くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「向田邦子と昭和の東京」川本三郎

2010-06-25 02:06:11 | 書評・ブックガイド
さあ、今日から向田邦子だ! と思って、取っておいた「向田邦子と昭和の東京」(新潮新書)を読みました。
川本三郎さんが、向田作品を俎上に載せて、昭和の家族をテーマに語ってくれます。
わたしも向田さんのエッセイが大好きで、五年おきくらいに読み返します。きっかけは、授業で「ごはん」とか「字のないはがき」とかを取り上げる際についほかのものも、と思って読んでしまうんですよね。
だから、紹介される出来事のほとんどはお馴染みです。「向田邦子の手料理」(講談社)も持ってます。「触れもせず」も妹の和子さんが書かれたエッセイも読みました。
それらを統合して、また新しい顔を見せてくれる。川本さんの本読みとしての眼力に恐れ入りました。
とくに、ここ。
「向田邦子は決して、食を食だけでは語らない。(略)向田邦子が食を語るときは、いつもそのうしろに、家族の記憶がある」
目から鱗、です。
「ごはん」を読んだらなるほどなるほど、川本さんのおっしゃることが、実感としてつかめてきたのです。
そこで、この作品のあらすじを学習したあと、向田家の家族構成を確認してから「字のないはがき」を読んで、誰か一人を取り上げてその人について思ったことを書かせてみました。
当然のようにほとんどの子はお父さんを選び、厳しい中に優しさがあるということを書いてきます。でも、下の妹について書く子や、「僕は女性に手をあげるなんて許せません」という子もいる。
ところで、かつて向田家が仙台に住んでいたことを知り、わたくし躍起になって探したことがあります。「琵琶首」という地名を何かで読んだので、いろいろな人に聞いたのですが、どこにもそれらしき場所がない。区画整備で消えてしまったようですね。
結論としてわかったことは、「評定河原」あたりなのではないかということと、一カ所だけアパートに「琵琶首」という名前が残っていたことです。
それにしても、この本の章扉に使われている向田さんの写真、どれもいいのです。美しい。
ここは「メルヘン誕生」も読み返すべきかと本棚を探ったのですが、どうも深くしまいこんでしまったようですね。高島先生、すみません。