人生を棒に振るのは金と男女関係によってである。新井白石は『折りたく柴の記上』で、父親から教わったことを書き記している。父親は13歳のときから故郷を離れて他人の中で成長したが、そこで交わりを傷つけずにすんだのは、金と女を慎んだからだということを語ったのだった。「二つの欲のない人だけは、どこへ行っても、人に嫌われることがないもんじゃ」(杉浦明平訳)というのは、まさしく正論ではないかと思う▼今世間を騒がせている出来事の多くも、それに由来するのではないだろうか。東大法学部を出て財務省に入り、そして国会議員になったにもかかわらず、女性問題で人生を誤る人間もいる。さらに、金のために汚職をして御用となり、一生を駄目にする者も多いのである。金も欲しいし、多くの女性と付き合いたいというのが誰しもの心理である。それを我慢して公のために尽くすというのが、真のエリートでなければならない。エリートが好き勝手にやりたいことをするようでは、誰も付いて来なくなるのである▼戦後教育の一番の欠点は、我慢の大切さを説かなくなったことである。保守派の私たちにとっても、それは痛切な問題である。金や女性とのことで誤解されるような行動をしてはいないか、改めて反省する必要があるのではないだろうか。己を律することで国が治まるというのは、信頼されるための前提条件なのであり、そのことを肝に銘じてこそ真の保守派なのである。
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