世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

イスラム教とキリスト教、それにキリスト教の時代を異にする建築様式が混在する不思議な街コルドバ(スペイン)

2019-11-03 08:00:00 | 世界遺産
 ユーゴ紛争でキリスト教とイスラム教の対立から、それまで宗教の異なる人々の間をつないできた橋が破壊されたのがボスニア。ヘルツエゴビナのモスタルにあるスタtリ・モストでした。ヨーロッパの大部分はキリスト教系の宗教が大勢を占めていますが、イベリア半島では南から攻めてきたイスラム勢力に支配されていた期間がありました。スペインの各地には、イスラム文化の名残を残す町が多くありますが、今回はそれらの一つコルドバを紹介します。ただ、筆者が訪問したのは、30年近くも前で、写真はアナログのものをスキャナで取り込んだものです。

 コルドバは、スペインの中南部に位置する人口33万人ほどの都市です。現在は首都のマドリッドからAVEに乗れば100分ほどで到着しますが、筆者はパッケージツアーだったためか、セビーリャからのカシキリバスでした。コルドバは、7世紀頃まではイベリア半島を支配した西ゴート王国の一部でしたが711年にイスラム勢力に征服され756年に成立の後ウマイヤ朝の首都となりました。その時の中心が現在のメスキータ(モスク)で、1236年にキリスト勢力が領土を奪い返すレコンキスタにより、メスキータはキリスト教会部分が付け加えられました。

 
 
 
 
 
 このイスラム教とキリスト教が並立した不思議な宗教施設のメスキータは、周りを10mほどの塀で囲まれた135m×175mの長方形の施設です。航空写真で見ると、北西側の中庭と中央に建つカトリック教会を除くと、まるで昔の工場ののこぎり屋根が連続しているような感じに見えます。中央部の教会も、ゴシック様式とルネサンス様式の折衷で、とにかくいろいろな様式がごった煮されたような空間です。上から見た写真で広い面積を占めるのこぎり屋根の下には、白とオレンジの独特のストライプのあるアーチがどこまでも連なる巨大な空間になっています。このアーチの一角に、イスラム教の聖地のメッカの方角を示すミフラーブものこされています。とにかく、どの部分がイスラム文化で、どこからがキリスト文化なのか混乱してしまいます。北西にある中庭(パティオ)はオレンジの木の庭と呼ばれ、礼拝者が沐浴をする清めの空間で、庭の端には塔が立っています。

 
 
 
 メスキータのそばにはユダヤ人街があり、こちらも世界遺産「コルドバ歴史地区」の構成要素になっています。細くて小さな道の両側は花がたくさん飾られて「花の小道」と呼ばれています。一方、メスキータのそばを流れるグアダルキビル川に架かるのがローマ橋で、かつては南側からコルドバに入る唯一の端で、この橋を守るための要塞として、メスキータの対岸にカラオーラの塔が作られました。

 現在広く使われている数字の記法はアラビア数字と呼ばれています。それまでヨーロッパで使われていたローマ数字に代わって、イスラム文化圏から伝えられた"0"の概念を持つ記法です。ただし、伝えたのはイスラム圏を往来するアラビア商人で、アラビア数字を発明したのは0の概念を発見したインド人といわれています。コンピュータの根幹をなす0の概念ですが、現在でもコンピュータ分野ではインド出身者の活躍が目立つようです。