研究と経済予測に励んでいました。

 彼は日経センターでも人気者で、毎日がバラエティー番組に出演しているようなにぎやかさでした。大好きなマンガは、「ドクタースランプ・アラレちゃん」。そのころから趣味はミニカー集め。

 何故日本たばこに入社したのかを聞かれると、「だって大好きなタバコがいくらでも吸えるんだもーん」と言ってはばからなかったことをよく覚えています。私はそれを真似してJALに入ったのは、「いくらでも飛行機に乗れるんだもーん」と言って笑い合ったのを思い出します。

 

 彼はその後三井情報開発に転職してエコノミストを職業とし、果ては大学教授。私はソロモンブラザーズに転職しバンカーになりましたが、お付き合いは長く続いています。ところが去年の12月に、ガンがステージ4まで進行していることを公表しました。タバコ好きが祟ったのかもしれませんね。それまで何十年も続いていたお互いの年賀状のやりとりも、今年はなくなったのが、とても残念です。しかし最近は病状が安定しているようで、回復することを祈っています。

 

 そうした中、最近フェースブック上で、次のような投稿を見かけました。

「森永卓郎です。ガンがステージ4にまで達し、余命いくばくもありません。みなさんへのせめてもの恩返しに、『これに投資すれば10倍儲かる』という投資を人生の最後にお知らせします」とあるではありませんか。

 

 私からみれば、彼を語る投資詐欺であることはミエミエなのですが、きっと引っかかる人はいるのだろうと懸念を抱きました。余命幾ばくもない人を語る詐欺だけは本当に許しがたいのですが、同時に私自身それに対していかんともしがたく、歯がゆさを感じています。

 そこでせめてもと思い、私のブログで彼を語る投資詐欺にひっかからないよう、記事を投稿することにしました。もちろん私のブログをお読みの方々は、そんな投資詐欺とは無縁であることは百も承知ですが、できればこの投稿を拡散していただきたいのです。といってもXと違い、フェースブックで拡散するのは、容易ではありませんね。

 私も今回の著書、「投資は米国債が一番」の中で一つの章を割いて投資詐欺などへの対処を書いています。第5章、「お金のリスクにご用心」です。

 章の中の小見出しと概要は、

・オカネがからむと、騙す側も巧妙なので注意が必要

 私の知り合いや著名人がひっかかり、数千万~数億単位のカネをだまし取られた実際の事件を紹介しています。カリブのタックスヘイブンまでみんなをツアーに連れて行き、現地で自分の口座を開設するということまでしている詐欺の手口は、お金持ちの心をくすぐるに十分な仕掛けです。

・プリペイドカードやポイントカードでも疑うクセをつけましょう

商品を買う、あるいはポイントが貯まって交換しようとしたら、相手が倒産していたというような簡単なことです。

・オカネは人に預けてはいけないのです

商店街で店舗を借りていた友人が、店をたたもうと家賃10か月分、3千万円の敷金の返済を求めたら、大家が「カネはない。ない袖は振れない」と言われ泣き寝入りせざるをえなかったという事件。

ちなみにアメリカでは敷金は中立機関に信託され、大家もテナントもそれに手を付けられません。

・ネット情報の落とし穴はコレ

この中では詐欺そのものではなく、「安全な投資」や「ストレスフリーの投資」などのキーワードを打ち込んでも、出てくるサイトはギャンブルまがいのFX、株、不動産投資ばかりということを示しました。

 

 元に戻りますと、どうしたらこの有名人を語るSNS詐欺を防げるのか。

政府もさすがに状況を見かねて対策に乗り出すようですが、きっと一般的な取り締まり程度で、オレオレ(特殊)詐欺の対策同様、本当に役に立つ防御などできないのではないでしょうか。

 私は特殊詐欺への対策の決め手はこれだと思っています。私が家内の母親に実際に実行している簡単な対処で、「固定電話を解約し、年寄り向け超安価なスマホではない携帯電話を持たせる」という対処で、コストセーブもできます。もちろん知らない人からの電話は一切受信しない設定にしています。すでに10年近くを経ていますが、これで困ったことは一度もありません。金融機関や公的連絡はほぼすべてが紙ベースだし、役所・病院などでの電話番号の登録も携帯番号にしているためです。

 

 では有名人を語る詐欺への対処はどうするか。私のアイデアは、世界的プラットフォーマーに責任を取らせるという常識的対処です。

「有名人本人が運営者に『あれは私ではなく、詐欺だ』と申し出た場合、すぐにその投稿を削除しなくてはならない」、という法律を作る。有名人にはスタッフがいると思いますので、対処できるでしょう。

 そして削除を実施しないまま放置し実際に騙される方が出た場合、全額の損害賠償をさせ、さらに同額を罰金として日本国に納めさせる。

 

 これくらい単純な立法であれば、すぐにでも実行できるハズ。言論の自由を語って反論することなど詐欺師はしないと思われるので、有効だと思います。詐欺師を特定するのは技術的にも難しいため、サイトを運営する巨大企業数社を相手にするのが一番簡単です。

 すでにEUは以下のような対処案で合意し、実施しています。2022年4月23日ロイターニュースから引用。

巨大IT企業、多額の罰金に直面も-EUがデジタルサービス法案合意

  • 違反に対しては全世界年間売上高の最大6%の罰金が科される

欧州連合(EU)はデジタルサービス法案(DSA)で合意に達した。これにより、世界の巨大IT(情報技術)企業は多額の罰金に直面しかねない。

  大手テクノロジー企業は自社プラットフォームでの違法コンテンツへの対応が不十分との立場をとるEUは、対応策として今回の合意に至った。2024年の早い時期に施行され、違反に対しては全世界年間売上高の最大6%の罰金が科される。

  21年の売上高を基にすると、アマゾン・ドット・コムは理論的には最大260億ユーロ(約3兆6000億円)、グーグルは最大140億ユーロなどと、違反の代償は極めて大きくなりそうだ。

主な内容は:

  • ターゲティング広告のための人種や宗教といった要注意データの使用禁止
  • 未成年者をターゲットにした広告の禁止
  • オンライン上でユーザーを不利な行動に誘導する手法、いわゆる「ダークパターン」の禁止 

  EUの行政執行機関、欧州委員会のベステアー上級副委員長(欧州デジタル化総括、競争政策)はこの日の声明で、「DSAは、安全で責任あるオンライン環境を形成することにつながる」と指摘した。

  一方、グーグルはDSAの目標を歓迎するとし、「それが万人にとって機能するよう、残りの技術的詳細をきちんと整えるために当局と協力していくこと」を楽しみにしているとコメントした。

引用終わり

 

 上記の中でダークパターンの規制が詐欺の規制に該当します。EUではすでに22年に成立した規制を、何故日本政府は放置しているのか。

 それだけでなく、政府は「老後資金2千万円不足」から始まり、「新NISA」で投資を煽りに煽っておいて、肝心な投資詐欺は見逃すなど、もってのほか!

政府こそ金融リテラシーを持っていないことがバレバレです。

 国民の金融・投資のリテラシーを向上させるのはとても時間がかかりますが、プラットフォーマーの規制はすぐにでもできます。

以上

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1 コメント

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Unknown (目白のおっちょこちょい)
2024-05-27 10:12:36
一ユーザーとしてプラットフォーマーのサービスを使ってる分には、安くて快適なサービスを提供してくれるスマート企業!という感覚ですが、仕事で付き合ったりトラブルが発生すると、まったく印象は逆です。
「独裁者に率いられた巨大な官僚集団」というのが率直な印象で、エリート集団なので外部からの圧力に屈するどころか助言やアドバイスも聞き入れません。
規制をすべきですね。今回の前澤氏の提訴は今後の試金石だと思いますので、注視しています。
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