くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「種蒔きもせず」星野富弘

2010-06-12 10:18:21 | 芸術・芸能・スポーツ
表紙の犬が、なんとも愛らしい。星野さんの愛犬「みしん」でしょうか。
星野富弘「種蒔きもせず」(偕成社)。最新画集です。いつもながら、美しい。「きれい」という言葉では足りない気がします。
花の絵を描き続ける星野さん。どの絵も、細部までよく観察され、添えられた言葉には味があります。
以前、巡回の作品展を見に行ったことがあったのですが、ペンタッチが本当に細やかで、印刷でもそれは美しいのですが、肉筆はもう胸に迫るような力をもっていました。
自分なりに気にいらない部分があったのでしょう。紙を貼り直して修正した部分などもありました。
まつぼっくりのペン画の、繊細さが忘れられません。

おとなしい「郁子」を心配する画や、いつもながらの繊細な花たち、みしんの姿。添えられた字のタッチも、毛筆風あり細字ありで、そのときそのときに違います。
エッセイを読んでいたら、学生時代の友人であるKさんのことが書かれていました。
雪深い彼の実家にスキーに行った話です。彼との交流を思い出したのは、テレビニュースで、今は校長先生をしているKさんの姿を見たから。
ふと、星野さんが体の自由を失ったのは、新任教師のころだったことに気づきます。同期の友人たちは、退職の時期にさしかかっている。かなり長い年月の流れを感じました。
わたしの場合、退職まであと二十年ほどです。これまで勤めてきた時間と比べると、折り返し地点でしょうか。
それほどの時間。
星野さんの詩画を見ていると、教育者としての視点を感じることがよくあります。今回だと若者たちの服装に関わる部分とか人生について諭すような言葉とか。
もちろん、キリスト者としての視点も含まれるのですが。
時間を忘れてしみじみと見入ってしまう、そんな画集でした。