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戦後70年、第2の敗戦に向かう日本  その2

2015年01月14日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  第2の敗戦シリーズの第1回目はプロローグとして私の歴史認識を自分が振り返るかたちで書いてみました。簡単にまとめますと、

・戦中世代はバブルの主役だったが、そのツケを払わずに年金もしっかりもらって逃げ切った

・団塊の世代はバブルを享受し正規社員ステータスを満喫してリタイア。しかしバブルのツケは支払うべきで、年金をもらい始めたが逃げ切れるか否かは疑問

・それ以降の世代は非正規社員を甘受させられ、いわれのないバブルのツケが自分達に回って来る不公平感を抱きながらも、それに備えるため消費はセーブせざるを得ない

・本来であればバブル後に第2の敗戦を認めて、早目に復興すべきだった。しかし為政者も国民もそれを嫌い先延ばししたため、長期の停滞に陥った

   ここからが2回目です。

   さて、長期の停滞を脱するために取られた戦略は、アベノミクスというバクチでツケを解消しようとするもので、きわどい政策と言わざるを得ません。

   すでに2年を経過したアベノミクスですが評価すべき点は、大企業を中心とした経済界・証券会社を含む金融界がアベノミクスを手放しで絶賛し、国民の中では金持ちもその気になっている層がいるという点です。これは私の言う「でかしたアベチャン」部分で、それが2年目も継続しました。

   ではそうしたムードではなく、アベノミクス下の昨年1年間を数字で振り返ってみることにします。

 1.日本経済成長率・・・GDP成長率はマイナス0.5

昨年1年間のGDP成長率はまだ出ていませんが、予測機関40社の予測平均値は実質成長率でマイナス0.5%です。この1点を見ても「経済は回復基調にある」という政府発表とは大きな差があり、実際にはマイナス成長でした。この原因はGDPの6割を占める個人消費が不調であったことによります。

なお、40社の予測平均値は私がかつて勉強をしていた日本経済研究センターが調査していて、以下のサイトで見ることができます。http://www.jcer.or.jp/esp/

 2.    物価上昇率、11月は前年比0.7

日銀の目標は+2%で、それが達成できればデフレは克服され好景気になり、みんな幸せになれるはずと日銀は言っています。そしてクロちゃんは「デフレは克服されつつある」と言い続けていますが、実は年初のプラス1.3%以来月を追うごとに上昇率は低下し続け11月のコア指数前年比はプラス0.7%となっています。目標の2%にはほど遠いいのが実態です。物価が上昇すればみんな幸せと言うのは、それ以上に収入が伸びている時だけの話で、現実は収入が増えない中での物価上昇のため、大企業の社員以外の国民はどんどん窮乏化しています。今年予定されている食料品の値上がりがとても心配です。

 3.    株価は1年で7%上昇

日経平均株価は13年末の16,291円から17,450円へ7.1%上昇しました。円安傾向が後押ししています。しかし取引の大半を占める海外投資家の動向を見ると、懸念される動きになっています。おととし13年1年間の海外投資家の買い越し額は15兆円で、それが株価を5割以上押し上げました。それが昨年1年の買い越し額はわずか8千億円と大幅に減少しています。海外投資家はドル建てで株価を評価しているので、ドルベースで株価を見ると実は日経平均は年間を通してマイナス6%でした。これが海外投資家の行動に出ているのです。

 4.    為替レートはドルに対して1年でマイナス13.7

13年末のレート105.36が14年末には119.79となり、14%もの円安です。政府・日銀・財界は喜んでいますが、自分の資産が国際標準のドルベースで見ると14%も目減りしています。おかげで前項の日経平均も円ベースで7%上昇しても、ドルベースではマイナス6%なのです。

   まとめますと、経済成長率がマイナスで物価も思惑通り上昇していないのに、政府・日銀はこの結果でも「経済は回復基調にある」という大本営発表を繰り返しています。その中で昨年11月には残り2%の消費増税を見送りました。増税を見送ったということは、経済運営がうまくいっていない何よりの証拠です。しかしアベチャンは「この道しかない」という強弁をつづけています。2年やってダメなものは今後続けてもダメです。

   増税見送りの当然の結果として格付け会社が日本国債をダウングレードし、国債をしこたま抱えるメガバンクも一蓮托生でダウングレードされています。こうした格下げは今後も続く可能性が高いと思います。

つづく

コメント (4)
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