くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「クリック」佐藤雅彦

2010-06-03 21:49:47 | 総記・図書館学
「ポリンキーポリンキー 三角形の秘密はね ポリンキーポリンキー おいしさの秘密はね
おしえてあげないよ。」
佐藤雅彦 超・短編集「クリック」(講談社)。わはは、懐かしくもおかしいネタが満載です。
「だんご三兄弟」に関わるものもありますよ。歌とは大分違います。潔く食べられる長男次男、串に刺さる順番などがネタになっている。
発想の転換のようなものがおもしろいですね。例えば、「ミニ力士」小さな手形が紙の中央におされています。あとは、箱の絵があって、「左の立方体の図に 一本だけ直線をつけ加えて 上のフタの部分をはずしてください」というもの。答えを見たら、目から鱗でした。
「事実」もいいですね。「ポテトチップスの湖池屋の お正月のおそなえには、 みかんの代わりに じゃがいもがのせられている。」
じゃがいもつながりでもう一つ。「しゃかいも→ざづもいも 濁点の貸し借りを禁止します。」
佐藤さんのものの考え方は、言われてみれば誰もが納得するのに、なかなかその現象を発見するのは難しいようなもののような気がします。ひとつのものを、あらゆる角度から見る。たまには内外をひっくり返しても見る。
そして、目に映るものを蔑ろにしない。他の人が見過ごすようなものでも、よく気がつくのです。
「席がえ」というシリーズもおかしい。小文字のアルファベットが整然と並ぶ1ページめ、次のページでは並ぶ順番がまぜこぜになっています。そうそう、座席表を記号化するとこうなるよねーと思っていると、今度のページは「父兄参観日」。アルファベット大文字が後ろの方に並びます。
このところずっと忙しい日々が続いていて、ゆっくり本を読む暇が少なくなってしまいました。こういうちょっとひねってある笑いって、なんだかホッとしますね。
「分離」は、「吾輩は猫である」をひらがな部分と漢字部分に分けただけのことなのですが、妙におかしい。「  は である。 はまだ い。」「吾輩 猫 名前  無 」
ふりがなも、ひらがなのいちいんです。漱石といえば、ルビに特徴がありますよね。「のみならず」の部分、「加之顔」と書いてあって、奇異な感じがしました。「のみならず顔の」ということなんですが、漢字の並びって、熟語でないものがくっついているところを、それだけ取り出されることはないので、一瞬混乱するのです。
日常のふとした一場面。冷蔵庫のマヨネーズのように逆立ちしたら見えてくるでしょうか。