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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ザ・ダンサー

2018-08-02 10:29:09 | 映画
ザ・ダンサー(La Danseuse/The Dancer、2016フランス・ベルギー、108分)
監督:ステファニー・ディ・ジュースト
ソコ(ロイ・フラー)、ギャスパー・ウリエル(ルイ・ドルセー伯爵)、メラニー・ティエリー(ガブリエル)、リリー=ローズ・デップ(イサドラ・ダンカン)
見たのはフランス語字幕版
 
ロイ・フラー(1862-1928)という実在のダンサー、サーペンタインダンスというスカートダンスの草分けの一人で、またこういうダンスの効果を出すための舞台装置、照明などで功績があった人を描いたものである。
 
アメリカ中部の出身であるが、ニューヨークに出てきて、その後パリでフォリー・ベルジュール、オペラ座などで活躍しており、父親がフランス人であったらしいから、フランス語版でも違和感はない。
 
舞台装置の創出については具体的だが、ダンスについては直感的で終わると倒れてしまうというタイプとして描かれている。細部の描きかたはあっさりしていて、むしろ後からああそうだったのかと思わせる作り方(珍しいというほどではないが)。
 
ロイ・フラーについては全く知らなかったが、パリ万博で彼女が評価し多分共演した日本人(映画の中で名前は出してないように思うが川上貞奴のはず)、ロイより後の世代で評価はしたがライバル意識も強かったイサドラ・ダンカンなどとのからみがあり、パリでの、当時の彼女の立ち位置について、理解はできた。
 
ダンス中心の彼女の人生、キーになるのはパリに飛び込んできたロイの才能を見抜いて理解者となりサポートを続けたガブリエルや、恋人、パトロンとしてあやういしかし映画的には面白い関係が続いたルイ伯爵だが、イサドラ・ダンカンを含め、異性・同性の接触、関係が常に全体を包んでいる。そのタッチは、偏見かもしれないが、女性監督ということもあるのだろうか。どこかリリアーナ・カヴァーニに通じるところがあった。
 
ドラマとしてはところどころスリルを感じても結局おさまっていくのは、物足りないところではある。
 
ソコは残っている写真を見るロイ本人に似ていて、またそのダンスのちょっと疲れるくらいのパワーの表出はたいしたもの。
ルイのギャスパー・ウリエルは、こういう雰囲気にぴったりで、「サンローラン」の主人公を演じているらしいのもうなずける(ただサンローランに関してはドキュメンタリーと同時期の伝記映画は見ているが、これは見ていない)。
ガブリエのメラニー・ティエリーがとってもいい、好ましいというか。
イサドラ・ダンカンのリリー=ローズ・デップはなんとその名のとおりジョニー・デップの娘、母はヴァネッサ・パラディだからフランス人といってもよく、出演当時まだ17歳くらいだったはずだが、そう違和感はない。
 
ロイのダンスで使われるのはヴィヴァルディの「四季」、それも激しいところがうまく使われている。イサドラ・ダンカンが舞台ではないところでこれ見よがしに踊るのはベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章。この深く悲しく、それでも清新なタッチがある曲を、ロイよりかなり若いがいずれ脅かしてくるこの娘に配したセンスはなかなかだ。