赤いハンカチ

夏草やつわものどもが夢のあと

▼良書紹介<佐藤優(まさる)現象>

2016年06月10日 | ■日常的なあまりに日常的な弁証法

 

 

昨日のこと、最寄の駅前にある新刊書店をのぞいてみたのです。驚きました。わたしは滅多に参考書や雑誌や漫画のコーナーの棚のまえには立ちません。いつものように新書や文庫の新刊を紹介するコーナーに足を踏み入れたところ、あちらもこちらも佐藤優さんの本だらけで驚きました。それは当書店ばかりではなく、全国に及んでいるようで、昨日またもや佐藤本を購入してしまった中の一冊、「異端の人間学」は五木寛之さんとの対談集なのですが、そのあとがきに五木さんは、次のように書いていました。

いま、佐藤現象とでも呼べそうな空気が、この列島をおおっているようだ。夜に日をついで猛烈な勢いで原稿を書き、論をくりひろげる。書店の棚は佐藤さんの著作であふれ返っている。

佐藤優という作家にとって、この現象が後のち、可とでるか不可とでるかは知らぬ存ぜぬところですが、わたしが、まさに佐藤さんをして「異相の人」だと確信したのは、二冊の自伝的作品の読後感からでした。「先生と私」(幻灯社文庫)は高校受験までの主として学習塾で出会った忘れがたい先生たちとの交流の物語。少年のころから、佐藤さんの場合は、すでに精神的交流が始まっていたのです。「私とマルクス」(文春文庫)は同志社大学神学部入学から卒業までのこと。神学部に進学したというあたりから、その後の佐藤さんの独特な、そして目覚しい知性の独壇場となっていきます。佐藤さんは1960年生まれ。わたしからは一世代若い人なのです。それにしても、感嘆せざるを得なかったのは、このようにして学び闘ってきた人が、この日本の中にもいたのかと、同じ日本人として、それこそため息をつく思いで二冊の自伝を読み終えました。

 

 

 

 

 

 

 

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