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水田不要、マイコス米が革命をもたらす

2024年05月29日 | ニュース・コメント

 ダイヤモンド誌の5月11日号は、日本の農業のあり方を根底から覆すような農業革命の特集号でした。その中で私が注目したのは、菌根菌資材である「マイコス」という、何が何だかわからないキーワードでした。まずその特集号からの引用をご覧ください。

引用

 農業革命の代表格が、米国発の菌根菌資材マイコスである。マイコスをまぶしてまいた種もみは、田に水を張らなくても雨水で育つ。毛細根が発達し吸水力が高まるためだ。

 田に水を入れない乾田直播という栽培方法なら、育苗、田植え、水位の管理の手間が省ける。マイコス米の生産や農業資材の開発・販売を行うNEWGREENによれば、農業従事者1人当たりの栽培可能面積は慣行栽培の20ヘクタールから47ヘクタールへと急増する。何百枚という田を耕作しなければならない豪農たちが飛び付くのもうなずける。

引用終わり

これだけではわかりづらいので、NORINAという農業コンサル、肥料・種苗などの販売も行っている会社のHPから追加説明を引用します。

HP;https://www.norina.co.jp/products/mykos-ddsr/bb

マイコスはカビの一種です。大昔、あらゆる生物が海から陸へ上がった時から存在します。植物の根っこに感染し「菌根」を形成させ、互いに共生しながら増殖していきます。自然林の土壌には菌根が多く存在しています。菌根とは菌と植物の根が一体となった状態をいいます。これを形成する菌類を「菌根菌」と呼んでいます。稲の根にマイコスを感染させると、土壌中に張りめぐらせた菌糸からリン酸を吸収し、クモの巣のような樹枝状体をつくりだし、宿主である稲と共生するためにそれらを供給します。逆に稲が光合成で生成する糖などのエネルギーをおすそわけしてもらい共生します。
 マイコスに感染させ、水が極端に不足する乾田で実験してみますと、「樹枝状体(arbuscule)」が形成され、生育に必要な水分と栄養分をまかなえることが判明しました。また、草丈が低くなり登熟も早いことから、毎秋に懸念される台風での倒伏や稲穂の沈水も防止できます。

乾田直播によって、従来の田起こし、水張り、代掻き、苗代づくり、田植えが不要になります。除草が成功のカギになり、どれだけ適期に除草するかにより、明暗を分けます。元来、水田では水の濁りが雑草の生育を阻む要因となり、除草機能を有していましたが、乾田直播は除草剤以外にその機能はありません。

 雑草をコントロールしながら、水稲の発根を促し、水分と栄養分を吸い上げ成長させる資材が必要になります。

引用終わり

 さらにアカデミックな観点から議論を展開している「スマート・テロワール」というサイトから、追加の説明を引用します。

「マイコス」とはなんぞや

「マイコス」はバイオシードテクノロジーズ社(https://bioseed.co.jp/)が輸入販売する菌根菌資材のブランド名で、多種の菌根菌をミックスしている。

同社製品の販売代理店のHP(https://info-gri.wixsite.com/csplanet/mykos)に掲載されたマイコスの効能書には以下のような説明が載せられている。

①陸上植物の科の80%超と共生(アブラナ科・アカザ科は対象外)

② 菌糸を根から長く伸ばしてリン酸を土壌から吸収

③ リン以外にも、窒素、カリュウム、マグネシウムや、一部の微量要素(亜鉛、銅、鉄など)の吸収も増加 

④ 作物に抵抗性誘導が生じ、病原菌を根から排除して病害を軽減

⑤干ばつや高塩類濃度土壌での水ストレスに対する宿主作物の抵抗性を高める

⑥菌根菌はグロマリン(glomailn)と呼ばれる糖蛋白質を細胞外に分泌。これが菌糸を土壌に粘着させる。そしてグロマリンは土壌に蓄積し、土壌団粒の安定性を強化する

マイコスをまぶしてまいた種籾は毛細根が発達し吸水力が強まるので、田に水をはらなくとも雨水で育つということのようだ。

この効能書きを信ずれば、吸水効果だけでなく、栄養素の効果的な吸収そして病害虫耐性の拡張、さらには土壌の改善も期待できるようだ。

つまりは減農薬、減化学肥料も期待できるということだ。

「マイコス」米がもたらす福音

終始乾田でのコメ栽培は栽培に関わる生産性の向上に寄与する。

田に水を入れない乾田直播なら、育苗、田植え、水位の管理が省けるからだ。

農業従事者一人当たりの栽培可能面積は慣行栽培の20haから47haへと急増するという実証結果も出ている。(ダイヤモンドオンライン2024/5/7号

https://diamond.jp/articles/-/343101)

もちろん反収増加も期待できる。

さらには乾田でのコメ栽培は温暖化ガス削減にも寄与する。昨今水田で発生するメタンガスが地球温暖化の要因として俎上に載せられてきている。水田から乾田への流れは温暖化対策としても注目されることになるだろう。

また乾田栽培の流れの中で、不耕起栽培への挑戦も始まっている。

https://www.youtube.com/watch?v=XXEtWH5_Ua8&t=246s

不耕起栽培を継続することで土壌が豊かになり、減農薬、減化学肥料が進化し反収増加と資材コストの削減が期待できそうだ。

「マイコス」米によってコメの生産コストが大きく削減されれば、日本米の輸出競争力が拡充する。その時減反政策はもはや捨て去られ、全ての休耕田で再びコメが栽培され、日本は強大なコメの輸出国に変貌してゆくだろう。

輪作体系の導入そしてスマート・テロワールへ

終始乾田化した田ではコメ以外の穀物が栽培可能になる。コメだけでなく小麦やとうもろこしや大豆を栽培することで土壌は肥沃化し、さらなる土地生産性の改善が可能になる。輪作体系の導入は一気に進展し始めるだろう。

となれば、小麦や大豆やとうもろこしの自給率は改善される。

これまでほとんど輸入に頼ってきたとうもろこしが栽培されれば畜産の事業基盤が強固になり、畜産業の拡大も視野に入ってくる。

そればかりか田園は多様な穀物が生育する姿へと変貌して、農村の景観が一気に色とりどりな色彩を帯びて輝きだすに違いない。

まさに松尾雅彦氏が夢見た美しい村が至る所に出現する。つまりスマート・テロワール構想の揺るぎない基盤が構築されることになるわけだ。

「マイコス」米の普及から当分目が離せない。

引用終わり

 

  もしこれらの革命的変化が本物であれば、日本の農業の生産性は飛躍的に増加して農業の収入があがり、災害にも強くなる。今や人口減少の最大の被害者でしかなかった農業が、新規参入の大舞台になることすら考えられます。

 ということで、門外漢の私には知見が全くない分野のことですが、とても衝撃的な内容だったので、みなさんにお知らせすることにしました。この分野に詳しい方のご支援をお願いします。

 以上、「マイコス米が革命をもたらす」でした。

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2 コメント

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Unknown (小豆)
2024-06-05 20:56:02
仕事がゴルフ場開発だったので、茨城県内で地権者である農家の米作りを直に見ることが出来ました。

茨城では水田ではない稲作があり、大変興味深く、農家に質問したことがあります。
陸稲、おかぼ又はりくとうと言うそうです。

陸稲は水田と異なる米の品種とのことで、水田に向かない地形の場所に栽培されるとのことでした。
確かに陸稲の場所は山の中腹にありました。その直ぐ横に農家の自宅がありました。
毎日の様に交渉で自宅を訪れるので、農作業を見ることが出来ました。
稲の脇を頻繁に耕したり、毎日の様に雑草取りに明け暮れていたのを思い出しました。
陸稲の場合は雑草との戦いと多くの手間が必要とのことでした。

方や水田の場合は、育稲と田植えの手間はありますが、田植え後は手間要らずとのこと。僅かな農薬で雑草知らずとのことでした。
水の表面に膜を張る農薬は雑草が水面に顔を出すと農薬に触れて死滅、既に水面以上にある稲は問題なく、水の表面に留まる農薬で地中からの農薬の影響も極わずかとのこと。
確かに水田では田植え後に田に入って作業をしている光景の記憶はありません。

では、陸稲で農薬を使わない理由は何かと尋ねると、地面に農薬を入れるので稲に直接影響があること、その陸稲は自身の消費用なので農薬ゼロで手間をかけるとのことでした。
30年以上前に聞いた内容ですが、水田の場合は1回から2回の農薬使用、陸稲の場合は5回以上だったと記憶しております。

マイコス米ではありませんが、田んぼ以外の場合のデメリットも勘案すること必要と思いコメント致しました。
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小豆さんへ (林 敬一)
2024-06-13 08:27:08
コメントをいただいているのに、気が付かず、失礼しました。ありがとうございます。

陸稲の雑草取りは確かに問題ですね。

その問題に言及している以下のサイトがありますので、参考までにご覧ください。内容の中では除草剤を使うタイミングについて言及がありますが、あまり詳しくはないです。

https://www.norina.co.jp/products/mykos-
ddsr/

他にも「マイコス米 雑草」と検索するといろいろ出てきますが、どれも内容的には同じように散布のタイミングに関する記述でした。

またなにか気づかれた、是非教えてください。
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