世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

葡萄やワイナリーの他に、廃線のトンネルやお寺に古い町並み、おまけに温泉もある勝沼です

2009-11-15 08:00:00 | 日本の町並み
 西の灘と呼ばれた明石の西にある江井ヶ島酒造は、日本酒だけではなくウィスキーやワインまでも醸造する、総合酒造メーカーでしたが、日本のワインのふるさとといえば、勝沼を外すことはできないでしょう。今回は、ワインやぶどうだけではない勝沼の顔を紹介します。

 勝沼は山梨県のほぼ中央にあり、現在は塩山市などと合併して甲州市の一部となっています。江戸時代から葡萄の栽培が行われていたようで、現在ではその葡萄を原料とした数多くのワイナリーがあります。ただ江井島酒造のワイナリーは、もっと西の北杜市にあるようです。甲府方面の中央線に乗り大月を過ぎると、大きく北に曲がって笹子トンネルと新大日影トンネルを抜けたところにある駅がその名も勝沼ぶどう郷駅です。ちなみに、旧大日影トンネルは、中央線の複線化のときに廃線となり、産業遺産として保存され、遊歩道として通り抜けられるようになっています。また、トンネルの一部はワインカーブとしても使われているようです。駅は勝沼の町並み見下ろす高台にあって、遠くには南アルプス、手前にある丘は葡萄の丘です。頂上には「天空の湯」という天然温泉があって、露天風呂からは目に下に葡萄や桃の畑が見晴らせます。

特に春の桃の花の頃は、雪を頂くアルプスを背景にしたピンク色の広がりは、まさしく桃源郷の気分です。

 勝沼の地名は、武田氏の親戚にあたる勝沼氏の領地であったことに由来しており、中央高速の勝沼ICの北には館跡があります。このあたりは駅のあるところからは随分と下った白川沿いに回廊状になったところです。少し上流に行くと、平安時代に作られたという大善寺があります。13世紀に建造された国宝薬師堂の桧皮葺の大きくのびやかな屋根は見ごたえがあります。

大善寺は、武田勝頼が織田、徳川連合軍との戦いに戦勝祈願をしたお寺で、その後味方の離反で天目山で自決をしましたが、この顛末を記録した武田滅亡記もこの寺に保存されているようです。

 大善寺とは逆に、川下に勝沼小学校のあたりまで行くと、通りに沿って土蔵造りの家や、格子の美しい家が残されています。
 
3階建ての土蔵は壁の表面の漆喰が剥落して土壁が露出していましたが、かえって滅びの美学があるようです。これらの町並みの中に旧田中銀行の建物が残されています。明治時代に勝沼郵便電信局舎として建てられ、大正期に田中銀行の社屋として改修されたものです。

表から見る建物は、銀行というより、昔の役場の雰囲気を感じるのは、役所の一種であった郵便局として建てられた建物だったからでしょうか。

 勝沼というとワイナリーを紹介しないといけないのかもしれませんが、ワイナリー以外にも魅力の多い所です。ブドウ畑の畦のそばに、石版に彫られた六地蔵があったりするのも心がなごみます。

葡萄や桃などの果物狩り、それにワイナリーめぐりのついでに、ちょっと散歩に寄り道してもよい町並みが残っている勝沼です。

 ワインといえば、長く熟成するものという常識を逆手に取ったものがボジョレ・ヌーボです。その年にできた若いワインを11月の第三木曜に販売を解禁するものです。日本は時差の影響で、先進国の中では最も早くに解禁される国の一つで、バブルの頃にはブームになり、若いワインとは思えない価格で販売されたときもあったようです。一方、ITの分野では、通常は半導体中の不純物を極限まで少なくした材料を使うのが常識でしたが、逆に不純物を増やすことでできたのが江崎玲於奈博士の発明したエサキ・ダイオードです。常識に反した行動を取るのは難しいことですが、その先に新しい発見やビジネスチャンスがあることも時としてはあるのですね。