薬指の標本:小川洋子 著 新潮文庫(1994年刊行後に文庫化)
中編が二つ。表題の作品は、様々なものを標本にして残したい、または閉じ込めたい人を相手にしている会社に入った若い女性が対面する不思議な世界の話。女性は前に勤めていた工場で小指の先を少し欠いてしまい、それがあとあとまでついて回る。事業をやっているのは一人の男で、やがて彼とはいい仲になる。しかし、この話の進行から、はてどこかで、そうこれは「青ひげ」(ペロー童話など)ではないのかと思えてくる。作者はもちろん知っているはずで、それに気づいて読んでいくと、不安でもあり、どこかでそれとは違うものを見せてくれるのか、しかしここではまたそれをうまく変えて、と期待するのだが。結末はネタバレになるので、伏せておく。
この建物に住んでいるピアノ弾きの老女、男から送られたあまりにもぴったりする靴を見てなにかと示唆する靴磨きの老人、この二人がもう少し絡むと思ったが、これは作者の小説作法なんだろう。
もう一つは「六角形の小部屋」、これもなんだか憂鬱な気分の若い女性がたまたまたどり着いたところで見つけた「六角形の小部屋」、それは折り畳み式で、若い男とその母親が各地を巡りながら持ち歩き、人が自由に来て小部屋に入り、自分で話したいことを誰も相手にせず話して、多少のお金を置いていく。
よくこんな仕掛けを作者は考え出したものだが、そういう場所だと思えば、一人で何か話し出すかもしれない、と思わせる。もう一つの作品ほどドラマチックではないのだが、後をひいて考えさせるということではこっちだろうか。
またどちらの作品も、もう少し短くした方がより印象が強くのこると思う。
この二作、そして前にアップした「まぶた」、どれも若い女性とそう若くもなく魅力が感じられない(そういう風に表現している?)男が、関係を持ってしまうのだが、作者は男女関係、特にその始まりについて、あまり重い意味を感じていない、そう見えるがどうか。
中編が二つ。表題の作品は、様々なものを標本にして残したい、または閉じ込めたい人を相手にしている会社に入った若い女性が対面する不思議な世界の話。女性は前に勤めていた工場で小指の先を少し欠いてしまい、それがあとあとまでついて回る。事業をやっているのは一人の男で、やがて彼とはいい仲になる。しかし、この話の進行から、はてどこかで、そうこれは「青ひげ」(ペロー童話など)ではないのかと思えてくる。作者はもちろん知っているはずで、それに気づいて読んでいくと、不安でもあり、どこかでそれとは違うものを見せてくれるのか、しかしここではまたそれをうまく変えて、と期待するのだが。結末はネタバレになるので、伏せておく。
この建物に住んでいるピアノ弾きの老女、男から送られたあまりにもぴったりする靴を見てなにかと示唆する靴磨きの老人、この二人がもう少し絡むと思ったが、これは作者の小説作法なんだろう。
もう一つは「六角形の小部屋」、これもなんだか憂鬱な気分の若い女性がたまたまたどり着いたところで見つけた「六角形の小部屋」、それは折り畳み式で、若い男とその母親が各地を巡りながら持ち歩き、人が自由に来て小部屋に入り、自分で話したいことを誰も相手にせず話して、多少のお金を置いていく。
よくこんな仕掛けを作者は考え出したものだが、そういう場所だと思えば、一人で何か話し出すかもしれない、と思わせる。もう一つの作品ほどドラマチックではないのだが、後をひいて考えさせるということではこっちだろうか。
またどちらの作品も、もう少し短くした方がより印象が強くのこると思う。
この二作、そして前にアップした「まぶた」、どれも若い女性とそう若くもなく魅力が感じられない(そういう風に表現している?)男が、関係を持ってしまうのだが、作者は男女関係、特にその始まりについて、あまり重い意味を感じていない、そう見えるがどうか。