くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ソフトボーイ」関口尚

2010-06-22 20:06:48 | 文芸・エンターテイメント
ラストの「三年後」は、蛇足でしょう。こういうパターンのストーリー多くなったけど、高校時代で止める方がいいと思う。彼らが様々なことに迷って、ソフトボールをやり遂げる、というすじだての方が。
というより、関口尚だったらもっと深い物語が紡げるのではないかと思うのですが。単なるノベライズになっていてがっかりです。ポプラ社的にはこれがいいのでしょうか。関口尚を起用した時点で、映画を超えた「小説」であろうとしたのだと勝手に期待したわたしが間違っているのですか。
たしかに、公開中の映画ですから、いろいろと制約はあると思います。関口さんらしい文章ときらめきは、やっぱりいいんです。でも。
野口、余りにも、薄い。
わたしにはその場しのぎのお調子者としか思えませんでした。
男子ソフトボール部は、佐賀県にはまだないから、創部イコール全国大会。これで俺たちヒーローだ! はまだいいんですが、実は公平を期して大分代表との出場決定戦がある。これを知らされて部員からブーイングがおこると、しれっとして知っていたというあたり。口から出まかせで、その場を取り繕う態度見え見えです。こういうところが、あちらこちらに散見していてげんなりしてしまう。
もっと彼の内面を、「エピソード」で描いてほしかった。鬼塚の一人称である以上、彼の目を通して魅力的な部分をもっといれてもらわないと。ただ言葉で野口を称賛されても、こちらにそれが伝わってこない。
例えば、小学生のころ父親を事故で亡くして心を閉ざしていた鬼塚に、野口だけが声をかけてきます。それはそれでいいエピソードなのかもしれません。でも、そこで空港まで自転車でいこうともちかけて、自分は何もせず鬼塚に計画や連絡をまかせる。で、結局行程の半ばでリタイア。
これ、どうなのでしょう……。
こういう人が、「三年後」にそういうポジションにつけるとはとても思えません。フランス料理で世界的に有名なシェフの片腕……。リアリティがない。
だいたい、試合をひとつもしないで全国大会なんてありえないでしょう。自校に女子ソフトあるんだから、実戦の相手くらいしてもらいなさいよ。
おそらく映画の脚本がそうなっているからなのでしょうが、現実的に考えてあまり真剣に考えていないのではないかと疑ってしまいます。帯には「ゆるゆるなのに、感動!?の青春男子ソフトボール物語!」とあるけど、こんなにお手頃で感動させようとするなんて、真剣に部活をやっている子たちに失礼だと思う。

「ソフトボーイ」です。結構期待して買ったのですが。
というのも、男子ソフトボール部のある学校にいたことがあるのです。県内に三校しかなくて、たしかに東北大会は近かった。
新任で顧問を任された同僚、高校のソフトボール部に練習試合を頼もうとして、
「女子ソフト部顧問の先生、お願いします」と電話をしているのもよく見ました。一度、間違えて男子高にかけてしまい、即切りされていましたが。
この物語の下敷きは、実際にあったことなのだそうですが、映像で見るとまた違う印象なのでしょうか。先日、「クール・ランニング」を見ましたが、こちらは素直におもしろかったから。
やっぱり核になる部分があっても、物語は演出だと思うのです。もっと踏み込んだ方がいい。
あと、八嶋さんって、どうなの? 「最低」が口癖の女の子、わたしは勘弁してほしいのですが。