「ヴィクトリア女王 世紀の愛」 (TheYoung Victoria、2009英・米、102分)
監督:ジャン=マルク・ヴァレ、脚本:ジュリアン・フェロウズ、衣裳デザイン:サンディ・パウエル、音楽:アイラン・エシュケリ
エミリー・ブラント(ヴィクトリア)、ルパート・フレンド(アルバート)、ポール・ベタニー(メルバーン)、ミランダ・リチャードソン(ケント公夫人)、マーク・ストロング(ジョン・コンロイ)
イギリスのヴィクトリア女王(1819-1901)の即位と治世の始まりを描いたもので、そのあたりにうとい私には新鮮な話も少なくなかったが、はらはらするというほどのエピソードにとぼしく、ドラマにするには無理な題材だったかもしれない。
十代で女王になるのは危険と、いろいろな意図があって周囲が勧める(強制する)摂政の設置を断固拒否、18歳で女王になる。ここまでが前半で、後半はドイツから来たアルバートと結婚、波もあったが、最終的には仲の良い夫婦として、治世を確実なものとした、というところまで。
その後は、なんと9人の子供にも恵まれ、夫は20年後病死するが、女王は歴代最長の64年を在位、君臨した、そうである。19世紀は、英国が強い国家となり植民地も増やした世紀で、そう考えると王権が安定していたことは大きいのだろう。その一方で、この時代の息苦しい道徳観、社会通念などには、多くの小説で嫌悪感が表明されてもいる。
話としては退屈、それを多少救っているのは、製作に入っているマーティン・スコセッシ(そうなんと!)の息がかかっているらしい監督によるカメラワーク、そして定評あるサンディ・パウエルの衣裳、だろうか。
ヴィクトリアのエミリー・ブラント、この人は役によって見え方ががらりと変わる。本当はもっと崩したほうが良かったのかもしれないが、まずまず。
女王の夫というのは現実でも、映画でも難しい役回りなのだろう。そう考えればルパート・フレンドは主役の華に欠けるけれども、これでいいのだろう。
ロイヤル・アルバート・ホールの名前はこのアルバートから来ているそうだ。