ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

戦後70年、第2の敗戦に向かう日本  その1

2015年01月07日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

今年最初のシリーズ記事です。

  私はかねてより日本の財政が2015年プラス・マイナス2年程度の範囲で破綻の危機に瀕する可能性ありと言ってきました。

そのシナリオは以下の通りで、かなり単純化してお示しします。

・円安シナリオ  

経常赤字⇒円安昂進⇒インフレ⇒外貨資産への逃避⇒さらなる円安⇒ハイパーインフレ⇒国債価格暴落

 ・政府債務の家計資産超過シナリオ

貯蓄率低下+高齢者増加で家計の金融資産減少⇒国債ファイナンス不能⇒日銀の国債大量買入れ⇒ハイパーインフレ

 2015年プラスマイナス2年程度でいずれかのシナリオが先行するか、あるいは両方の同時進行により財政が破綻に瀕する。しかし国債は絶対にデフォルトはさせられないので、日銀が引受ることでハイパーインフレが発生する、というものです。

   では2つのシナリオの進行状況がどこまで行っているかを見てみます。2つのシナリオ上でハイライトされているところが、これまでにすでに進行しているところです。上のシナリオでは円安昂進まで。下のシナリオでは「日銀の国債大量買入れ」が飛び越してしまいました。

  2015年マイナス2年間はすでに無事に過ぎています。いよいよ予想の中心の15年になりましたので、今一度現状を冷静に見つめ直してみましょう。

   今回のシリーズのタイトルには「第2の敗戦に向かう」という枕詞が付いています。これについての私のおよその歴史認識を最初に示しておきます。

   戦後の焼け野原からの復興はゼロからの出発でした。苦しい中からでしたが、人々の勤勉さ、アメリカなどの援助、そして人口の爆発的増加に助けられて復興は順調に進み、高度成長の波に乗ることができました。2度のオイルショックすら世界のどの国よりも早く克服し、そのたびにピンチをチャンスに変えて競争力を増すという底力を示しました。

  ところが人間というのはよくしたものでそうした成功が慢心につながり、80年代の後半には未曾有のバブルを生みだし、それが見事に破裂。その時に人口ピラミッドをしっかり見ていれば今後どうなるかおよその見当はついたはずでした。しかしそれをせず、その後はなんとか元に戻そうと財政出動を繰り返す愚を犯したため、日本経済は25年に及ぶ停滞を経験することになったのです。それをデフレのせいにする、それは違うでしょう。政府の巨額な債務超過状態を見れば、人々が身構えるのは当たり前です。

   厳しいことを言うようですが、バブル崩壊のあと財政出動による糊塗策を繰り返さず焼け野原にしてしまえば、きっと全治5年程度で済んだのではないかと私は思っています。そしてそれが第2の敗戦になり、団塊の世代が40歳代前半で元気なうちに立ち直せる可能性はあったのです。焼け野原といっても戦後の本当の焼け野原ではなく、証券・銀行の大手がいくつかつぶれゾンビ企業が淘汰され、かなりの失業者が出るというレベルです。

  苦しみはとても大きかったと思いますが、バブルに踊ったのですからそのつけは当然主役で踊った世代が払うべきなのです。バブルの主役は当時50歳代から60歳代の戦中世代でした。私の属する団塊の世代も30歳代後半から40歳代でバブルの恩恵に浴した世代です。べき論から言えばつけの一端は払うべきです。

   焼け野原にせずにいたため、戦中世代はすでにたんまりと年金をもらって逃げ切りました。逃げ切った世代の中にはそうした愚かな政策を実行した政治家も含まれます。もちろんその世代の方々は戦後の塗炭の苦しみを経験されているのですから、ある程度の報酬はあってしかるできでしょう。しかしあのバブルは明らかにやり過ぎです。我々団塊の世代も多くの人が正社員ステータスをまっとうし、ぬくぬくと無事リタイアすることができ、65歳を過ぎて逃げ切り態勢に入っています。

   果たして団塊の世代がいつまで逃げることができるのか、決して長くはないと思います。それを見通し、対処案を考えるのが今回のシリーズの目的です。団塊の世代以降の残された人たちは非正規雇用を甘受させられ、自分達が言われのないつけを払わされることがわかっているため、かなりやる気を削がれているように思えます。その人達にも対処案は示しておくべきでしょう。

   ずいぶんと大上段に構えた感じはしますが、私は自分の生きてきた時代にこの様な歴史観を持っています。説教じみてしまいますが、少なくとも自分の生きた時代の歴史観を自分なりに持つことをみなさんもしてみてください。自分なりの歴史観を持つと持たないとでは、ものを考える時の深さが大きく違ってきて、将来の生き方も変わってくると思います。

   では、次回は日本経済の現状把握をするところからスタートします。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする