ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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クロちゃん、お気の毒様です

2016年04月30日 | ニュース・コメント

  久々のゴールデンウイーク狙い撃ちトレードでしたね。すでにコメント欄で様々な意見をいただいていますが、私はここへ来ての超短期的円高はヘッジファンドが暴れているのだろうと思っています。

  その昔ヘッジファンドや投資銀行は、たびたび日本のFX投資家が留守になる年末年始とGWに大暴れして、ポジションを強制的に解消せざるを得なくしてしまうトレードを仕掛けていました。簡単に言えば「踏み上げさせる」ということで、日本の投資家の休日トレードのしづらさを狙っての仕掛けでした。最近は休日が続くGWや年末年始でもネットでのトレードの容易さから、そうした狙い撃ちはなくなったのだろうと私は思っていました。今回は何もしなかったクロちゃんの虚を突いたのでしょうね。

   しかし今回ばかりはクロちゃんに同情してあげます。物価の2%目標の先送りなんて当たり前だし、打つ手なんかもともとないんですから。

   今年の2月1日、私はクロちゃんのムーン・ウォークについてこう書いています。

 引用

最後に大事な大事なクロちゃんのコミットである2%のインフレ達成時期について、いったいどこまで後退しているかを見てみましょう。13年春に「2年で2%」とコミットしたので、当初目標は15年春のはずでした。しかしその時期が来ると16年前半と1年後退、さらに15年秋には16年後半になり、今回は17年前半に後退しています。私がクロちゃんならこう言います。

「2%達成時期は、これからいつも日銀発表から2年後だ!」(爆)

引用終わり

   このジョークは、今回ぴたりと当たりました。2%の達成時期は発表から2年後に変更したのですから(笑)。

   かわいそうに1月のマイナス金利導入で株の暴落と円の急騰に見舞われたクロちゃんですが、今回は悪さは何もしていないのにまた株の暴落と円の急騰です。

   それでも私は珍しくクロちゃんに同情します。株やさんちのアナリスト連中が勝手に日銀の追加策を煽りまくって株価を押し上げたのが、クロちゃんが何もしなかったので暴落したのでしょう。何かすればするで暴落、しなきゃしないでまた暴落。どーすりゃいいんだ・・・

    でもねークロちゃん。それもこれもやりすぎの結果ですよ。もう出口がないことを誰もがわかったからには、何をしても無駄だし、何をしなくてもダメです。今後も日銀の決定会合のたびにこうしたことが繰り返されるのでしょう。

   ところでアメリカ株ですが、アップルの暴落だけでどんどん下に引っ張られています。ダウにしてもナスダックにしても、アップルの影響が大きすぎるのです。その下げの中で「お見事!」と言わざるをえないのが、物言う投資家カール・アイカーンです。

     彼は3年前からアップル株を買い進んだのですが、去年の第4四半期から売りに回り、今週売り切ったようです。その儲けがいくらになったのか正確にはわかりませんが、どうやら20億ドルにはなったようです。その曲者アイカーンのアイカーンたるブラッフがなんぼのものか、どうぞ去年5月26日のフォーブスの報道を見てください。ちょっと長いですが、おもしろいですよ。その時の株価は最高値の132ドル一歩手前でした。

 引用

物言う投資家のカール・アイカーンは、アップルの株価は「著しく過小評価されている」と今でも考えており、5月18日に目標株価を再び引き上げた。アイカーンはアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)に宛てた公開書簡で、なぜ同社が誤って評価されていると考えるのかを詳しく記し、さらなる自社株買いを促した。

  アイカーンは、ほんの数カ月前には216ドルと言っていたアップルの目標株価を240ドルに引き上げた。5月15日の同社株終値を86%上回る。アップルの株価は翌週月曜(5月18日)におよそ1%値上がりし129.97ドルになった。

  アイカーンの高い目標株価は、アップルがテレビと自動車に参入するという彼の観測に基づいている。「アップルは合わせて2兆2,000億ドル規模と見られる2つの新市場(テレビには来年、自動車には2020年までに)に参入して両市場で優位に立つと我々は見ているが、こうした見方を投資家は全く評価に織り込んでいないようだ」と記している。

  「2兆2,000億ドルの市場機会は、アップルウォッチを除けばアップルの既存市場の3倍の規模に相当する」とアイカーンは言う。仮にそれが真実だとしても、アップルには自動車製造を始める計画があるとの兆候は見られない。アイカーンは「研究開発費を増額することは、理にかなっている」と指摘する。

  「株価が240ドルに到達するためには一株当たり利益が12ドルなければならないが、2016年度には達成可能だ」とアイカーンは予想している。これは ウォール街の大方の予想よりかなり高い。アイカーンはまた、アップルを純利益の18倍で評価しているが、市場の平均倍率である10倍よりも高く、むしろ S&P 500の17倍に沿うものである。

  「大手機関投資家やウォール街のアナリスト、ニュースメディアなどは皆アップルについて誤った評価をし続けている」とアイカーンは記している。書簡でアイカーンはアップルが先月、自社株買いの承認額を500億ドル増やしたことを賞賛したが、さらに増やすべきだと主張している。「今こそもっと多額の買い戻しをすべきだ」と記している。

  時価総額世界一を誇るアップルは巨額の手元現金を抱えている。昨年末の残高1,780億ドルはマイクロソフトの902億ドルやグーグルの644億ドルをはるかに凌ぐだけでなく、アメリカの法人企業全体の手元現金の10%を占めている。

 引用終わり

    これだけ持ち上げておきながら、しっかり売り逃げています。彼は3年前の株価が60ドルから80ドルくらいの時に買い始め、15年5月の130ドル手前のころに目標は240ドルだと持ち上げたにもかかわらず、すでに去年の第4四半期には売却を始め、今年に入って売り切ったのです。アップルの株価はこの目標宣言の直後に最高値132ドルを付けその後下落に転じ、現在の株価は93ドルと強気宣言より3割下落しています。ポジショントークはこうあるべきだの見上げたお手本です(笑)。

   アップルの株価下落は成長神話の終わりの始まりかもしれません。iPhoneの限界が見え始めた中で、次の成長機会を見いだせていません。私は以前、アップルの成長神話はそろそろ限界だろうと申し上げました。覚えていらっしゃる方がいるかもしれません。それは株価の面では大外れでした。iPhone以降新機軸を打ち出せていないのに、iPhoneのヒットが続き株価は2倍近くに上昇したからです。たしかアイカーンが買い始めるより早く「売りだ」と言ってしまったのですから、株のアナリストにはなれませんね(笑)。

   昨日のコメント欄に、「ストレスフリーの本質とは」というタイトルで (山主)さんが長期の見通しについて、書かれています。それと為替の急激な動きについては、みなさんの議論をしばし拝見させていただきます。いずれ私なりの解説を試みたいと思いますが、GW中は不在にすることもあり、ご勘弁を。

コメント (1)
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