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ドル円相場をどう見るか

2015年08月06日 | 為替相場

  暑い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしですか。

   ドル円相場も徐々に暑くなっていますね。今回は為替のアナリストの解説で相場の行方に影響のありそうな国際収支に関する予想数字が示されていたので、それを取り上げます。

   予想数字を示したのは野村証券のチーフ為替ストラテジスト池田雄之輔氏で、昨日のモーニング・サテライトでした。示された数字を並べます。

15年予測(単位;兆円)

1.経常収支          +22.0 ・・・下記未還流分を除くと+11.0程度

   うち貿易・サービス収支  +0.9

            所得収支    +21.2 ・・・このうち日本への還流は10.0程度

 

2.投資フロー(資本収支)   ▲28.5

    うち M&A               ▲5.4

       公的年金投資 ▲8.4

       投信・生保投資 ▲14.7  

 

3.1と2の合計は▲6.5だが、真の合計数字は▲17.5程度

 

  解説します。為替の実需という意味から重要なのは1.の経常収支と、2.の投資フローの合計です。このところ言われているのは「貿易・サービス収支が改善し、今年はトントンになりそうだ。しかし所得収支の大幅なプラスから、経常収支は22兆円のプラスとなる。」ということです。

  しかし池田氏は「所得収支のうち半分くらいは海外に滞留したままで、日本に毎年還流するわけではないので、実際の経常収支はせいぜい11兆円くらいだろう」と計算しています。これは私も知らなかったことで、彼は「例えば米国債を外為会計で買っている政府は、毎年の利子3兆円を再投資に回し、還流はさせていない」と言っていました。その他の企業なども配当などを日本にすべては還流させていないと言うことなのでしょう。  

  一方、投資のフローではみなさんの投資分も含めこのところ海外投資が盛んですし、M&Aも超大型案件が多くなっていますので、28.5兆円にものぼる流出超です。その1.と2.の真の合計数字が17.5兆円の流出だと解説していました。数字を正確に計算するとちょっと違いますが、大勢に影響はないでしょう。

   昨年後半以降、資源価格の低迷から貿易収支の赤字が大幅に縮小しています。それが経常収支の改善に貢献しているのですが、為替の実需要因はこの国際収支の統計とは10兆円も違うことを示してくれており、先行きの為替を見る際には大変参考になる分析だと思います。

   こうした為替の実需要因がドル円相場の底流にあることがわかると今相場はより理解しやすいと思われます。

  以上

コメント (6)
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