メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

バグダッド・カフェ

2014-04-07 15:51:49 | 映画

バグダッド・カフェ ( Bagdad Cafe 、1987西独、108分)

ニュー・ディレクターズ・カット版

監督:パーシー・アドロン、音楽:ボブ・テルソン、主題歌:ジュヴェッタ・スティール「コーリング・ユー」

マリアンネ・ゼーゲブレヒト(ジャスミン)、CCH・パウンダー(ブレンダ)、ジャック・パランス(ルーディ)、クリスティーネ・カウフマン(デビー)

 

公開され評判になった後にレンタル・ビデオで見た記憶がある。筋についてはうろ覚えだったようだ。 

 

ラス・ヴェガスから少し離れたモハヴェ砂漠の街道(鉄道も傍を走っている)沿いのガス・スタンド兼カフェ兼モーテル、経営している夫婦が喧嘩して夫は出て行ってしまう。そこへ、やはり車で移動中の男女が喧嘩別れして女(ジャスミン)がここを訪れる。別れる時に間違って男のスーツケースを持ってきてしまっている。

 

女はたいへん太っていて、ドイツ国籍、旅行ビザしか持っていない。カフェの女主人(ブレンダ)には息子と娘がいて、息子の方は幼く見えるがすでに赤ん坊がいて、それでもやっていることは初歩のピアノ練習。

他に、ハリウッドから流れてきた年取った絵の職人(ルーディ)と澄ました女(デビー)など。

 

女は金もなく、みんなに溶け込めないのだが、次第に変化が現れる。

この映画の見所はその過程の細かいエピソード、いざこざ、摩擦などの積み重ねである。何か大きなストーリーでコミュニティーの雰囲気がよくなっていくのではない。そこはこの作り手の楽観主義というか、アメリカという社会が、ここでいたるところに銃が護身用として出てくるにもかかわらず、人と人、個人と個人はなんとかわかりあえるようになる、という考えによるものなのだろうか。

 

カフェの主人たちは黒人系、訪れる女(ジャスミン)はドイツ人(これドイツ映画である)、一見どうであっても法律上特に問題なければというスタンスの保安官は北米ネイティブで、このあたりも面白い。

 

画面の色調は時々ほかの映画でもあるものだが、心地よい。

 

主役の女性二人は見事だが、ルーディのジャック・パランスは本当に雰囲気があっていい。そうあの「シェーン」のガンマン。

 

そして私にとって、配役リストでどうしても目立ってしまうのはクリスティーネ・カウフマン、私の世代にはアイドル的な存在だったから。

この役もドイツ人の設定かもしれない。セリフは非常に少なく、カメオ出演に近いかと思っていたら、最後の一言はちょっとわさびを効かせたものになっていた。このころトニー・カーティス夫人だったのだろうか。

 

主題歌はこの映画を知らない多くの人たちにも膾炙したもので、効果的。

それと女主人の息子が練習しているピアノ、最初はごく普通の練習曲をたどたどしく弾いていたのに、少し時間の経過があるとはいえ、最後はバッハの平均律第1番を弾いていた。場面にはフィットしていたが。

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