前回の記事にタイトルがすいていませんでした。タイトルは「中国問題をどう見るか その1」です。失礼しました。
前回は中国経済の実態は政府発表のGDP数値と、電力使用量や貨物輸送量の数値ではだいぶ乖離があり、GDP数値はあやしいところがあるというお話を差し上げました。この二つの指標は世界的に問題になっている資源価格低迷の元凶の一つが中国経済の低迷にあるということを裏付けてもいる指標でもあります。インドやブラジルなどの発展途上国が中国にとって代わるのはまだまだ先で、特にオリンピックを直前に控えるブラジルの低迷ぶりはひどいものがあります。成長率が見通しを含めマイナスになっていても金利を引き上げなくてはならないという危機的状況です。このブログをお読みの方はまさかブラジル・レアルに連動した投信などに手を出している方はいないと思いますが、高金利通貨への投資はバクチにすぎないということを今一度申し上げておきます。
中国に戻ります。前回、もう一つ申し上げたのは、株安を阻止しようと政府がやっきになるのは経済的動機だけではなく、非難の矛先が政府に向けられないようにするという政治的動機があるということでした。
ではこの先の中国をどう見るか。まず比較的中立的立場で経済をみているIMFの見通しをみてみます。IMFは今年の中国の成長率を6.8%、来年を6.3%とみています。その見通しの中で今年も来年も輸出がかなり回復すると見ているので、若干割り引いて見る必要がありそうです。OECDの見方もIMFとさほど変わらず、7%割れを見込むものの底堅いという見通しです。
中国の先行きを見るには株式市場に加え不動産市場を見ておく必要があると思います。問題の程度から言えば株式同様、あるいはそれ以上に不動産は大きい要素です。株式市場に対しての融資は証券金融や一部の消費者金融に限られていますが、不動産は銀行など経済の重要なインフラである金融機関が資金の出し手だからです。もしそれが不良債権化した場合、株式市場以上の悪影響を実態経済に及ぼす可能性があります。今は株式市場に限られている政府の大規模介入が不動産・銀行に対する支援にまで及ぶと、財政問題にまで至る可能性があるからです。中国の財政は赤字が続いていますが日本ほどひどくはなく、毎年対GDPでおよそ2%程度です。日本がひとケタ台後半なのに比べれば、中国はかなりましと言えるでしょう。
中国の不動産価格の有力な情報は政府の統計局の発表する70都市の住宅価格です。14年は特に後半になって価格が下げていたのですが、今年になってからは下げ止まり、若干上向きの都市が増えてきたという数字になっています。この価格推移は、地方の有力都市で大規模な住宅開発が完成後に販売できなかったり途中でストップし、鬼城と呼ばれるゴーストタウン化したままだという報道とは大きなギャップがあるようです。
ではこの不動産市場は今後いったいどういう推移をたどるのか。 統計数字が大本営の発表のため、見通すのはとても難しいのですが、昨年の4月の見解同様私はこのまま軟着陸できるとは思っていません。日本の90年代のバブル崩壊過程を振り返りますと、日本では株式市場の崩壊に続き不動産市場も1・2年遅れで大崩壊しました。日本も株式市場にはさんざん政府が介入しましたが、成功しませんでした。世界的に見ても官製相場が長続きした例などありません。まして不動産市場には政府も介入はできませんでした。規模が大きすぎるのです。日本と同じ様な過程をたどるのか。つまり長期にわたる株式市場や不動産市場の低迷が続くのか。
中国の場合、投資平台など無理な融資に頼る物件の多くは地方の物件です。空きが多く見込んだ利回りも達成できないのがこの地方物件です。都市の物件は多少の無理があったとしても、いずれはうめ切ることができ、採算も悪化する程度で留まります。
そして昨年申し上げた通り、日本と中国の決定的違いは国が成長過程にあるか成熟してしまっているかにあります。中国は規模的にGDPが世界2位とは言え、14年の一人当たりGDPでは7,600ドルでやっと80位。ちなみに日本は36,000ドルくらいで27位(さびしー)。成長過程にあってバブル崩壊はまだまだリカバリー可能なのです。ただし、政治的崩壊が同時進行しなければの条件付です。
中国の政治問題は私には手に余ります。そこで専門家の意見を参考にしますと、何故か中国をよく知る専門家であればあるほど、政治的な堅固さは揺らがないと見る人が多いのです。理由は強固な共産党独裁体制と党が軍と警察を掌握しており、ネット上の情報規制も強固であることなどです。