くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「謎の転倒犬」柴田よしき

2010-01-22 05:52:09 | ミステリ・サスペンス・ホラー
「謎の転倒犬」だってよ! なんじゃそら?
そう思った方も多いことでしょう。柴田よしきが創元クライムクラブから出した単行本のタイトルです。副題は、「石狩くんと㈱魔泉洞」。
いやまあ、この妙ちくりんなタイトルを見たら、すかさず「謎の転校生」を思い出すのが人情というもの。(そうでもない?)
もくじにはこんなタイトルがずらりと。「時をかける熟女」「まぼろしのパンフレンド」「狙われた学割」「七セットふたたび」。うわあ、そういう意図でございましたか、とさっそく読みはじめた次第です。
主人公の石狩くんは、就職活動がままならない大学生。マスコミ志望だけど、どこにもひっかからない。でも借金があるのでバイトをすることになり、ある新築ビルの絨毯をひく仕事をすることになります。重い絨毯をたるみなくしくのは重労働。なんでもさる占い師のアドバイスによって、急遽直すことにしたのだとか。
徹夜明けの石狩くん、町で件の占い師摩耶優麗(まやゆうれ)と知り合います。しかも、自分の借金の原因が、パソコンとデジカメとスーツを買ったことからだということを初対面なのに指摘される。さらに、8時に魔泉洞(占いの館です。株式会社化している)に来るように言われます。はじめは行かないつもりだったのですが、バイト代を盗まれてしまい……。
こういうどたばたコメディ、好きですね。柴田さんは作品ごとに明暗がかなり異なるのですが、これはかなり明るい方。ハナちゃんシリーズより明るい。
なし崩しに魔泉洞に入社した石狩くんですが、この会社には謎がいっぱい。人気占い師摩耶優麗の年齢は? 経歴は? そして会社の総務部長兼経理部長兼金庫番兼ご意見番兼参謀兼ボディガードでもある宇佐美儀一郎との関係は?
さらに宇佐美から「十勝くん」と呼ばれるようになり、転職の機会を探るも優麗からは、その性格はマスコミに向いてないと一蹴。
コミカルな中にもひやりとした深淵が覗くこともあり、とてもおもしろい。
占いとはカウンセリングであり、人間観察である。服装や持ち物が、その人のことを雄弁に語る。魔泉洞で働くうちにそんなことに気づいていく石狩くん。優麗は占い師であると同時に名探偵でもあるのです。でも、推理の結論を示すと劇的に衝撃を与えるものの、種を明かすと、そんなことかと思うことが多いのだとか。
うーん、これはホームズを意識してます?
ところで、124ページに「それ依頼、その占い師とは手を切ったらしいの」って……。「以来」ですよね?