メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ヴェルディ 「アイーダ」

2018-01-29 10:58:23 | 音楽一般
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
指揮:リッカルド・ムーティ、演出:シリン・ネシャット
アンナ・ネトレプコ(アイーダ)、フランチェスコ・メーリ(ラダメス)、エカテリーナ・セメンチュク(アムネリス)、ルカ・サルシ(エチオピア王アモナズロ)、ロベルト・タリアヴィーニ(エジプト王)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団(指揮:エルンスト・ラファエルスベルガー)
2017年8月9日、12日 ザルツブルグ音楽祭大劇場 2017年11月 NHK-BSPre
 
ヴェルディのオペラの中では、楽しむのも、評するのも苦手な作品である。エジプトの英雄ラダメスと相思相愛の女奴隷だが実は敵国の王女アイーダ、ラダメスをわが物にしようとしているエジプトの王女アムネリス、基本的にはこの三人の関係で話が進む。先の「ナブッコ」と多少似た三角関係である。
 
しかし、人間関係のドラマとしては起伏にとぼしく、ラダメスとアイーダが逃げようとしてつかまり、処罰が決まるというところで、この構図からいくとしょうがないな、と受け取らざるを得ない。悲劇としてそこで終わるか、という流れを、アムネリスがなんとかしようと再度動く。ここのアリアが聴きもの、というちょっと変則的なもの。
 
それでもヴェルディの円熟期だから、音楽だけ聴けば充実していて、冒頭に続くアイーダとラダメス、エジプト軍の凱旋(あの行進曲)、そしてアイーダとアムネリスの葛藤、上記アムネリスののたうち、など、オーケストラと合唱も効果満点である。
 
こういう「アイーダ」だから、ベッリーニ、ドニゼッティあたりでしっかり順序をふんでヴェルディに取り組み始めたネトレプコ、もちろんほぼ完ぺきで、彼女の声もきれいで、コンディションもよかったようだが、聴いている方としてこの役は物足りない。
 
そこへいくとアムネリスのセメンチュクは圧倒的で、拍手も一番だったように思う。このオペラはアムネリスのためにあると思われてやむを得ない。ここもナブッコと似ている。男声陣はまずまず。
 
オーケストラ、合唱はさすがで、ヴェルディの後期でのウィーンフィルは本当に実力を発揮するけれど、今回もそう。指揮もムーティだし。
 
演出はイラン系の女性だそうだが、舞台装置、動きなど、祭典劇(たしかにアリーナなどで上演されることもあるのだが)というか、舞台形式上演というか、あまりドラマチックではない。だから悪いとも言えないけれど。
 
ところで凱旋行進曲で使われるいわゆるアイーダ・トランペット、ここでも舞台上で吹かれる。この細くて1m以上あるトランペット、ウィーン・フィルだから、おそらくヤマハ製だろう。確か1980年ザルツブルク音楽祭の「アイーダ」で使われるために復元・開発されたもので、それに先立ち1979年にカラヤンがこれを使ってウィーンで録音したもの(LP)が、今でも手元にある。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヴェルディ 「ナブッコ」 | トップ | 平成細雪 »

音楽一般」カテゴリの最新記事