メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ドノバン珊瑚礁

2017-04-18 16:57:25 | 映画
ドノバン珊瑚礁(Donovan's Reef、1963米、109分)
監督・製作:ジョン・フォード、脚本:フランク・ニュージェント、ジェームズ・E・グラント
ジョン・ウェイン(ドノバン)、リー・マーヴィン(ギルフーリー)、エリザベス・アレン(アメリア・テダム)、ジャック・ウォーデン(ウィリアム・テダム)、シーザー・ロメロ(総督アンドレ)
 
おそらく1960年ころのハワイ近海の架空の島が舞台、日本軍との激戦で生きながらえたテダム、ドノバン、ギルフーリーがここにいて、テダムは現地の医師、テダムは酒場を持っている。テダムはボストンの名家の出身で出征後に娘(アメリア)が生まれ、二人はまだ会ってないが、遺産相続問題でテダムの子供が自分だけなのか確認するために、アメリアが島にやってくる。沖の船から島に上陸するまでの船の乗り換え、出迎えなどは、典型的な南海もの(「南太平洋」、「ブルー・ハワイ」他)シーンの連続である。
 
実はテダムには現地の女王格の人(故人)との間に三人の子供がいて、それを隠すために、皆で芝居をし独身のドノバンの子供ということにする。
 
ここからは、島にいる戦後のあらくれたち、ここを訪れた他国の水兵たちなどが入り乱れ、やたら喧嘩のシーンが多く、西部劇のパロディのような典型的な殴り合い、家具などが吹っ飛び、ビール瓶が飛び交い砕け散る、といった場面が続く。これは怖さ、深刻さを超越するためにこんなにどぎつくたくさんやっているのか、とも思う。またジープがやたら乱暴に走り、後ろに乗っている人を振り落すのも、ある種のコメディのお約束。
 
日本が占領していた名残りか、テダムの家には和服の日本人召使がいて、内装も日本風。
そうこうしているうちに、だんだん内実がわかってきて、高飛車のアメリアも打ち解けてきて、フランス系の総督アンドレがちょっかいを出すのだが、最後はドノバンに典型的なじゃじゃ馬ならし(そういうシーンもある)をされ、まさか、二人は結ばれる。
 
父と娘のような年齢差だが、こういうのはジョン・ウェインの映画にはいくつかあって、日本ではちょっとだが、米国では違和感ないのだろう。もっともそういう話だと監督はジョン・フォードではなく、ハワード・ホークス(「ハタリ!」)とかヘンリー・ハサウェイ(「アラスカ魂」)といったところが似合っていたのだが。
 
この映画の存在は知っていたのだが、何か期待外れになりそうで、長い間見ていなかった。だが、先日「リバティ・バランスを射った男」(1962)というフォード/ウェインの傑作を見て、その直後、このコンビ最後が本作だと知り、まあ見てみようと思った。
 
それにしても上記のとおり、ウェインはともかくフォードがこういうのは、それも製作から、というのは意外で、これは西部劇を中心にしたハリウッド映画のパロディ、批評ではあるのだろう。それとも、本当はこういうばか騒ぎもやってみたかったんだけど、やるんならウェインがいいし、そこそこ売れるだろうし、と考えたか。
 
これで一区切りついたのか、その後二人とも病を抱えながら、渋く痛いような作品群の世界にも入っていったようだ。
 
この映画でもよく出てくる曲はきわめてなつかしい「真珠貝の歌」、この映画でヒットしその後日本でも長く親しまれているが元来はハワイ民謡「Pupu A O `Ewa」、この映画では原語で歌われている。
映画の日本公開時、ビリー・ヴォーン楽団の演奏でヒットチャートに載った記憶がある。その後パット・ブーン、日野てる子の歌で親しまれている。
 
ビリー・ヴォーン楽団といえば、ラジオ番組のタイトル曲で親しまれた「浪路はるかに」そして「峠の幌馬車」など、アメリカ西部からハワイといった感じで、日本でうけたのだろう。この時期はいわゆるムード音楽よりはこっちで、その後南地中海イメージを中心としたムードオーケストラに代わっていったと記憶している。



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