昨日のコメント欄でバードさんから、政府でさかんに議論されているプライマリーバランスに関して下記の疑問と質問をいただきました。みなさんも感じていらっしゃるもっともな疑問だとおもいますので、それに関して解説させていただきます。
まず質問です。
>「プライマリーバランス」の黒字化についてですが、
(総収入-新規発行国債)-(総支出-(国債費=元利の返済分))
とありますが、支出から国債の利息分を引くのは個人的には間違っていると思います。元本部分の借り換えは理解できますが、利息分は単純な費用ではないでしょうか?
原理原則が間違った上で、黒字化を宣言しても国債の利率が上昇した場合、意味をなさない気がします。
バードさんのご意見、ごもっともです。日本の場合はナンセンスです。しかし原理的には間違っているとまでは言えません。理由を説明します。
上のとても難しい式を言いなおすと、「ほとんどが金利である国債費を除いてあとの収支がバランスした状態がプライマリーバランスが取れた状態」ということです。プライマリーバランスがとれていれば財政の最大の目標は達成できたとなるというのがこの議論のポイントです。
例えば日本の借金レベルは今GDPの220%くらいですが、それがEUの加盟条件であるGDPの60%だとしますと、国債費も今の約4分の1になります。このプライマリーバランス議論は、そうした普通の国を想定しています。
普通の国では「プライマリーバランスが取れているということは、金利だけ返済していければ、元本はたぶん借換えしていけるからいいのだ」となります。投資家も借換えに応じるだろうということです。
何故なら金利が上昇しても、その時は景気も上昇しているので、収入が増えるからいいというのがプライマリーバランス議論です。そして普通の国の成長とは物価上昇下での成長なので名目GDPも成長し、税率が同じなら名目成長分の増収があるのです。消費税を考えるとわかると思います。
日本はどうか。2つの理由で普通の国ではないので、プライマリーバランスなどナンセンスです。
理由1.まずデフレ下では実質でいくら成長しても名目ではマイナス成長なので、金利上昇分を賄える収入増はない。それどころか収入は税率が同じだとデフレ下ではどんどん減少します。デフレを克服しなければならない最大の理由です。
理由2.日本の場合は国の収入の半分近くが国債費で消えています。理由は借金がGDPの220%にもなっているからです。それを減らさない限り金利上昇には耐えられません。EU基準の60%なら対処可能なのです。そして非常に単純化してシミュレーションすると国債の平均支払い金利が3%になって7年も経てば金利支払額が2倍になり、国のすべての収入は金利支払いだけで消えるからです。
この2つの理由によりプライマリーバランス議論が日本の場合は全くナンセンスだとなります。2020年でバランスを達成してもバラ色の世界など絶対に来ません。
これでご理解いただけましたでしょうか。日本の政治家や識者もこれくらいのことは理解した上で議論をしてほしいですね。でないとたかが「ストレスフリーの資産運用」ブログでナンセンス呼ばわりされ続けます(笑)。