マスネ 歌劇「タイス」(Thais)
指揮:ヘスス・ロペス=コボス、演出:ジョン・コックス
ルネ・フレミング(タイス)、トーマス・ハンプソン(アタナエル)、ミヒャエル・シャーデ(ニシアス)
2008年12月20日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2012年2月WOWOW放送録画
マスネの「瞑想曲」は聴けばだれでもこれか、というくらい知れわたっている。しかし、この曲がこういうオペラの中の一曲であることを私も知らなかったし、知っていたとしてもこのオペラを見ることはそんなにないだろう。事実この上演はメトにとっても約40年ぶりだったようだ。
とはいえ、こうやって見せてもらえば、これはなかなか聴く楽しみをもった作品である。
タイスはアレクサンドリアの娼婦にして社交界の中心、ということはヴェルディ「椿姫」の主人公のようなものか。それを熱烈な信仰心を持つ修道僧アタナエルが回心させようと、嘗ての友人ニシアスに囲われているタイスに会いに行く。いろいろあった末にそれは成功し、修道院に連れて行くがそのあと、、、
という話である。その回心と最後のドラマチックな展開に重要な役割を果たすのがこの「瞑想曲」のメロディー。ヴァイオリンの独奏パートが目立つコンサートマスターが拍手にこたえるというのもオペラでは珍しい。
主役の二人は充分楽しませてくれる。フレミングはいまやメトの顔みたいなもの、妖艶といううには少し愛らしさが残っているけれど歌は申し分なく、ハンプソン(バリトン)は長身もあわせ役にぴったりである。
調べてみるとマスネ(1842-1912) 1894年の作品で、オーケストラの音は想像したより分厚く、充実感があった。世紀末の作品といえばそうかもしれない。
歌詞はフランス語、かなり乗りはよく、キーになる単語はよくききとれる。
指揮のロペス=コボスは場数踏んだ人だからこういうものは慣れているのだろう。
こうして次々と「どんなオペラ?」という疑問にこたえてくれるのはありがたい。