世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

白を基調とした東京女子大の建物群は、高い尖塔が遠くから望め大学の存在を主張しているようです

2018-08-05 08:00:00 | 日本の町並み
 ジョサイヤ・コンドル設計の旧島津邸を本館に使うのが清泉女子大学でした。さすがに、侯爵がコンドルに設計を依頼して建てた建物はだけに至る所に美しい意匠がちりばめられていました。ミッション系の大学には、美しい学舎を持つところが多く、特に女子大にその傾向があるように思います。最近はセキュリティが厳しくなり、なかなか学内に入門ができないのですが、講演会やオープンキャンパスの機会に見学もできるようです。今回は、チャペル・コンサートの機会に学舎を見学した東京女子大の建物群を紹介します。

 東京女子大は、JR中央線の西荻窪から北西に15分くらい歩いたところにあります。400m四方の南西側を斜めに切り取ったような敷地に、レーモンドが設計した7棟の登録文化財を含む数多くの建物が建っています。これらの建物は大正末期から昭和初期にかけて建てられ、最も新しいチャペルが昭和13年です。全体的に白を基調とした建物群は、清楚な女子大生をイメージします。設計者のレーモンドはチェコ出身で、フランク・ロイド・ライトの弟子、旧帝国ホテル建築の際に来日して日本で活躍しました。聖心女子大や聖路加病院、国際基督教大などの作品を残しています。第二次大戦中は、アメリカに日本の木造建築の模型を造り、焼夷弾による攻撃に加担したことで知られています。「日本を早く降伏させるためだ」と言っていたそうですが、多くの非戦闘員に無差別攻撃をして焼き殺した国際法違反行為への加担は許せません。



 
 正門を入ると緑の芝生が広がるVERA広場で、中央の小さな池には水連が植えられていました。その向こうに長く図書館として使われt来た本館があります。上部にはQUAECUNQUE SUNT VERA の標語が、入り口の上部には東京女子大學、創立千九百十八年の文字が右から左に書かれています。入口両脇の門灯や、窓のグリルにあしらわれた木の枝状の意匠が素敵です。この木の意匠は、入り口のガラスドアにも付けられています。

 
 
 正門のすぐ右奥がチャペルと講堂で、城の尖塔が遠くからも望め、大学というより、ここに教会があるよ、と主張しているようです。チャペルは壁面全体が細かい格子状のリムでおおわれていて、そこにステンドグラスがはめ込まれています。外から見ると繊細な感じで、中から見ると豪華に見えます。内部には1991年に鍵盤3段とペダルを備え35のストップを持つ本格的なパイプオルガンが設置されています。チャペルの内部空間が若干狭いので残響時間は短めですが、演奏を聞くと感動します。

 
 広場の左右には、西校舎、東校舎があり、どちらも現役の教室として使われています。西校舎は創建当時に建てられたもので、東校舎も昭和初期に建てられ、映画のロケにも使われたそうです。

 
 本館の裏側には、3棟の登録文化財の建物が建っいます。外国人教師館、安井記念館そしてライシャワー館です。これらの建物も創立当初や初期のもので、建てられた当時は住居として使われたようです。外国人教師館は創建当時に派遣された外国人教の宿舎として建てられ、現在は女性学研究所として使わています。安井記念館は第2代学長の住居として建てられ、現在はキリスト教センターとして使われています。ライシャワー館は創建当時から常務理事を務めたライシャワー一家の住居として建てられ、現在は留学生の交流の場として使われています。ライシャワーさんと聞くと、あの駐日大使のライシャワーさんとどのような関係かと思って調べたら、駐日大使は常務理事の次男だったのだそうです。駐日大使の結婚披露パーティは東女で催されたとか。これら3棟の建物も、緑の木立の中に溶け込むように建っていて、学内ということを忘れさせます。

 パイプオルガンは楽器の女王と言われます。音のバラエティの豊かさは言うまでもなく、建物と融合され、数多くのパイプが並ぶ姿は優雅で絵になります。これだけ巨大な楽器ですが、大部分のパイプオルガンは、機械的な人力で、発音機構を動かしています。ただ、昔と違うのは、パイプに送り込む圧縮空気を送り込むのが人力のふいごから、電気モータに代わったくらいでしょうか。パイプオルガンに似せたエレクトーンとは真逆の構造ですが、アナログ構造で音を出すため、鍵盤などを操作する指の動きで微妙な音色の差を作り出せるのだそうです。エレクトーンでは、鍵盤にいろいろなセンサーを付けて、指の動きを検出しようと思えば可能でしょうが、どうもスマートではないように思います。パイプオルガンでも、キーボードの部分を引き出して、電気信号で制御できるものが作られるようになり、演奏場所をステージ上に移動できるメリットがあるようです。ただ、エレクトーンと同じように繊細な演奏には難があるそうです。