ふるさと加東の歴史再発見

少し気をつけて周囲を見回してみると、身近なところにふるさとの歴史を伝えるものがある。

明治26年発行の尋常小学校生徒用修身書巻四からー第四課「兄弟」

2021年08月29日 06時08分43秒 | Weblog
 

 修身教科書では、まず「孝行」が一番最初に出てきます。孝行は、道徳の基本であるとされています。次に「兄弟」、そして「朋友」と続きます。身近な人間関係について大切なことを学んでいくようになっています。
 今日は尋常小学校三年生が使っていた巻四から第四課「兄弟」を紹介します。

 第四課「兄弟」
兄弟の親しみを全くせんには、兄は、弟を憐みいたはり、弟は、兄をあがめうやまひて、小利を争ふことなきにはしかず。
本多忠勝、病みて死せんとする時、黄金一万両を、次男忠朝(ただとも)に分つべきことを遺言せり。忠勝死したる後、長男忠政之をききて、「父の遺したまへるものは、皆我が物なり、」とて、金を渡さざりしに、忠朝少しも争ひうらみず、「兄上は、家来も多ければ、其の金を納めおきて、扶助の料にあてらるべし、我は、家来も少ければ、金の入用なし、」といひたり。
忠政之を聞きて、深くはぢいり、しひて金を渡しければ、いなむに言葉なく、「さらば入用の時まで、あづけおきたし、」とて、生涯受け取らざりき。

 本多忠政は姫路藩の初代藩主。弟の本多忠朝と父の遺言をめぐるエピソードですが、弟忠朝は一人占めをしようとした兄と争うことなく辞退した態度に、兄の忠政は自分の態度を深く恥じ入り、遺言にあった金を渡そうとしましたが、忠朝は受け取らず、必要な時まで預けておきます。と答えた、という話です。遺産相続をめぐる争いは今もある話で、最近の週刊誌には「終活」特集が多く、見出しにもよく見かけます。昔からある話ですが、「小利を争うことなきにはしかず」と書き、このエピソードを紹介して教えたのですね。
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