めまい(Vertigo 、1958米、128分)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク、バーバラ・ベル・ゲデス、トム・ヘルモア
ヒッチコックの映画はそんなに見ていない。ヒッチコックおよびその作品の情報は、私の若いころおびただしく流れていて、友人にも詳しい人がいたりしていたから、そうなるとそのあと映画を実際に見るという気があまりおきなかったのかもしれない。
さて「めまい」もタイトルは知っていて、最近NHKで彼の作品いくつかが連続して放送され機会に、思いついて録画し、見てみた。
家族の過去の話と現在の境遇に取りつかれた女性(キム・ノヴァク)、その夫が友人の元刑事(ジェームズ・スチュアート)に依頼して尾行させるが、彼女は不審な行動を続け、その後二人は知り合い好きになるが、彼女は死んでしまい、その後そっくりな女が現れる。替え玉殺人らしきプロット。
ただこの人の作品はこういう傾向なんだろうか、人間のドラマとしての味わいは薄く、あくまでプロットと高度なカメラワークで見せる映画といった印象が強い。
ジェームズ・スチュアートは50歳、キム・ノヴァクは芳紀25歳、不釣合いといえばそうで、しかもスチュアートはこうしてみると身長はあるけれど今の日本人俳優に比べても痩せぎす貧相な体つきに見える。
なにやらよくわからない関係で、以前からのよき異性友だちで結婚にはいたらなかった女性(バーバラ・ベル・ゲデス)がとてもいい感じで、この人の仕事場を主人公か時々訪ねてくる場面は気持ちがいい。
こういうプロットで今作るとすると、細部はもっとどぎつくなるだろう。
ということで、ちょっと肩すかしをくった感じだが、凝っていてさすがというところはいくつかある。
もう最初のタイトルからして手間がかかっていて、もちろんこの時代CGであるはずはなく、しかし今CGで作ると、もっとさびしくなるのではないか。
カメラワークは全般にいいが、個人的に好きなのは、主人公が車で女の車(ジャガー)を尾行するところ。カメラはボンネット方向から主人公に向けられ、フロント・ウインドウは横長、大き目なステアリングをゆっくりあつかうハットをかぶった主人公。カーブをきると後窓の街風景が動くが、これは当時の典型的な大排気量でゆったり動くアメ車特有ののんびりした動きで、とてもいい。この感じ、ヒッチコックが始めたのかどうかは知らないが、その後いろんなところ(日本映画も含め)で見た気がする。