シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 作品47 、シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲 作品36
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン、エサ=ペッカ・サロネン指揮スウェーデン放送交響楽団 (DG)
まいった。こういうこともまれにあるものだ。このシベリウスは、うまい人の演奏でも、何と言うか冷たい叙情といっても、結局曲想から少し離れて滑っていくことが多いのに、彼女の演奏は冒頭から入り込み、ぴたっと寄り添い、フレーズをつかんで離さず、説得力をもって最後まで持続する。それでいて、聴いていて疲れない。
そう、嘗て四十年近く前、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、もともと名曲だがロストロポーヴィチとカラヤン・ベルリンフィルの演奏も、そういうものだった。あれは空前絶後。
ヒラリー・ハーンの演奏、大分前のバッハ「シャコンヌ」以外そんなに聴いていないけれども、あのバッハも聴くものをつかんで離さない趣があった。
もっともだからといって何を弾いてもうまくいくわけではないだろうが、ともかくこのシベリウスでこういう演奏が聴けたというのはうれしい。
シェーンベルクの協奏曲は、誰かの演奏で聴いたことはあるだろうが憶えていない。何か大きなものをこちらが受け取ったという曲でもないが、演奏はこなれていて変に神経に障るところはなかった。
ところでシベリウスは冬から春にかけて聴きたくなることがあり、年によってはいくつかの曲を連続して聴く。例えば毎週末何かを聴くとか。
今年もちょうど交響曲を1番から5番まで聴いたところであった。作品番号から見ると、この協奏曲は人気がある2番とちょっと小ぶりで凡庸な3番の間になり、あの傑作4番とは大分離れている感はある。しかし、先がちょっと読めない、予定調和的でないシベリウスの特徴はよく出ていて、曲想をぐっとつかんだこの演奏は、やはり傑出したものだ。