これまで2回にわたり中国問題を取り上げました。1回目は中国のGDP統計には疑問があるということを、電力使用量と貨物輸送量などの数字との乖離で解説しました。
その2では、株式相場の崩壊より不動産市場の崩壊がより深刻で、いずれはその日が来る可能性があるという見通しと、もし政治的崩壊が不動産市場の崩壊と一緒になるとインパクトは非常に大きくなると思われるが、そうはならない可能性が強い。理由は独裁政権が一気に崩壊するようなプロセスよりも、集団指導体制のため内部からの改革と反動を繰り返しながら穏やかではないにしろ徐々に構造変革される可能性が強いのではないか、という見通しを示しました。
今回は最終回として、現在進行形である中国経済のスローダウンが世界に与える影響を私がどう見ているかをお伝えします。
最初に結論的に申し上げますと、「中国のスローダウンは世界経済に大ショックなどもたらさない」ということです。
資源価格の低迷については中国の爆食が終わってしまい、長期低迷が言われています。しかし以前から申し上げているように、いわゆる資源産出国でない先進国や新興国にとっては、資源価格の低迷こそが願ってもいない「経済活性化策」なので、心配には及びません。去年の秋以降、アメリカのシェールオイル・ガスについてずいぶんと悲観的見通しが支配し、まるでアメリカ経済が押しつぶされるようなトーンになっていました。しかし私は一貫して「トータルで見れば資源価格の低迷は、アメリカにとってよいことだ」と申し上げていましたが、ほぼその通りに推移しています。このことは資源価格がたとえさらに低迷しても、今後も有効な議論です。それはまた欧州経済しかり、日本しかり、新興国しかりです。
中国の7月の貿易統計が発表されました。それによれば7月も輸出入は低迷しています。ものごとは1ヶ月の結果で判断せず、より長い期間で見るべきです。1月―7月の合計では、輸出は0.8%減少、輸入は14.6%も減少しています。この統計にも疑問符をつける向きもありますが一応正しいとすれば、やはり国内需要の低迷、つまり景気のスローダウンを表してると思われます。このため中国に貿易依存度の高い一部の国は確かに影響を受けると思われます。それはいったいどこか。
台湾、韓国です。
貿易の中国依存度を国別に上位から並べますと、台湾26%、韓国25%、フィリピン13%、ベトナム12%などです。台湾と韓国にとっては一大事ではありますが、その他の国にとっては少なからぬ影響はあっても、壊滅的ではないと言うことが言えるでしょう。台湾・韓国にとっては中国依存度も高いのですが、経済全体の貿易依存度も高いため、2重の意味で影響は甚大です。昔の日本で言われた言葉、「アメリカがくしゃみをすると、日本は風邪をひく」が、そのまま「中国がくしゃみすれば台湾・韓国は風邪をひく」ということが言えそうです。
国内需要の大きい日米欧については、特定企業に大きな影響があっても、経済全体ではさほど大きな影響はないと私は見ています。
以上、このところ国際経済の話題の中心である中国経済のスローダウンに関して、私の見方をお伝えしました。
おわり