くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「小暮写眞館」宮部みゆき その1

2010-06-13 06:14:00 | ミステリ・サスペンス・ホラー
ここは正直に言いましょう。新刊を書店で発見したとき、まあ、今回も図書館の順番待ちでいいだろうと思ったのです。いかに宮部みゆき三年ぶりのエンターテイメントであろうと、間違いなくどこの図書館にも入るだろうし、わたしは待つのは嫌いではないのです。
でも、わたしが本読みとして信頼している方が絶賛していて。さらに帯が「小説史上最高に愛おしいラスト」なんてあおるし。前作の「英雄の書」がすごくよかったので、ここは期待して買ってみました。
ところが、どうもこれが、わたしの苦手とする○ものらしい。表紙に電車がある時点で見抜けなかったわたしが悪いのです。わたしは○に偏見があるので、この本もいまひとつのめりこめなかったのかもしれません。
いや、それほど比重があるわけではないのです。それに、それだけならそれほど違和感は感じなかったでしょう。
「小暮写眞館」(講談社)。はっきりいえば、詰め込みすぎだと思いました。宮部さんは枝葉を大事にする作風だということはわかっていますが、これは刈り込んだ方がいい。例えば「模倣犯」のような充実感が、この作品では得られなかったのです。
ヒヨコちゃんのエピソードって、必要ですか? 長沢妹と同じ学校云々とあると、どこかでまたからんでくるのかしら、と思うのですがそんなこともなく。
逆に、〈しおみ橋〉のエピソードは回想でいいの? ぜひ目の前のこととして描写していただきたかったのですが。
垣本順子が、テンコ父を評して言う言葉をはじめとして、伏線はものすごくいいと思います。彼女の人生が浮かび上がる構成も、花菱家がこれまで目をそらしてきたことに気づかされるのも、考えさせられます。
わたしは橋口くんが好きですね。テンコもいいんですが、服装センスがどうかと。
あれこれと考えたのですが、宮部さんの言語に対する感覚はすごい。テンコのシャツを「朱肉色」というのがまずいいですが、ピカのパーカが「サンタや赤頭巾ちゃんの赤」というのがまたリアル。ため息ものです。
わざとやっているのかもしれませんが、今回はわりと「慣用句」が多く使われていたように思います。ネタバレ承知でいえば、この物語全体が「白紙に戻す」物語でもあります。
つらつら書いているので、なかなかあらすじっぽいものにたどり着きませんね……。
主人公は花菱英一。高校生です。最近、両親が購入した一戸建てに引越してきました。ところが、この家、もともとは写真館で、なんとそこの主だった男性の幽霊が出るというのです。
英一の弟・光(ピカ)は、小暮さんの幽霊にどうしても会いたいと願うようになります。それは、数年前に四歳で亡くなった姉の風子に会いたいから……。
幽霊なんて非現実的なことは信用していなかった英一ですが、写真館の看板をそのままにしていたために、ある女の子から「心霊写真」をあずかることになり、その事件を解決したことで「心霊写真バスター」と噂されることに。
このあたりのくだりが、多分わたし好みではないのです。
どうも長くなりそうなので、続きます。