世界にひとつのプレイブック(Silver Linings Playbook、2012年米、122分)
監督:デヴィッド・O・ラッセル
ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ
終盤になるまで、今のアメリカには多分こういうひとたちがかなりいて、躁鬱なのかどうか、ストレスが多いのか、精神的にいらいらし、病院に入ったり、薬を服用したり、かって夫婦だったりした間柄でいわゆる接近禁止令が出ていて厳しく適用されたり、という人たちのやり取りが続く。
こんなにかたくなにならなくてもとはおもうのだが。
妻の浮気でおかしくなって入った病院から出てきてまだ妻をあきらめきれないパット(ブラッドリー・クーパー)は友人の妻の妹ティファニー(ジェニファー・ローレンス)と知り合いになる。ティファニーは実はパットの妻を知っているのだが、夫を事故でなくし、やはり不安定な状態にある。この二人、つきあおうとしてもうまくいかない繰り返し、その中でティファニーは始めたダンスの競技会に出てきっかけをつかもうと、ダンスができないパットを引っ張り込む。
ダンス競技会になってからは、スピード感のあるカメラワークとともに映画に入っていける。このあとどうなるか、不安定な感はあり、カタルシスというほどではない。
この映画を見ようと思ったのは、これでジェニファー・ローレンスが弱冠22歳で昨年オスカーをとったこともある。脚本に対する疑問はあっても彼女の演技はどんどんひきこまれてしまう。それだけの存在感、資質を感じる。眼と頬から口のあたりの表情、、、
ロバート・デ・ニーロがパットの父親で、フットボールのフィラデルフィア・イーグルスのサポーター。なにごとにつけイーグルスがベースになるという、時々プレミア(英サッカー)、ボストン・レッドソックスなどを背景としたそういう気分の映画はこれまでにもあった。デ・ニーロだからそのうち何か出してくるのではという感じもあるのだが、最後までそのままで、見事。女性の方の父親役だが「ミート・ザ・ペアレンツ2」(2004)を思い出した。
音楽はなかなか的確で、特に最後のダンスで流れる「マリア」(ウエスト・サイド・ストーリー)はいいアレンジと思ってクレジットを見たらデイブ・ブルーベック! そのあとラストの「ミスティ」、ナット・キング・コール調だが声は違うと思ったらジョニー・マティスだった(久しぶり)。
ところでこのタイトル、見慣れない英語に、ほぼそのままの邦題はなんとも。調べてみたら、playbook にはアメリカン・フットボールで各チームのフォーメーションを図解したノートという意味があるそうで、また every cloud has silver linings つまりどんな雲にも銀の裏地があるということわざも背景にあるらしい。Silver linings はミルトンの作品中にあるそうだ。