ラヴェル:歌劇「こどもと魔法」
大野和士指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、演出:ロラン・ペリー
カトゥナ・カデリア(こども)他
グラインドボーン合唱団
2012年8月19日 グラインドボーン音楽祭歌劇場
先の「スペインの時」と同じ日に同じ場所で上演されたものである。こちらの方が後なのだろうが、両方に出ている歌手もいる。みなさん好きなんでしょう。
勉強をしているこどもが母親にしかられた腹いせに、勉強をやめ、周りのものを壊したりしているうちに、家具や食器、動物などが出てきていかにこの子に苦しめられたかを訴える。
この擬人化された舞台、歌つきのバレエといった方がいいかもしれない。こどもは結局かれらが普段どういう扱いをうけているかを、そのうらみを知らされるわけだが、そのあたりの表現はかなり辛口で、アニメなどと同様フランスらしいなと思う。台本はあの小説家コレットである。
これに比べると日本はもう少し甘いし、アメリカにいたってはさらに人畜無害である。
最後のところの決着は反対に非常にシンプルに、そしてほとんど説明なしにそれでいて結局はストンと自然に落ちてくる。これはこどもに対するものとしても見事であるし、ラヴェルの音楽のフィナーレもいい。
衣装も含め、ロラン・ペリーの演出は「スペインの時」よりこっちの方がこの人の色がでているのかもしれない。森の木のうごきなども面白い。
大野和士の指揮はてきぱきしたものだった。
前半で定番のウェッヂウッドのティー・カップが擬人化されて出てくるが、これが磁器つまりチャイナだからだろうか、歌詞の中に「ハラキリ、セッシュウ(雪舟)、ハヤカワ(早川)、、、」とあるのは、前にも聴いたのを思い出したが、再度びっくり。初演は100年も前ではない。
ラヴェルの音楽としては、これはもう円熟したバレエ音楽作家(ダフニスなどの)のものである。一方「スペインの時」はもう少し早い時期のものだが、すでに晩年のピアノ協奏曲を連想させる。
「こどもと魔法」の録音で手元にあるのは、エルネスト・アンセルメが指揮した1950年代中ごろのLPレコード。一度は聴いたはずだが、やはりこういう作品、ストーリーもこういうものだし、半分バレエみたいなものだから映像で見ないとよくわからない。