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アメリカの金融市場について その4

2015年11月29日 | アメリカの金融市場

  前回の記事の要点は、

経済全体は順調ですが、極めて順調で来るべきインフレを早目に抑え込む必要がある、というほどではない。

そして、なのに利上げを行うのは、

・今回の利上げは異例のゼロ金利からの脱却をするためのもの。「利上げではなく異例からの脱却」

こう解説をしました。では今回の利上げによって、長期金利はどうなるのか。みなさんの関心はこの点が大きいのではないかと思われます。


  結論的に申しあげますと私は、「今回の利上げで大きく長期金利が上昇することはない」とみています。期待を削ぐようですがその理由は、

1.市場がすでに利上げを相当程度織り込んでいる

2.利上げ理由が異例の状況からの脱却

  織り込み済である理由は、利上げがコンセンサスになったのがすでに10月中旬以降で、11月の初めの雇用統計の発表でダメ押しになってからすでに3週間が経過しているからです。それでも10年物金利のレベルは2.2%前後です。

  そして繰り返しなになりますが、過去の多くのケースではいったん利上げが始まると小刻みに10回程度連続で利上げされることが多い。ところが今回は世界経済もアメリカ経済も、今後ぐいぐいと成長スピードを速めるほどではなさそうだからです。多くの見通しも来年中にせいぜい2回程度というかんじです。

  では来年の長期金利の見通しはどうでしょうか。その前に私は「アベチャンは新3本の矢の前に旧3本の矢のレビューをしろ」と言い続けていますので、まずは私自身の今年の見通しのレビューをしてみます。

  ちょっと長い引用ですが、昨年12月26日の記事からまず金利見通しの前提として世界経済をどうみていたかチェックします。

引用

世界経済はいまアメリカ頼りになっています。来年を概観します。
・ 欧州は底は打っても大きな回復は望めない。むしろさらなる減速リスクから一段の緩和策(国債買い取りなど)がいつ実行されるかに焦点が移っている
・ 中国も間違いなく成長ペースが鈍り、むしろ不動産価格の下落スピードが増すと大きくスローダウンするリスクがあるため、人民銀行が金利引き下げを繰り返す可能性がある
・ 資源国はこれまで述べてきたように産油国であるロシア、中東、中南米、そして石油以外の資源国である南米、オーストラリアなども回復が見込めない
・ 日本は14年が年間通してもマイナス成長となるのはほぼ確定。物価上昇率も毎月低下が継続し、本日発表の11月実績は消費税分を除くとコア指数で前年比がわずか+0.7%まで低下。来年3月に2%には絶対にならない。15年の夏には成長戦略などカラ念仏だということがバレて政策手段が尽きる。もっとも バズーカクロちゃんだけは国債ネタが尽きると株を買いまくる暴挙に出て国際的非難を浴び、格下げの主犯となる。財政問題を抱えることから大きな財政出動はできずに、結果として成長率はゼロ近辺に終わる可能性が大きい。


引用終わり

以上が前提条件としての世界経済と日本経済の見通しです。では、その前提の元に金利をどう見通していたのでしょうか。

引用
要するに15年は頑張るアメリカの足を世界の大どころがみんなで引っ張る図式です。そして上記の見通しには天変地異を始め、国際紛争など様々な外部リ スクは加味していません。何故加味しないかの理由は、それらが起こる確率は上昇する一方ですが予測が不可能であること、私が投資を推奨している投資対象が悪材料に反応しやすい株式などではなく、世界が真っ暗になればなるほど光を放つ米国債だからで、世界のリスクなど計算に入れる必要がない投資対象だからで す。

①  FRBの米国債買いがストップ(36兆円、金利には大きなプラス)

②   来年なかばにFRBの政策金利上げ開始(金利には大きなプラス)

③   海外投資家のうち産油国からの買いが減少する可能性があり売りに回ることもありうる(ロシア保有分12兆円、OPECなどの保有分31兆円、金利にはプラス)

④    連邦予算の赤字削減による国債新規供給の減少(10兆円、金利にはマイナス)

⑤    雇用の順調な増加(金利には大きなプラス)

⑥    物価の落ち着き(金利には大きなマイナス)

⑦     世界の中央銀行の政策、日本は緩和継続か増強、中国は緩和、欧州も緩和策増強見込み(おしなべて金利にはマイナス)

そしてまとめとしては「何と言ってもFRBの政策スタンスと雇用そして物価」と述べました。では、上記のおおまかな要素を踏まえて来年の長期金利のレベル感をさぐります。FRBの利上げを年の中ごろと想定して、私の10年物金利の予想レベルは15年中は上が3%前後です。

いくら経済が順調だとしても、物価見通しに過熱感が出ないと利上げは急ぐ必要がありません。たとえ6月に利上げが開始されても、その時点で半年後・1年後にかなりの物価上昇が見込まれないと、連続してどんどん上昇させる必要はないのです。政策スタンスがその程度だと、長期金利も簡単には上昇しないと思われるので、私の結論は3%前後がせいぜいだろうと見込んでいるのです。


引用終わり

  さて、これが昨年末の私の見通しでした。私自身がこれにコメントをつける前に、是非みなさんのコメントを聞かせてください。それは私が唯我独尊になることを防ぎたいからです。よろしくおねがいします。

  

コメント (8)
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