メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

許されざる者

2017-10-20 10:51:49 | 映画
許されざる者(Unforgiven、1993米、131分)
監督:クリント・イーストウッド、脚本:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ、音楽:レニー・ニーハウス
クリント・イーストウッド(ウィル)、モーガン・フリーマン(ネッド)、ジェームズ・ウールヴェット(キッド)、ジーン・ハックマン(保安官ビル)、リチャード・ハリス(イングリッシュ・ボブ)、ソウル・ルビネック(ボーチャンプ)
 
二人のカウボーイ二人殺害のための賞金稼ぎに、ウィル、ネッド、キッドの三人が組む。一番若いはねっかえりのキッドからの話で、娼婦宿で傷害を起こしたカウボーイ二人に対する保安官ビルの処罰が軽すぎることに怒った娼婦たちが金を出し合って募った話である。
 
年老いたガンマンの捜索行で、少し前に見た「捜索者」(ジョン・フォード、ジョン・ウェイン)を思い浮かべたが、そこには親しいもののための復讐をいう動機があり、こっちは、あとあと女たちに共感するということはあるにしても、賞金稼ぎである。最初に明かされるように、少し前に愛する妻を失い子供二人を育てるのに苦労してはいるものの、どうしてもというほどではない。後に明らかになっていくように、若いころは列車強盗などで名をはせたワルであったらしいのだが。
 
映画はで、あり意味でそういう部外者がこの当時1880年代のワイオミングの街で、カウボーイ、酒場、娼婦たち、保安官、おそらく東部から来た出版業関係者(イギリスかぶれの紳士と物書き)、などと交わっていく中で、次第に湧いてくる想いが、暗い色調の画面、ゆっくりとしたテンポで描かれていく。
 
見終わってすかっとするものではないし、主人公の苦悩に共感というわけにもいかない。それでも、このアメリカの内部、南北戦争からそう経ってはいない時期、生活、法と正義、その支配、文明度はどうだったのか、表面に出てこないふつふつとした怒りのようなものは、といったものを、イーストウッドはその肉体と表情で最後には納得に近いところまで持ってくる。
 
「捜索者」と同様、アメリカにはたぶん今でもこういう世界があるのか、今のトランプ大統領は一見わかりやすいアジテーションをしているようだが、こういう結果になった支持層にはこの二作にあるような底流があるのではないか。
 
そしてこの映画、銃で撃つということにたいするこだわり、重点的な描きかたが印象的である。終盤にウィルが保安官ビルと対峙する場面、後の「グラン・トリノ」の最後を思い浮かべた。二つはつながっている。
 
ジーン・ハックマンの保安官、おそらくこの時代の法支配を象徴しているのだろう、単なるうまい演技を超えたものを見せている。
「大統領が二人も撃たれた国、イギリスのように国王ならこういうことはない」といって総スカンを食うボブを演じるリチャード・ハリス、随分老け役、懐かしい。


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