世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

朱色の祐徳稲荷の最寄り駅のそばには茶色の肥前浜宿の町並みが続いています

2017-04-23 08:00:00 | 日本の町並み
 前回は東京国立博物館の表慶館を設計した片山東熊の設計した仁風閣のある鳥取を紹介しました。鳥取は三大砂丘で有名ですが、今回は三大稲荷です。これも諸説あって、伏見稲荷は外せないものの、それぞれの稲荷神社が、ご自分を入れた三大を主張されています。これらの中で、伏見稲荷から最も遠い稲荷神社と思われるのが佐賀県の祐徳稲荷です。今回は、この祐徳稲荷と、その最寄り駅に近い肥前浜宿も町並みとを合わせて紹介します。

 
 
 祐徳稲荷は、佐賀県の西よりの鹿島市にあり、JR長崎本線の肥前浜駅から南に2kmほどの所にあります。伏見稲荷は千本鳥居が壮観ですが、祐徳稲荷は、山の斜面に清水の舞台に似た懸崖作りが見事です。清水の舞台が、木肌の茶色の世界ですが、こちらは鮮やかな朱塗りの社殿が緑に映えます。当然社殿を支える柱も朱で塗られていて、これが壮観です。社殿の右側には、社殿まで登るのが辛い人のため、以前に訪問の時には無かった有料のエレベータがあります。以前に訪問の時と違った現象は、中国人の多さでした。案内所の方によると8割ほどが中国からで、その理由は佐賀空港に上海からのLCCが到着するからのようです。

 
 この祐徳稲荷の最寄り駅になる肥前浜駅の南側には、長崎街道の脇街道の宿場町の遺構である浜宿があります。宿場町としてだけでなく、佐賀平野の米と良質の水を原料とした酒造りの町として、街並みの中には造り酒屋が数多く残っています。こちらの町並みには、さすがの中国人も出没はせず、祐徳稲荷の朱色の世界ではなく、茶色の世界です。
 
 
 
 
 旧長崎街道沿いの古い町並みは、長崎本線の南西200mほど、ほぼ線路と平行に通っています。白壁の土蔵造りが連なる景色は壮観にも見えます。これらの町並みの中心は、造り酒屋の酒蔵と商店、それにオーナーの自宅です。その中の一軒では、酒蔵の見学もできます。宿場としての遺構は少なく、よく見かける本陣跡などはありません。継場という人馬の継立業務を行っていた建物ぐらいでしょうか。

 
 
 庇の上に鬼瓦がずらりと並んでいる工務店や、格子の前の水路など、酒蔵以外のも点景も数多くです。そして、モノクロームと茶色の世界の中に、下見板張りのオリーブグリーンのパステルカラーの建物が1件あり、新鮮な印象です。林業再生事業の看板が掲げられていましたが、もとは郵便局の建物だそうです。

  
 これらの町並みから離れて、駅のすぐそばに建つのが漬蔵で、百年以上の歴史のある漬物屋さんだそうです。こちらは土蔵造りではなく、板壁の古風な建物です。

 お酒づくりの世界では、急速にIT技術の導入が進んでいるそうです。発酵過程で、味を左右する環境は、すべて数値化され、この値になるように、コンピュータによって発酵タンクの自動制御を行うそうです。また、味を左右する酵母も、純粋培養が進み、酵母の製品名で購入して、再現性の高い酒を作られるようです。万が一、天災や火事などで酒蔵が失われても、元の酒の味を簡単に再現可能だとか。もはや、酒は農産物ではなく、工業製品の様相です。ただ、すべてのファクタが数値化できるとは思えないし、酵母も純粋といっても、微量な不純物が紛れて、味を左右するのではないかとも思ってしまいます。ただ、この微妙な差を、飲む人間が判別できるかは疑問ですが。