銀の匙 中 勘助 作
題名は若いころから知っていたが読んだのははじめてである。前に書いた荒川洋治「文庫の読書」にとり上げられていて、それではということになった。荒川はほんの一つ小さな話を紹介していたが、読んでみてその選択はなんとも秀逸だった。
「銀の匙」は中 勘助(1885-1965)が1913年に前編、1915年に後編を書いた文庫で200頁ほどの中編、主人公はおそらくこの時代の男の子、神田に生まれ小石川に移ったが、こどもどうしや家族内のやりとり、この時代のいろんな「もの」、風習、風俗などがえがかれている。ただ今回読んだ岩波文庫は注が少なくわかりにくいところもある。
それほど大きな展開はないが、細かい観察とていねいな描写が特色。
私の好きな「たけくらべ」(樋口一葉}ほどドラマの面白さがあるわけではないけれど、この時代のふつうの人たちのなさけが感じられるよさがある。
ところで「銀の匙」といえば、灘中学校の国語の先生が1950年代と1960年代、3年間この教科書だけで授業をしたことをきいている。選定教科書は一切使わなかったそうだ。
私も似たような私立校だったが、印象に残っている国語の授業はどちらかというと作品論、文学論だった。どちらがいいと一概には言えないが、一つの作品を徹底的に読むということのよさは確かにあるだろう。一つ一つの文章の読み方、それを通じて書き方も学んでいくと想像する。
文章の細かい読み方、書き方についてはあまり意識的になっていなかった。変わってきたのは中年を過ぎ谷崎潤一郎を続けて読むようになってからだと思う。
題名は若いころから知っていたが読んだのははじめてである。前に書いた荒川洋治「文庫の読書」にとり上げられていて、それではということになった。荒川はほんの一つ小さな話を紹介していたが、読んでみてその選択はなんとも秀逸だった。
「銀の匙」は中 勘助(1885-1965)が1913年に前編、1915年に後編を書いた文庫で200頁ほどの中編、主人公はおそらくこの時代の男の子、神田に生まれ小石川に移ったが、こどもどうしや家族内のやりとり、この時代のいろんな「もの」、風習、風俗などがえがかれている。ただ今回読んだ岩波文庫は注が少なくわかりにくいところもある。
それほど大きな展開はないが、細かい観察とていねいな描写が特色。
私の好きな「たけくらべ」(樋口一葉}ほどドラマの面白さがあるわけではないけれど、この時代のふつうの人たちのなさけが感じられるよさがある。
ところで「銀の匙」といえば、灘中学校の国語の先生が1950年代と1960年代、3年間この教科書だけで授業をしたことをきいている。選定教科書は一切使わなかったそうだ。
私も似たような私立校だったが、印象に残っている国語の授業はどちらかというと作品論、文学論だった。どちらがいいと一概には言えないが、一つの作品を徹底的に読むということのよさは確かにあるだろう。一つ一つの文章の読み方、それを通じて書き方も学んでいくと想像する。
文章の細かい読み方、書き方についてはあまり意識的になっていなかった。変わってきたのは中年を過ぎ谷崎潤一郎を続けて読むようになってからだと思う。