くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「高校生レストラン、本日も満席。」村林新吾

2010-06-27 05:43:51 | エッセイ・ルポルタージュ
最近「ミスター味っ子Ⅱ」をつまみ読みして、なんとも嫌~な気持ちになったのです。どうしてそんな気分になったかというと、天才料理人である先輩が、自分の意に添わない要求をする学校経営者に退学を告げ、後援してくれる人とともにレストランを始めることにするのですが、陽太(「ミスター味っ子」の主人公だった陽一の息子)との料理対決でレストランごと壊してしまう、という話があったからだと思うのです。
いくら天才でも、こういう少年たちを礼讚していいのか、もやもやした気持ちが残りました。だってそのお金は、後援している人が出したんでしょう? 開店を楽しみにしていた人だっていたはず。
天才料理人って、それだけでいいのか。何をやっても許されるというのは、まじめにこつこつ取り組んでいる人に失礼だよね。
ということで(?)村林新吾「高校生レストラン、本日も満席。」(伊勢新聞社)が、ものすごくよかったのですっきりしました。そうだよね、下ごしらえは大事だよ。単調な仕事かもしれないけど、ここで手を抜いてしまうと料理に影響が出るのです。
この学校の生徒たちは、年中無休状態でレストランを経営しています。価格は千円。八分内にお客さんに出すことを目標に、手際のいいコンビネーションで料理を作るのです。
以前、レシピ本を読んだときもおもしろかったのですが、どうしてこの本をこれまで放っておいたのか、後悔してしまいました。
相可高校食物調理科の生徒たちが、クラブ活動として行っている「まごの店」。この試みを実現するために、どんな人たちが協力してくれたのか、村林先生の経歴とともに紹介されていくのですが、語り口がたいへんにおもしろい。
辻調理専門学校で培った技術や心くばりはもちろんですが、教壇に立ち様々な人と触れ合う中で話術にも磨きがかかったのでしょう。
起承転結がはっきりしていて、充実した講演を聞いたような気持ちになります。
中途半端な新入生が、周囲に感化されて料理に打ち込むところ。コンクール目指しての失敗談。設計も工業高校に依頼。
いろいろなエピソードがありますが、亡くなったお父さんの思い出が、やはり胸に迫ります。
辻調での多忙な毎日や、「料理天国」(あったあった、懐かしいなー)でのアシスタント経験などもおもしろい。
天才には及ばないと感じた、剣道部での経験も、印象的です。「限界まで努力してできる精一杯の範囲を自覚し、そのなかで最高の仕事をすることが自分の道であると悟ったのです」
か、恰好いい!
努力に勝る天才なし。自分のやるべきことをきちんと仕上げていくこと、結構大変ですよね。でも、その姿勢があるからこそ、信用があるのだと思います。
で、ふと気づいたのですが、わたしの読む本って教師ものが多いですよね……。