世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

中国の中で最も多くの国の租界があった天津は上海よりもさらに西欧の香りが残っているように感じます(中国)

2020-06-14 08:00:00 | 世界の町並み
 北アフリカにありながらヨーロッパの香りがする都市がチュニジアの首都のチュニスでした。これは、元の宗主国のフランスの影響のようで、街中でも英語よりフランス語の方が伝わるようです。アフリカに限らず、アジア諸国には植民地や租界の宗主国の影響を受けてアジアの街並みとは思えない場所が多いものです。今回は、19世紀の末に中国の中で最も多い9か国の租界が存在した天津の中心部を紹介します。



 
 天津は北京の東南100kmほど、海河が渤海湾にそそぐ湾の一番奥の港町です。海河は天津市内で5つの川が合流したもので、全長は73kmほど天津市内を北西から南東に流れています。天津駅近くの船着場からは、観光クルーズ船が出ていて、筆者は夜に乗りましたが、きれいな夜景を楽しむことができました。中央駅の天津駅から北京南駅までは、300km/hで疾走する高速列車で30分で到着します。筆者が訪問した時はE2系をベースとしたライセンス生産の和敬号が走っていましたが、その後は中国の独自技術と称する日本やドイツの技術のコピー列車が走っているようです。

 天津租界は、1860年の北京条約締結に基づくもので、9か国が覇権を競っただけでなく、中国官憲の権力が及ばないことから、旧清朝の王族なども集まり独特の租界文化を型作りました。戦後の新中国の政権は上海などを重要視し、天津は取り残された形で、その結果旧租界の建物などの景観が冷凍保存されたようです。旧租界地区は、天津駅を頂点にして南に広がり、フランスやイギリス租界の跡は、まるでヨーロッパの街並みを歩いているような景色が広がっています。

 
 
 筆者が訪れた、旧居留地の駅周辺、解放北路、五大道と中国人の暮らしていた天津城の周辺を紹介してゆきます。海河のクルーズ船の乗り場近くの広場には世紀鐘と呼ばれる巨大な時計が置かれていて、夜にも昼にも存在感があります。この広場から海河を渡るのが解放橋で、もとは跳ね橋だったそうですが、現在の橋からはその形跡は見られません。このあたりの川沿いは、古い建物や近代的な高層建築などが入り混じって、面白い景色が広がっています。

 
 
 
 
 解放橋を渡って、川沿いに下流、東に行くと解放北路に至りますが、この道筋は旧居留地の古い建物のラッシュです。建てられてから150年ほどはたっていようかと思いますが、まだまだ軍港の建物など現役で使われているようです。その中でも天津利順徳飯店(アスターホテル)は、孫文や袁世凱も止まった由緒あるホテルで、建物を追加新築していますが、旧館も現役の五つ星ホテルです。

 
 
 
 
 
 解放北路の南西にあるのが五大道で、中国南西部の都市名を付けた通りが5本あることに由来した地名です。こちらは、ビルに交じって高級住宅街の景色が広がり、公園には子供の群像のブロンズも置かれています。町並みを一周する観光用の乗合馬車も走っていて、有名人の邸宅の説明もあったんだと思いますが、周りの景色を楽しむのみでした。

 
 
 天津城地区は、租界地区の西北にあって、こちらは町の景色がヨーロッパから中国に一変します。中央にあるのが鼓楼で、上に上ると周辺の町の様子がよくわかります。通りの先には、横浜や神戸で見かける城門のようなものも見えます。ただ、鼓楼というと楼閣の上には太鼓があるはずなんですが、大きな鐘があって、これだと鐘楼ではないのかなって感じです。天津城地区から駅に戻るため東に行くと古文化街があり、こちらも中国の香りの町並みです。古文化街の中央あたりには天后宮があり、祭神は中国の沿海部で祭られている媽祖(まそ)で海の安全を祈るものです。このあたりの街並みはアモイやマカオの古民家街で見られる景色に似ているようです。

 
 
 天津というと天津飯を思い浮かべる方も多いと思いますが、この料理は日本が発祥で、中華料理にはご飯に蟹玉を乗せたものは無かったそうです。中華料理と日本の丼文化とを融合させた傑作かもしれません。天津に行っても天津飯は日系のスナックなどで出されるくらいでしたが、元来の中華料理店にも類似の料理が広まりつつあるのだそうです。和製英語でも、便利な使い方から、本来の英語圏でも使わあれるようになったものがあるようです。ナイターやケースバイケースがその例で、本来はIt depends onやNightgameですが和製英語の方が使い易い面があるとのこと。Laptop computerのノートパソコンやOutletのコンセントなどは、日本のIT輸出がいくら盛んになっても本来の英語にはなりそうにありませんが。