メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ルートヴィヒ(完全復元版)

2024-01-04 15:39:47 | 映画
ルートヴィヒ(Ludvig、1972伊仏独、237分)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
ヘルムート・バーガー(伊語ジャンカルロ・ジャンニーニ)(ルートヴィヒ)、ロミー・シュナイダー(エリ-ザベト)、トレヴァー・ハワード(ワーグナー)、シルヴァーナ・マンガーノ(コジマ・フォンビューロー)、ゲルト・フレーべ(ホフマン神父)、ウンベルト・オルシーニ(ホルシュタイン伯爵)
音楽:シューマン、ワーグナー、オッフェンバック
 
かなり前におそらく短縮版を見てあまりまとまった印象を受けなかった。今回もう一度とかなり長い完全版を見たが、よりよく理解できたとはいえない。短いものでもよかったのではないかと思う。
やはりヴィスコンティはワーグナーが好きだったようだ。ワーグナーの行動、コジマとのなりゆきは私のきいている事実によく沿っていて、子供を祝福するために階段のところにオーケストラを配した「夜明けとジークフリートのラインへの旅」などはワーグナーへのオマージュをいうか、雰囲気たっぷりでここは楽しめる。
 
ただ全体としてはルートヴィヒのこういう浪費と政治的な無策に抗する関係者との軋轢、それも後者の方がもっともと言える話で、最後は湖での自殺で終わる。
 
もう一つ、ルートヴィヒが国王としてうまくいかないのは彼が同性愛者でみせかけの結婚すらしないことだが、それは想像でわかるように描かれてはいるものの、映像表現ではあまりない。
 
唯一人間的な面を見せるのは婚約者の姉で従姉のエリーザベト(ロミー・シュナイダー)との関係、彼女はオーストリア皇后だからどうしようもないのだが、映画前半の見せ場として味わいがある。性的に愛しあえないとわかっているから距離のある憧れを続けていたともいえる。
 
これは私がロミー・シュナイダーのファンだからでもあるのだが、相手に好意は持ちながら結びつくわけにはいかないそれも外部的要因と内面的要因両方という微妙なバランスの中で演じることにかけて彼女の右に出るものはいない(他にもいくつか作品がある)といったらおおげさだろうか。
 
ヘルムート・バーガーはこれで育ったといえるだろう。トレヴァー・ハワードのワーグナーはイメージぴったりである。
 
ワーグナーの音楽の使い方がうまいのは当然としても、前半のシューマン(子どもの情景など)の適用は秀逸。
ヴィスコンティ作品をそう網羅的に見ているわけではないが、「ベニスに死す」、「夏の嵐」、「山猫」などと比べるとちょっとつらい。「家族の肖像」の方が好きではなくても印象的ではあっただろうか。


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