映画の「ビルマの竪琴」の主役を演じた俳優の安井昌二さんが、昨日亡くなった。なぜか安井という俳優の顔が忘れられない。戦友が帰国するのに、あえて自分だけビルマにとどまった水島上等兵の後姿とともに、目に焼き付いているからだ。原作者の竹山道雄は、オールドリベラリストの代表的な人物であった。戦後は観念論を弄ぶサヨクをたしなめ、保守の論客として名をはせた。雑誌『心』に連載された『昭和の精神史』は、大東亜戦争を考える上での古典的名著となっている。竹山がこだわったのは、知的に誠実であるかどうかということであった。「『かくあればよい』と願うことを、しらずしらずのうちに『かくある』と感じるようになることはしたくない。希望的観測から力が生まれるということはずいぶん見聞したが、そしてほとんどすべての力がそういうものであることを経験したが、あれはいとわしいことと感ずる」とまで言い切っている。小説から生まれた水島上等兵は、まさしく原作者の竹山道雄そのものであった。それを見事に安井さんが演じ切った。竹山にとっては、理想的なのは穏やかな時代であり、感情のぶつかり合う世界は、忌むべきものであった。しかし、日本はもう一度熱情を必要としている。竹山が生きていたならば、絶対にそれを制止しようとするに違いない。新たな保守はオールドリベラリストの忠告を振り切ってまで、先に進もうとしている。外国による日本バッシングに抗するには、残念ながらそれしか手がないのである。水島上等兵のようになりたくても、それはもう許されないのだから。
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