くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「トリックのある部屋」松田道弘

2010-01-29 05:37:51 | 芸術・芸能・スポーツ
やっぱりいいですよー、松田道弘! 古本屋で発見したトリックとミステリの名作を紹介した本、「トリックのある部屋 私のミステリ案内」(講談社文庫)を読みました。
たいへん残念なことに、今松田さんの本を入手するのは結構困難ではないかと思います。この十年でなんとか三冊読んだのですが……。奇術にまつわる本のコーナーを丹念に探すしかないですかねぇ。
で、この本は松田さんがトリックという視点から紹介するミステリ案内です。巻末に索引がついているので数えてみますと、八十冊あまりの書名があげられていました。五十音順なので「アクロイド殺し」で始まり、「われはロボット」で終わります。ミステリのほかにも、SF作品もありましたね。
松田さんはこのリストには絶版になった例も多いのではないかと記していますが、それから早二十五年、その中で生き残るのは古典といわれる作品でございましょう。
印象に残るものとして、「宇宙戦争」「メアリー・カンスタブルの手形」そして、チェスタトンの短編が読みたくなりました。
ホロウェイ・ホームの「老人」は、「名短篇、ここにあり」に紹介されていたエピソードが! (「あしたの夕刊」です)
普通の読書案内と違い、トリックに焦点をあてているわけですから、頭の体操のような問題も多数取り上げられています。
「もしかりに旅客機がアメリカとカナダの国境線の真上に墜落したとしたら、生存者はどちらの国に埋葬されるでしょうか」なんてーのが。

いかさまをした男に腹を立てて退席した紳士に、同じ賭場にいた人が、
「イカサマにたよるのは、きまってゲームのへたな連中です。うまいプレーヤーはイカサマをやらなくても勝てます。イカサマ師はイカサマの成果を過大評価していて、イカサマで勝った以上に負けているのに気づいていないのです」というエピソードが、なんだかおもしろいですね。
アガサ・クリスティが書いた脚本を忠実に描いた映画「情婦」を見てみたいな。
松田さんはこの邦題もよろしくないとお考えのようです。原作「検察側の証人」(「アガサ・クリスティ探偵名作集7 果物いっぱい、日曜日」収録 各務三郎訳 岩崎書店)を読んでみました。
子供むきの装丁なのですが、物語を手軽に味わうには悪くないと思います。なるほど、これはやられる! オーストリアの女優に乾杯です。そして、読後になんとも言えない深淵のようなものが浮き上がってくるのがすごい。
読書案内ですが、トリックメインのため、疑問をきれいにといてくださる松田さんです。でも、オチを聞いても読んでみたいんだよなー。
とりあえず、「われはロボット」を借りてみました。