くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「オディールの騎士」茅田砂胡

2010-01-25 05:40:00 | ファンタジー
また誘拐です。
でもおもしろかった。シリーズがしばらくお休みになるそうで、総まとめのような意味もあるのでしょうね。今までのエッセンスがちょこちょこ出てきたり、さらにその前のあれやこれやを思いおこさせるくすぐりもあって、楽しく読みました。
やっぱりケリーはいいよぉ。今回は久々にダンも出てきて、そのつながりにしみじみしました。
「オディールの騎士」(Cノベル)です。前回バカンスを約束したケリーとジャスミンは、惑星バラムンディで過ごしています。ジャスミンにケリーが水着を見立てていたことが、思わぬ誤解を産んで、とあるトラブルに巻き込まれていくのですが……。
自分を表現するとはどういうことか。子供を所有物としか見ない親は虐待をしているのと同じ。助けてほしいときに救いを求めることができるのはまず自分。
そんなたくさんのメッセージが詰まった物語でした。
茅田さんははじめ、ダンの物語として構成を練ったそうですが、やっぱりケリーの物語であるように感じます。例によって、文明の中で技術を失っていく人間たちや、人脈で彼らの身分の高さが知れる水戸黄門的部分が現れ、ジンジャーが現れ、金銀狼につながり、というパターンなのですが、これまでほどは気になりません。パーティーで幻の酒について求める場面はどうかと思ったけど。
「ダンは嘆息した。(略)連邦警察に追われ、連邦軍に追われながら、互角以上に渡り合って決して捕まらなかった。海賊王と呼ばれたその人は、ダンにとって絶対の英雄だった」というあたりは非常にぞくぞくいたします。
今回はヴァレンタイン卿が実は恐ろしい人だということもわかり(笑)、にやにやのうちに幕、という感じです。
実年齢ということを考えると困惑することがあるのも気にはなりますが。(この点で考えると、いちばんまっとうな人はダンですよね……)
長く生きる彼らは、実世界では幽霊のようなものなのです。宇宙生活者としての位置しか表明はできません。でも、実際にはかなり優遇されるポジションにあります。やっぱり「水戸黄門」っぽいよなーと思わないでもないですが、新たなシリーズが帰ってきたときにまた魅力的であってほしいと思っています。
オディールのビフォーアフターが見たかったような気もするなー。